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まぐろ?

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今まですまなかったと言ってきた養父がタクシー代を出してくれたので帰りはタクシーで帰ることになった。
と言っても、忠次の家までだ。
この後は忠次の家でまったりと時間を潰してから忠次の親に挨拶に行く。

忠次の家に着いてから、忠次は養父と何を話したのかを事細かく教えてくれた。
そして、俺は気がついていなかったが、2人して俺がアイスを食べる様子を見ながら話をしたのだと言うことまで教えられた。
知らない方がいいこともあるということを俺は本当の意味で初めて知った。

「だからこれからは嫌われタスクはしなくていいんですよ」

最後に忠次が言った。

「そっかぁ、ありがとうな忠次。でもいざしなくていいと言われても今までのキャラを突然元に戻すのも結構はずいよな」
「ふふ、そうですね。まぁ少しずつで良いんじゃないですか?」
「そうだな」
「凛太郎のお義父さん、これからもちゃんと凛太郎のお母さんの病院代は払うって言ってくれてましたよ。そして、凛太郎が会社を継ぐも継がないも、お義父さんとの付き合いも凛太郎が決めればいいとも」
「そっか……」
「まぁ、時間はたっぷりありますからゆっくり考えたら良いと思います」
「うん……本当、ありがとう」

忠次はにこりと笑った。
養父の命令を聞こうと決めたのは自分だ。
だから俺は養父に何も思うところはない。
ただ、時間が欲しいと思った。
養父が俺のことを暖かい気持ちで見ていたことを知ったけど、それを消化するには時間が必要だ。

「映画でも見ますか? サブスクいくつか登録していますので割と何でも見られますよ」
「見る」

正直に言うと、今は頭がいっぱいで、これ以上考えたくないなと思っていたから忠次の提案はありがたかった。

だが、選ぶ映画を絶対に間違えてしまった。
画面に映し出された男2人が濃厚にキスをしている。
なぜだ。タイトルの画面ではもっと爽やかな男子学生の恋愛な感じだったはずなのに。

『マグロとかってまじ100年の愛も覚めるよなぁ』
『わかる~』

場面が変わってモブがそんなことを言い合っている。
マグロってあれだよな。あれする時に相手任せで何もしない奴のことだよな。
俺はちらりと忠次を盗み見た。
いつもと変わらない表情でテレビを見つめてる。

やっぱ、忠次もマグロはいやだよなぁ。
けど、俺経験ねぇし。
映画が終わってもしばらく無言で少し気まずくなってしまった。

「忠次」
「は、はい!」
「俺たちも付き合ってるわけだし……」

そう言ってから、俺は一世一代の告白のように覚悟を決めて言った。

「「覚悟はできてる」ます!」

俺の言葉にハモるように同じことを忠次が言った。
お互い顔を見合って首を傾げた。
覚悟って何だ? 忠次は何の覚悟を?

いや、もう一度俺の意思を伝えてみよう。

「「とにかくマグロになるつもりは……」」

またハモってしまった。
何だ? 
またお互い顔を見合わせて首を傾げた。

その時、ダダンと勢いよくドアが空いて忠次によく似たオールバックのおじさんがものすごく焦りながら入ってきた。

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