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第二章 冒険者編
間話 モモ視点
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私の名前はモモ。
田舎者と言われればそうなのかもしれない。
成人するまでの時間のほとんどをある村で過ごしていたんだから。
村人は全員が小人族。
他の種族なんて土人族くらいしか実際には見たことがない。
そのくらい閉鎖的な村だった。
そんな村で私は親がいない私にとって唯一の家族のお姉ちゃんと一緒に暮らしていたん。
でもある日、お姉ちゃんが冒険者なると言って村から出ていってしまった。
最初は一人で寂しかったけど、お姉ちゃんは何年かに一度帰ってきてとっておきの冒険談を話してくれたおかげでいつしかそれが楽しみで平気になっていた。
トップ冒険者パーティーの一員として最前線で戦っていることや、あのドラゴンとも一戦交えたとか。
みんなは嘘つき呼ばわりしていたけど私は信じて疑わなかった。
成人になる一年前、いつもどおり帰ってきたお姉ちゃんの話を聞いていたら、もう帰ってこないつもりだと言われた。
それを聞いたときはショックだった。
これからどうやって生きていけば良いのかわからないくらいに。
でもその後、
「世界は広い。モモ、あなたもそれを実感してきなさい」
お姉ちゃんからその言葉を言われた日、私は村を出ることを決心した。
村の人はやっぱり引き止めてきたけど、この後の人生をここで消費したいとは思えなかった。
お姉ちゃんも帰ってこないし、覚悟を決めるため家を売った。
これがあるといつまでもお姉ちゃんに甘えてばかりの自分を変えられないと思ったから。
そしてそれで得たお金を使って、土人族の知り合いに嫌々頼んで可能な限り最高の武器とローブを制作してもらった。
小人族は土人族をライバル視しているため、仲は良いわけではないがそれでも交流し続けているのは土人族の道具制作のレベルが他の追随を許さないほどに高いだからだ。
嫌っている私達でも彼らの技術は文句のつけようがない。
だからこうして武器や防具を作ってもらうときは、実力は誰よりも認めている土人族に作ってもらうんだ。
ま、とりあえずこれで旅立つ準備は完璧だ。
もう思い残すことのなく、生まれ育った村を出てまずはバーンという村を目指すことにした。
お姉ちゃんもそこから始めたらしいから。
バーンに向かう途中、さっそく小人族以外の種族、人族とすれ違った。
この世界で最も数が多い種族とは言われているが私にとっては初めて見るものだった。
魔獣にも遭遇したけど小人族は小さい頃から近くの森で魔物と戦うことがあったので、簡単に対処できた。
移動し続けて一週間ほど、ようやくバーンに到着した。
冒険者ギルドというところで冒険者章を手に入れて、これで私も晴れて冒険者の一員だ。
あとは仲間探しするだけなのだが。
生まれてきてこの方、小人族としか話したことがない私にとってはそれは難しいことだった。
珍しがるような視線、種族が違うというだけで距離を置かれている気もする。
途方に暮れていたところ、「君、初心者だよね。うちのパーティーに入らない?」と男二人組に話しかけられた。
二つ返事で承諾して、ようやく私も夢に見たパーティーに入ることができた。
さっそく冒険に出ようとのことで近くの狩場に移動したが、私の出番はなく、男二人で事済ませていた。
温存させてくれているということなのだろうか。
なんの魔法を使えるのかや、実力も試させてもらえていないのに。
そのまま進んでいくと、私はローブをきたゴブリンを発見する。
村の近くでも時々出てはゴブリンを指揮して、後方から魔法を撃ってくるため相当厄介だったのは覚えている。
しかし、一体でいるところを見たのは初めてだ。
いつもなら、手下のゴブリンが周りにいるはずだが。
念の為、二人に報告すると、特殊個体だと目を輝かせていた。
なんでも普通のゴブリンより魔核が高値で売れるらしい。
なんだか怪しいと忠告したものの聞く耳を持たなかった。
草むらに隠れて、様子を見ていたがしびれを切らした一人が草むらから出た瞬間。
複数のゴブリンが物陰から飛び出してきた。
奇襲だ。
何かおかしいと思っていたけど、潜伏させていたとは。
ローブを着たゴブリンも続くように草むらから出てきた男に向かって炎の玉をいくつも発射する。
「くそっ!」と男はそれらを盾で防ごうとするが、鍛えられていない男の体では力負けして弾かれてしまう。
そして後方の私にまでその攻撃は届き、そのうちの一つが足に直撃してしまった。
身動きが取れなくなってしまった私。
徐々に追い詰められていった男たちはそれを見るとにやりと笑って、「じゃあな」と一言だけ残してゴブリンを置いて去っていってしまった。
「えっ」
その時私は頭が真っ白になった。
逃げようにも、足は怪我をしていてこれでは間に合わない。
迫りくるゴブリン。
ゴブリンが石斧を振り上げたときは怖さのあまり目を瞑った。
「・・・・」
しかし、何も起こらなかった。
目を開けると、そのゴブリンを一刀両断する少年の姿があった。
あとから来るゴブリンも全て一撃で倒し、足に治癒魔法をかけながら「大丈夫ですか?」と聞かれたとき、私は恋に落ちたんだと思う。
今まで恋愛なんてしたことなかった。
けど、絶体絶命のピンチを救ってくれて、しかも治療もしてもらって。
これで落ちないことはあるのだろうか。
見た目は人族の子供でもどこか大人な雰囲気を感じた。
バースまで同行してもらっているときも平静を装うのは苦労した。
気を抜けば顔が赤くなってしまう。
話していくうちに二人の名前がわかった。
少年はカインというらしい。
師匠と呼ばれるツバキって方も、相当な美人さんだ。
カインはツバキさんに恋愛感情はないみたいなので少しホッとしてしまった。
無事、バースについてギルドに入るとあの男二人組がいた。
カインたちから、最初から何かあったとき囮にする目的だったと聞いたときは怒りがこみ上げてきた。
何か謝罪の言葉を言っているようだがそんなのお構いなしだ。
怒りをすべてぶつけるつもりで全力で拳を振り下ろしてしまった。
やりすぎたかと思ったけど、ギルドの職員さんも全く問題ないと言ってくれたので一安心。
でもこれでまたパーティーを探さなくてはいけなくなってしまったわけだが、今は入りたいと心から思うパーティーがある。
「私を君たちのパーティーに入れてほしい」
二人にお願いすると、ツバキさんは厳しい言葉で覚悟はあるのと聞いてきた。
おそらくツバキさんは私の気持ちはわかっていて、カインくんのことが好きという理由だけで入ろうとしているのではないかという確認もかねてなんだろう。
確かに全くないと言ったら嘘になっちゃうけど、私はお姉ちゃんに次会うときは、妹ではなく立派な冒険者として会うという目標がある。
それを達成するためにも二人と旅を共にするのが最善だって感じたから入りたいって思ったんだ。
私はツバキさんに「はい!」と返事をすると、断られる覚悟もしていたが思ったよりもすぐに承諾してもらえた。
ホッとするのも束の間、すぐに切り替える。
ここまで言っといて二人に後悔はさせたくない。
死にものぐるいで頑張らなくちゃ。
そう私は心に決めたのであった。
田舎者と言われればそうなのかもしれない。
成人するまでの時間のほとんどをある村で過ごしていたんだから。
村人は全員が小人族。
他の種族なんて土人族くらいしか実際には見たことがない。
そのくらい閉鎖的な村だった。
そんな村で私は親がいない私にとって唯一の家族のお姉ちゃんと一緒に暮らしていたん。
でもある日、お姉ちゃんが冒険者なると言って村から出ていってしまった。
最初は一人で寂しかったけど、お姉ちゃんは何年かに一度帰ってきてとっておきの冒険談を話してくれたおかげでいつしかそれが楽しみで平気になっていた。
トップ冒険者パーティーの一員として最前線で戦っていることや、あのドラゴンとも一戦交えたとか。
みんなは嘘つき呼ばわりしていたけど私は信じて疑わなかった。
成人になる一年前、いつもどおり帰ってきたお姉ちゃんの話を聞いていたら、もう帰ってこないつもりだと言われた。
それを聞いたときはショックだった。
これからどうやって生きていけば良いのかわからないくらいに。
でもその後、
「世界は広い。モモ、あなたもそれを実感してきなさい」
お姉ちゃんからその言葉を言われた日、私は村を出ることを決心した。
村の人はやっぱり引き止めてきたけど、この後の人生をここで消費したいとは思えなかった。
お姉ちゃんも帰ってこないし、覚悟を決めるため家を売った。
これがあるといつまでもお姉ちゃんに甘えてばかりの自分を変えられないと思ったから。
そしてそれで得たお金を使って、土人族の知り合いに嫌々頼んで可能な限り最高の武器とローブを制作してもらった。
小人族は土人族をライバル視しているため、仲は良いわけではないがそれでも交流し続けているのは土人族の道具制作のレベルが他の追随を許さないほどに高いだからだ。
嫌っている私達でも彼らの技術は文句のつけようがない。
だからこうして武器や防具を作ってもらうときは、実力は誰よりも認めている土人族に作ってもらうんだ。
ま、とりあえずこれで旅立つ準備は完璧だ。
もう思い残すことのなく、生まれ育った村を出てまずはバーンという村を目指すことにした。
お姉ちゃんもそこから始めたらしいから。
バーンに向かう途中、さっそく小人族以外の種族、人族とすれ違った。
この世界で最も数が多い種族とは言われているが私にとっては初めて見るものだった。
魔獣にも遭遇したけど小人族は小さい頃から近くの森で魔物と戦うことがあったので、簡単に対処できた。
移動し続けて一週間ほど、ようやくバーンに到着した。
冒険者ギルドというところで冒険者章を手に入れて、これで私も晴れて冒険者の一員だ。
あとは仲間探しするだけなのだが。
生まれてきてこの方、小人族としか話したことがない私にとってはそれは難しいことだった。
珍しがるような視線、種族が違うというだけで距離を置かれている気もする。
途方に暮れていたところ、「君、初心者だよね。うちのパーティーに入らない?」と男二人組に話しかけられた。
二つ返事で承諾して、ようやく私も夢に見たパーティーに入ることができた。
さっそく冒険に出ようとのことで近くの狩場に移動したが、私の出番はなく、男二人で事済ませていた。
温存させてくれているということなのだろうか。
なんの魔法を使えるのかや、実力も試させてもらえていないのに。
そのまま進んでいくと、私はローブをきたゴブリンを発見する。
村の近くでも時々出てはゴブリンを指揮して、後方から魔法を撃ってくるため相当厄介だったのは覚えている。
しかし、一体でいるところを見たのは初めてだ。
いつもなら、手下のゴブリンが周りにいるはずだが。
念の為、二人に報告すると、特殊個体だと目を輝かせていた。
なんでも普通のゴブリンより魔核が高値で売れるらしい。
なんだか怪しいと忠告したものの聞く耳を持たなかった。
草むらに隠れて、様子を見ていたがしびれを切らした一人が草むらから出た瞬間。
複数のゴブリンが物陰から飛び出してきた。
奇襲だ。
何かおかしいと思っていたけど、潜伏させていたとは。
ローブを着たゴブリンも続くように草むらから出てきた男に向かって炎の玉をいくつも発射する。
「くそっ!」と男はそれらを盾で防ごうとするが、鍛えられていない男の体では力負けして弾かれてしまう。
そして後方の私にまでその攻撃は届き、そのうちの一つが足に直撃してしまった。
身動きが取れなくなってしまった私。
徐々に追い詰められていった男たちはそれを見るとにやりと笑って、「じゃあな」と一言だけ残してゴブリンを置いて去っていってしまった。
「えっ」
その時私は頭が真っ白になった。
逃げようにも、足は怪我をしていてこれでは間に合わない。
迫りくるゴブリン。
ゴブリンが石斧を振り上げたときは怖さのあまり目を瞑った。
「・・・・」
しかし、何も起こらなかった。
目を開けると、そのゴブリンを一刀両断する少年の姿があった。
あとから来るゴブリンも全て一撃で倒し、足に治癒魔法をかけながら「大丈夫ですか?」と聞かれたとき、私は恋に落ちたんだと思う。
今まで恋愛なんてしたことなかった。
けど、絶体絶命のピンチを救ってくれて、しかも治療もしてもらって。
これで落ちないことはあるのだろうか。
見た目は人族の子供でもどこか大人な雰囲気を感じた。
バースまで同行してもらっているときも平静を装うのは苦労した。
気を抜けば顔が赤くなってしまう。
話していくうちに二人の名前がわかった。
少年はカインというらしい。
師匠と呼ばれるツバキって方も、相当な美人さんだ。
カインはツバキさんに恋愛感情はないみたいなので少しホッとしてしまった。
無事、バースについてギルドに入るとあの男二人組がいた。
カインたちから、最初から何かあったとき囮にする目的だったと聞いたときは怒りがこみ上げてきた。
何か謝罪の言葉を言っているようだがそんなのお構いなしだ。
怒りをすべてぶつけるつもりで全力で拳を振り下ろしてしまった。
やりすぎたかと思ったけど、ギルドの職員さんも全く問題ないと言ってくれたので一安心。
でもこれでまたパーティーを探さなくてはいけなくなってしまったわけだが、今は入りたいと心から思うパーティーがある。
「私を君たちのパーティーに入れてほしい」
二人にお願いすると、ツバキさんは厳しい言葉で覚悟はあるのと聞いてきた。
おそらくツバキさんは私の気持ちはわかっていて、カインくんのことが好きという理由だけで入ろうとしているのではないかという確認もかねてなんだろう。
確かに全くないと言ったら嘘になっちゃうけど、私はお姉ちゃんに次会うときは、妹ではなく立派な冒険者として会うという目標がある。
それを達成するためにも二人と旅を共にするのが最善だって感じたから入りたいって思ったんだ。
私はツバキさんに「はい!」と返事をすると、断られる覚悟もしていたが思ったよりもすぐに承諾してもらえた。
ホッとするのも束の間、すぐに切り替える。
ここまで言っといて二人に後悔はさせたくない。
死にものぐるいで頑張らなくちゃ。
そう私は心に決めたのであった。
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