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今日のよき日に
2-8 夜の続き
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夜更かししたせいか達した瞬間に強烈な眠気に襲われて、壱は秋を下敷きにして寝落ちしてしまった。
すぐに目を覚ましたが、時計を見ると15分程経っている。起き上がろうとして、下半身の違和感と湿った音で秋の中に挿入したままだと気付く。
「うわっ!ごめん、寝てた」
「んぅ……」
壱が身じろぎすると、ローションのお蔭でずるりとスムーズに抜ける。体温が移った塊が体から抜けて秋は呻き声を上げたが、もぞもぞと体を起こす。寝起きのぼんやりした表情で髪がくしゃくしゃになっている。昨晩壱が梳かして乾かしたから、少し撫でるとすぐに元に戻った。
「あー……垂れてる……」
秋は壱に頭を撫でられていることなど気にせず、ベッドの上で膝立ちになるとティッシュを取って、足の間から零れる泡立ったローションを拭き取る。一度出して冷静になった壱は、野良猫の毛繕いを見るような気持ちでそれを眺めていた。
「風呂入る?」
壱が尋ねると、秋から返事の代わりにぐごごごごと地響きのような音が聞こえて来る。いつもの秋の声よりも大きなこの音は、秋の腹から聞こえて来るらしいと気付く。
「どうした?お腹壊した?」
「……違う」
「もしかして、お腹空いてる?」
壱が尋ねると、秋は眠気と食い気の狭間にいる覇気のない顔で頷いた。
(そういや、秋は昨日の夜、食べていないな……)
秋にしてみれば、既に3食は食べ損ねている計算になる。
遅い朝ご飯の準備をしようと壱が部屋を出ると、秋も続いてぺたぺたと付いて来た。
日が差す明るいリビングで、シャツを1枚しか着ていない秋が夜の匂いのままうろうろしているのは違和感があった。昨晩洗濯をしてリビングに干していた秋の服は乾いている。
さっそく昨日の続きのゲームを始めようとテレビに向かう秋を止めてパンツを渡し、大人しく服を着た秋を引き摺ってキッチンに向かった。
「何か買って来る?あ、店も開いてるだろうし、外に食べに行くってのも……」
壱は冷蔵庫を開けて、お茶を出しながら言った。
しかし、壱が言っている間も秋の腹からはぐるぐると音が聞こえて来るし、壱が手を離すと空腹をそのままにゲームは始めそうだった。
壱は面倒になって冷蔵庫のタッパーを取り出してダイニングテーブルに並べた。
「これ、食べていいよ」
秋の相手をしていると、同級生に母親の作り置きのおかずを出すのは恥ずかしい、とか考えているのが面倒臭くなってきた。
弁当箱に限界まで白米を詰めている秋の母親の気持ちがわかったような気がする。
「いただきます」
秋は椅子に座ると、箸を握り締めてタッパーから直接もりもりと食べ始めた。セットしておいた炊飯器からご飯を盛って秋の前に置いて、壱も付き合って食卓に着く。秋の食べっぷりは興味深かったが、朋が作った全部同じ味がするおかずの群れは食べる気になれない。
「秋、美味しい?」
壱が尋ねると、秋が不思議そうな顔で壱を見上げた。
余計な事を聞いた、と壱は少し後悔する。
たとえ口に合わなかったとしても、壱の親が作った料理に正直な感想を言うはずがない。それに、尋ねるまでもなく大して美味しくないことは壱も良く知っている。
しかし、秋の箸は止まっていなかった。
「あのさ、これ、全部食べたら駄目だよな」
「え、美味いの?」
「うん。でも、壱のご飯だから全部食べたら駄目、かな……」
「いや、全然大丈夫。食べていいよ」
「いいの?」
「ああ、いいよ。全部食べて」
「いいの?」
母親がせっかく作ってくれた料理でも、壱一人だと食べ切れずに腐らせてしまうことがある。
自分が嫌々消費するよりも、喜んでくれる秋が全部食べてくれるならそれが一番だ。
好きなだけどんどん食べてくれと、壱は空になった茶碗を受け取って御代わりを準備した。
すぐに目を覚ましたが、時計を見ると15分程経っている。起き上がろうとして、下半身の違和感と湿った音で秋の中に挿入したままだと気付く。
「うわっ!ごめん、寝てた」
「んぅ……」
壱が身じろぎすると、ローションのお蔭でずるりとスムーズに抜ける。体温が移った塊が体から抜けて秋は呻き声を上げたが、もぞもぞと体を起こす。寝起きのぼんやりした表情で髪がくしゃくしゃになっている。昨晩壱が梳かして乾かしたから、少し撫でるとすぐに元に戻った。
「あー……垂れてる……」
秋は壱に頭を撫でられていることなど気にせず、ベッドの上で膝立ちになるとティッシュを取って、足の間から零れる泡立ったローションを拭き取る。一度出して冷静になった壱は、野良猫の毛繕いを見るような気持ちでそれを眺めていた。
「風呂入る?」
壱が尋ねると、秋から返事の代わりにぐごごごごと地響きのような音が聞こえて来る。いつもの秋の声よりも大きなこの音は、秋の腹から聞こえて来るらしいと気付く。
「どうした?お腹壊した?」
「……違う」
「もしかして、お腹空いてる?」
壱が尋ねると、秋は眠気と食い気の狭間にいる覇気のない顔で頷いた。
(そういや、秋は昨日の夜、食べていないな……)
秋にしてみれば、既に3食は食べ損ねている計算になる。
遅い朝ご飯の準備をしようと壱が部屋を出ると、秋も続いてぺたぺたと付いて来た。
日が差す明るいリビングで、シャツを1枚しか着ていない秋が夜の匂いのままうろうろしているのは違和感があった。昨晩洗濯をしてリビングに干していた秋の服は乾いている。
さっそく昨日の続きのゲームを始めようとテレビに向かう秋を止めてパンツを渡し、大人しく服を着た秋を引き摺ってキッチンに向かった。
「何か買って来る?あ、店も開いてるだろうし、外に食べに行くってのも……」
壱は冷蔵庫を開けて、お茶を出しながら言った。
しかし、壱が言っている間も秋の腹からはぐるぐると音が聞こえて来るし、壱が手を離すと空腹をそのままにゲームは始めそうだった。
壱は面倒になって冷蔵庫のタッパーを取り出してダイニングテーブルに並べた。
「これ、食べていいよ」
秋の相手をしていると、同級生に母親の作り置きのおかずを出すのは恥ずかしい、とか考えているのが面倒臭くなってきた。
弁当箱に限界まで白米を詰めている秋の母親の気持ちがわかったような気がする。
「いただきます」
秋は椅子に座ると、箸を握り締めてタッパーから直接もりもりと食べ始めた。セットしておいた炊飯器からご飯を盛って秋の前に置いて、壱も付き合って食卓に着く。秋の食べっぷりは興味深かったが、朋が作った全部同じ味がするおかずの群れは食べる気になれない。
「秋、美味しい?」
壱が尋ねると、秋が不思議そうな顔で壱を見上げた。
余計な事を聞いた、と壱は少し後悔する。
たとえ口に合わなかったとしても、壱の親が作った料理に正直な感想を言うはずがない。それに、尋ねるまでもなく大して美味しくないことは壱も良く知っている。
しかし、秋の箸は止まっていなかった。
「あのさ、これ、全部食べたら駄目だよな」
「え、美味いの?」
「うん。でも、壱のご飯だから全部食べたら駄目、かな……」
「いや、全然大丈夫。食べていいよ」
「いいの?」
「ああ、いいよ。全部食べて」
「いいの?」
母親がせっかく作ってくれた料理でも、壱一人だと食べ切れずに腐らせてしまうことがある。
自分が嫌々消費するよりも、喜んでくれる秋が全部食べてくれるならそれが一番だ。
好きなだけどんどん食べてくれと、壱は空になった茶碗を受け取って御代わりを準備した。
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