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兄の物語[42]それが無茶ではなくなった

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(あ、あいつ……本当にバカでしょ!!!!!)

元々グラッシュバッファーを仕留めるのに、自分なりの策があると口にしていたので、ファーストコンタクトをどうするかは確かに任せた。

(うわぁ…………ありだね。私はタンクなんだし、今度真似してみよ)

ペトラだけではなく、フローラやクライレットも最初のアクションはバルガスに任せようと決めた。

(これはまた……ふふ、バルガスらしいね)

そんなバルガスが取った行動は、グラッシュバッファーの突進を真正面から受け止めること。

バルガスも強化系のスキルを使用し、体に魔力を纏っている。
ただ、それはグラッシュバッファーも同じであり、深く考えずとも……バカ過ぎる行動である。

(っ!!!!! やっぱり、強烈だな!!!!)

体の中に溜め込んでいた酸素が全て出かけた。
それでもグラッシュバッファーの角を冷静に掴むことに成功し、後ろに押されようとも耐えて耐えて耐える。

「へ……へっへっへ。これが、限界みてぇだな?」

「っ!!!!!!」

「ぃ、よいしょッ!!!!!!」

完全に突進を受け止めたバルガスはそのままブリッジの体勢を取り、グラッシュバッファーを叩きつけた。

それは最近考えた、相手の腹が見えてしまえば勝ったも同然。
そんな勝ちパターンと重なる。

「最高だよ、バルガス」

クライレットの細剣が突き刺さり、終了。

最後の最後に必要だった魔物との戦闘も三十秒と掛からずに終わった。

「…………」

「不満そうな顔だね、ペトラ」

「そんな事ないわよ、フローラ……ただ、考えを切り替えただけよ」

策がある。
それしか聞いていなかったため、まさかグラッシュバッファーのタックルを正面から受け止めるとは思っていなかった。

あんたはバカかと、思いっきり頭をはたいてやろうかと思ったが、寸でのところで留まった。

(あのバカは、Cランクの魔物が相手でも、あぁいう事が出来るレベルになった……認めるしかないわね)

カッコつけて片手だけで止めようとしていたら、例え運良く成功したとしても思いっきり引っ叩いていた。
だが、バルガスは冷静に両手で……前進で受け止めた。
その上で仲間が確殺出来る体勢に持っていった。

「まっ、それでも実行する前にもうちょっと説明してほしいわね。普通に心臓に悪いわ」

「なっはっは!!! 悪ぃ、悪ぃ。でもよ、馬鹿正直に伝えたら絶対に止めるじゃん」

「私は止めるわ。でも、多分クライレットは賛成するでしょ」

「っ、はは。そうだね……多分、僕はバルガスなら大丈夫だと思って、許可するかな」

伊達に数年もパーティーを組んで共に行動してない。

普段は冷静でクールな態度を装っているが、いざ実戦で……重要な場面に直面した際に発生したリスク、スリルを……クライレットは嫌っていない。

(二人がアクセル。私とフローラがブレーキ……なんだかんだで、それが丁度良いバランスなのよね~)

突っ走る、リスクを好むメンバーなど、パーティーで一人いればそれで十分。
冒険者として他の同期、先輩たちを見てきたからこそ、それはそれで必要な人材なのだと理解はしている。

ただ……パーティーにそういうタイプの人間が二人も居てほしくはない。

(でも、フローラも時々そういう無茶をするのよね…………うん、いくら私がそれなりに弓と魔法を使える後衛だからって、さすがにそれは厳しい。そういう時はクライレットが一歩下がって後ろから対応してほしいのだけど……)

無茶をしなければいけない場面だからこそ無茶をするのと、壁を破壊する……今よりも一歩先に進むために無茶をするのとでは訳が違う。

しかし、ペトラの本能は……既に理解していた。

四人組のパーティーで、その内の三人が無茶をしようと前に出た場合、自分はどうすれば良いのか。
後日、本人がそれを意識的に理解する機会が訪れる。
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