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豊と秋口小麦

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「………………。」

「おっはよぉ。あれぇ、豊さんご機嫌斜めさん?」


首を傾げて間借りすることになったこの部屋の主………、敬愛する春山燻監督のご長男の顔を見上げる。

すらら~っとした長身の、ピシッとしたしっかり者が、多少草臥れた…というか、目の下にクマを作って不愛想。


「歯ぎしりがうるさい。いびきがうるさい。寝言がうるさい。病院行け。」

「えぇっ、うそぉ。僕、そんなにひどかったのぉ!」


「その態とらしいぶりっ子もやめろ。イライラする。」



「わざとらしいっていっても、僕は生まれつきこんな声だし、こんなかわいい狸顔でチビなんだから仕方なくない?」

「誇張しているのは故意だろうが。」



ふぅ、と秋口は息をついて半目で豊を見た。


「おっちょこちょいなところがあるのも本当だし、こんな顔で声なんだから、無理して低い声作ったり大人っぽい見た目になる様に努力するより、それを活かしているだけですよ。子どもの頃はアニメ声だってどれだけいじめられたことか。ぶりっ子なんてしてなくてもぶりっ子だって虐められるんだから、逆手にとって強かに生きなきゃ。豊さんこそ冬木さんの前と他ではだいぶ態度が違うじゃないですか。マネージャーの時は冬木さんべったりで、ちょっと何かあるとオロオロ、オロオロしちゃって。地はだいぶガラ悪いし。」


「言うねぇ。この家ではそのキャラでいなよ。」

「嫌ですよ。急にキャラ変したら夏目さんも監督もびっくりするでしょ。僕はかわいくて憎めない可愛い秋口マネージャーです☆便利なんですよぉ~。僕が失態したり空気読めないふりすれば、東雲さんみたいな人から夏目さんを守れますしねぇ~。いや~なお誘いやオファーも断れるし。悪者は僕がなればいいんですよぉ。」


「なるほどね。でも病院は行け。絶対それ過労だから。人気俳優のマネはそんな過酷なのか?もう一人くらい雇えないのか?」

「うーん…。これは、仕事って言うよりぃ……。」



「徹夜でアニメの録画みたりモバゲしてるだと!ばかか!!」


「うひぃ~馬鹿っていったぁ~。ひどぉい。」

「今度夜にスマホが光ってたら没収してやる!」

「酷い!」

「朝になったら返してやる!」


揉めながらリビングへ行くと。



なんていうことでしょう。

僕たちの天使たちが互いにもたれかかっている状態でソファーで寝ているではありませんか。





弟だいすき♡の豊さんの顔が羅刹のようになっていたのを直したのは僕です。

頬にキスで機嫌が直るなんて簡単な人ですね。

夏目さん褒めてください。

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