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本編

金で買えないものはこの世にはない

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 お金は全ての災いの元である。俺の家は代々続く由緒正しい貴族の家系で大金持ちだった。

 そうのである。大金持ちの時代も俺の親の代でおわった。人の良い父は、お金がなく困っていると言う貴族の友達にお金を貸した。それも普通の人が一生働いても稼げないような大金を貸したのだ。それだけならまだよかった。。
 しばらくしてお金を貸した貴族の友達は、人身売買の主犯として捕まったのである。しかも、貸したお金はその犯罪の元手となることに使われたのである。よって、父もその犯罪に関わったのではないかというあらぬ疑いをかけられたのである。当然父は犯罪に加担などしていなかったのだが、なぜか貴族の友達あの犯罪者が嘘の証言をしたことによって俺の家は罰を受けることになった。
 王都にあった家は無くなり、辺境の地に領主として住むことになった。王都からは馬車で10日以上かかり、一年中寒く住みにくい所だった。あの時貸したお金は帰ってこず、住み慣れない地に移された。それからは、貧乏貴族まっしぐらだった。父は領民からはほとんど税をとらなかったのだ。領民からは心優しい領主様が来てくださったと崇められ信頼を得たが、家では毎日食べていくのさえやっとであった。
 
 まあ、これは10年以上前の話である。今考えてみれば、確かな証拠などなく一人の証言で俺の家が貧乏貴族に落とされたのは完璧に嵌められたと思う。あの友達犯罪者も人身売買という大逆をおこしたにも関わらず、すぐに釈放され未だに貴族という地位についていることから明らかだろう。つまり、政治的に大きな権力を持っていた俺の家を失脚させたかったのだろう。。。
 現在俺は王都で、「魔法学研究所」で所長として働いている。魔法学研究所、通称魔研は変態の集まりだと言われている。なぜそう言われているかというと、魔法が好きで好きで仕方がなく、毎日机の前で研究に明け暮れている、また休みはあるが休みの日も研究所に来て研究しているからであろうか。そんな俺も研究狂いである。
 なぜ貧乏貴族であり辺境の地に住んでいた俺だったが、なぜ王都にいると思う?実は父のコネでいれてもらえたのである。父と以前の魔研の所長は学生時代からの友人であった。俺は魔法の才能があり興味があったため父が頼んでくれたのである。そんなこんなで魔研で働くことができ、今年所長がやめる時に新所長として俺がつくことになったのである。わずか28歳の俺がである。俺より先輩なんて何人もいるのになぜ俺がと思ったがすぐに理由は分かった。それは、、、、、所長になると書類の確認・会議などの雑務が増え、研究の時間が減るからである。そういう訳で、誰もやりたがらなかった為俺が「魔法学研究所 所長」になったのである。
 
 俺ことシノ・アイゼンベルクは、今日も魔研にいって研究。というわけではなく、一か月ぶりに休みである。本当は魔研に行って研究したい。なぜなら、魔研で研究している間であればが出るからである。また、今やっている研究について成果を残したいからである。
 それなのにだ!今日は休みだ。。。王都で一人暮らししている家でゴロゴロというわけにはいかず、生憎用事がある。人に会うためオシャレな服を着たいがほんどなく、しょうがなく黒のズボンに白のシャツ・黒のフード付きの上着である魔研の正装を着ていくことにした。そして、鏡の前の自分に『よしっ』気合いを入れて家を出た。


 待ち合わせ場所である王都の中央にある噴水の前に一人の男がいた。噴水の近くにはたくさんの人たちがいたにも関わらず、彼の周りは彼が醸し出す雰囲気のせいで誰も近づけずにいた。そんな彼に話かける勇気が出ず近くに木に隠れた。さっきから周りからの視線が痛い。俺は覚悟決めて、わざと今来ましたよ感をだす為に走りながら彼に声をかけた。
 「、、、あの!すいません!お待たせしました。」
 「おはよう、シノ。全然待ってないから大丈夫だよ。さあ行こうか。」
 「はい!」
 遅く来た俺に対して怒りもせず、爽やかな笑顔をむけてきた。本当にイケメンだなこのやろう。しかもさりげなく手を繋いでいる。地味で平凡な俺がこんなイケメンと手を繋いで歩いているからか周りの人たちが見ている。そんな視線を気にしないで、彼は頬が崩れ落ちそうな笑顔で俺を見ている。なぜ彼はこんな笑顔を俺に向けているのか至極謎である。彼と会ったのは約一か月前である。

 
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