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第10話
しおりを挟むテラの小屋に着くかなり前の地点で、テラか待ち受けていた。
打ち合わせになかった行動なので、何かあったのかと思い尋ねると、
「人数がお二人のようでしたので、念のためお出迎えさせていただきました。大過ないようで何よりです」
なるほど、打ち合わせにない行動をしたのはこちらが先というわけだ。
「ああ、心配をかけた。アジトの殲滅自体は予定通り終わったよ。だが、ちょっと拾い物をしてね」
「メリダです。お世話になりまーす」
メリダが会話に割り込んでくる。
「彼女は、奴らのアジトに捕らわれ、売り飛ばされようとしていたんだ。僕らとは無関係だが、放っておくわけにもいかないので、仕方なく連れてきた」
「仕方ないってなによー」
事情を説明すると、テラは頷いた。
「状況は把握しました。彼女の扱いはどのようにいたしましょう?」
「それなんだが、正直、僕もちょっと困っている。あまり危険なことに巻き込みたくないし、僕達の情報を外に流されても困る」
テラはふむ、と指を顎に当てた。
「でしたら、もういっそのことこちらの仲間にしてしまえばよろしいのではないでしょうか。裏切りが心配なのでしたら、若干抜け道ではありますが、よい方法があります」
「というと?」
「彼女が我々に対して悪意や敵意、裏切り行為を企むような気持ちを抱くと、それがわかるような処置をすることが可能です。ただし、これは倫理規定のいくつかの項目に引っかかるため、現在のヘンリー様の権限では実行することができません。ですので、ヘンリー様の意志ではなく、私の権限でそれを実行いたします。その場合、彼女の敵意等が伝わるのは、ヘンリー様ではなく私になりますが、特に問題はないかと」
テラが説明する。
なるほど、それは確かに倫理的に問題がありそうだ。
「つまり、メリダが僕らを裏切ろうとしたら、それが君に伝わるようにすることができるわけだな」
メリダにも分かるようにまとめる。
ちらりとメリダの方を見ると、ものすごくイヤそうな顔をしていた。
確かに、限定的とはいえ、心を覗かれるのは不快だろう。
だが、一緒に行動してもらうのなら、これ以上に良い方法はないと思う。
倫理面に目を瞑ればだが。
「メリダ。さっき言ったように、僕達は善人じゃない。僕達の所に来たいというのならば、その処置は必須だ。テラの処置を受けて僕らの所に来るか、やっぱり一人でどこかへ行くか、選んでくれ」
「ええ~……」
メリダは唇を突き出し、苦い顔をしてみせた。
「でもまぁ……。他に行くあてもないし……しょうがないかぁ……」
渋々といった感じで頷くメリダ。
「悪いな」
「ご協力ありがとうございます」
テラはそう言うと、メリダの前に進み出た。
そしてメリダの額のあたりに手をかざす。
テラの手のひらから、青色に光る紋様が浮かび出て、メリダの額へと吸い込まれていった。
「ん……。なんか、変な感じ……」
メリダが言う。
「違和感はすぐ消えます。この技法はミホ様が魔法と科学を組み合わせて開発なさったものですので、現在では私以外には解除はできません。また、ヘンリー様に対する悪意や敵意といった感情のみを私に送信するものですので、過度にプライバシーを侵害することはありません」
「よくわかんないけど、そりゃどうも……」
メリダは、諦めたような口調で言った。
ともあれ、これで強制的にでもメリダは僕らと一蓮托生になったわけだ。
頼りになるかどうかはわからないが、仲間が一人増えたと前向きに捉えることにしよう。
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