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5 ナトジャの村

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 ナトジャの村に近づくと牛の鳴き声が聞こえてきた。
 牛、いるんだなぁ。

「ナトジャの村には鍛冶屋もあるし雑貨屋もあるから、ある程度の装備は揃うはずよ」

「鍛冶屋って何が売ってるの?」

「武器とか防具よ」

 あ、あるんだそういうの。
 そういえばモンスターがいるって言っていたっけ。
 改めて俺は自分の装備をみる。
 黒い綿のパンツに、茶色のブーツ、薄手の丈の長いカーディガン。防具と呼べるものはないし、武器も持っていない。
 アレクシアは革の鎧を着ているし、腰には剣をぶら下げている。

「モンスターってよく出るの?」

「そうねぇ。ひんぱんじゃぁないけど、山の奥に行けば会えるわよ? だから道も山奥に入らない様に迂回してつくられているのよ」

「へぇ。どういうのがいるの?」

「ゴブリンとかオーク……」

 やばい、ロープレゲームの初期の敵じゃないか。
 わくわくして俺は、アレクシアの言葉を聞いた。

「それにドラゴンもいるらしいんだけど、ほぼ伝説と化していて本当にいるのかはわからないのよね」

「ドラゴン? まじでドラゴンがいるの?」

 やばい、テンションあがる!
 でも会ったら死ぬよな絶対。
 急に俺のテンションが上がったからか、アレクシアは驚きの顔になった。

「え? えぇ、この大陸には二匹のエンシェントドラゴンがいるらしいの。その二匹はとっても頭がよくて人の言葉も喋るらしいんだけど、最後に目撃されたのは百年以上前のことよ」

「へえ、そうなんだ」

「山の奥深くの火山の中にすんでいるっていう噂だけど、本当のところはわからないのよね」

 ドラゴンかぁ……今の話からすると会うのは無理そうだな。ちょっと残念。
 そんな話をしているうちに家が増えてきて、俺たちはナトジャの村に入ったようだった。
 家の多くは平屋で、木造のようだ。
  
「あらアレクシアちゃん、久しぶりねえ」

「お久しぶりです!」

 すれ違う人たちは皆、アレクシアに好意的に挨拶をしていくことから、彼女はよく知られた存在だとわかる。
 にしても人間ばっかりでエルフはもちろんドワーフもホビットもいなさそうだな……

「この大陸には人間とエルフ以外にはいないの?」

「いるわよ? ドワーフが有名だけど、私は会ったことないわね。ほとんどの国は人間によって統治されているし、亜人は森の中でひっそりと暮らしているのよ」

 なんかゲームとか漫画とかだと当たり前のようにエルフやドワーフがいて仲間になったりするけど、現実は滅多に姿を見かけないんだなぁ……

「そうなんだ。じゃあ、アレクシア、目立つんじゃあ……」

「だからフードを被るのよ。旅人自体は珍しくないし、フードを被れば耳が隠れるから人と変わらないから」

 あ、そこまで考えてるんだ。確かに長い耳を隠せば人間と変わんないもんな。

「まあこの村は私たちエルフと交流があるから、わざわざ頭を隠さなくても大丈夫だけどね」

 そんな話をしている間に村の中心ぽい所に着いた。
 商店が並び、宿屋らしき建物がある。
 アレクシアさんの言う通り、旅人は珍しくないらしく大きなリュックを背負った人たちの姿が目立った。
 
「とりあえず今夜はここに泊まりましょう。宿屋を決めて、貴方の装備を買いにいきましょう」

 そしてアレクシアは宿屋のひとつを指差した。
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