女王の想い人~16年間寒村で育った私が、王の娘だったなんて
今よりもずっと、ずっと昔の話。
一人の少女が恋をした。
少女は、その国の太子が庶民の娘との間に為した子であるが、その事実は当の太子にも伏せられており、ただ一部の者しか知らない。
少女は、王朝の記録にも残されていない子である。
今では、その太子はこの国の王となっていた。
少女は、母親と寒村で暮らし、幼なじみの少年と結婚の約束を交わしている。
少年は、少女に樫の木を削り作ったかんざしを少女に渡していた。
それは、結婚式で少女が付ける為に少年が作ったものである。
この村では、少女は16歳の年までは結婚をしてはならず、家を支えることとされており、少女の誕生日までは、あと1ヶ月となっていた。
その頃、都では流行り病が流行っており、朝廷内においても多くの者が病に倒れていた。
現太子も病に倒れ、床に伏せっているのだ。
王は、唯一の後継者である太子の病に心を痛め、床に伏せってしまい、大いに朝廷は混乱した。
そこで、先王からの重臣が、現王に少女のことを告げる。
王は、少女を探し出し、王城に連れてくるように命令をした。
少女の16歳の誕生日の日の朝、少女の前に王の兵士たちが現れた。
少女を花嫁として迎えに来た少年は、兵士たちに取り押さえられている。
少女は、母親とともに王城に連れていかれることになったのだ。
少女の名前は、『冬花(とうか)』、後に、この国で唯一の女王となり、「賢母王」としてもっとも民に慕われた女王となる。
少年は、王城に向かう冬花に叫んだ。
「逃げたくなったら、俺のかんざしを着けろ。必ず俺がお前を連れ去りに行く!」
少年の名前は、『優季(ゆうき)』、後に、冬花を守る近衛隊の一員となる。
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