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第43話 獣
しおりを挟む「馬鹿なの…死にたいの? 候補生は兎も角、ワルキューレは多分、私より強いわ…なにやっているのよ!」
此処で手札を切りたくはなかったな。
これは種がバレたら終わりだし…
「どうせサクヤヒメは助けてくれないんだよね? だったら、仕方ないじゃない? それにもし勝てても次が待っているのなら…こうした方がまだ勝てる率は上がるから」
一対一のタイマンを15回も繰り返したら手の内がバレて途中で確実に殺される。
恐らく候補生2人に勝っても、きっと無理やりワルキューレ達と戦わされる未来が待っている気がする。
ならば…この方がまだ勝率はあがる。
「どうせ死ぬなら…そう言う事なの?」
「そう言う事…悪いけど準備に掛かるから、サクヤヒメは黙ってて」
「解った」
チェンソーに拳銃…それにマシンガン…色々用意してきたけど。
まずは着替えだ。
特殊ゴム製のカッパ…一応は防刃処理がされていて切れにくくなっている。
それに軍事用ブーツ…それに特殊マスク…をつけてと…
しかし…リングで戦うのか…まぁ通常のリングよりかなり大きいが…
それじゃ武器はリングにあげてと…
そうだ…忘れずにビデオカメラの設置…まぁ約束だ仕方がない。
これで準備完了だ。
◆◆◆
「何だい、その恰好は?」
「映画…エルム湖の殺人鬼のコスプレですね…少しカッコ良くしようと思いまして」
「そうかい? それでそのカメラは?」
「俺の友達がワルキューレのファンなんです…借りがあるのでプレゼントしようと思いまして」
「自分が殺される動画をプレゼントかい?」
「まぁそうなりますね…」
「随分と武器を揃えたね…まぁ自由に使って良いけど」
「一応、確認なんですが、何でもありで死ぬまで…そのルールなんですよね」
「ああっ、それで間違いない」
「解りました」
体が震える…殺さなければ殺される。
やるしかない。
◆◆◆
「私がワルキューレのリーダーブリュンヒルドです…あらあら、随分可愛らしい男の子ですね…せめてもの花向けで水着をきてあげましたよ」
「ありがとうございます」
「随分可愛いのね兎さん…まぁ対戦相手になっちゃ仕方ないね…ほうら私はTバックだ。ワルキューレ13人に殺される、ある意味幸せな死に方かもね」
「ごめんね、候補生の私の練習相手になった為にこんな事になって…楽に殺してあげるから…」
「ハァ~お前はまだワルキューレじゃねーだろう? 私の名前はスクルド…あんた好みだわ…こんな出会いじゃ無ければ…まぁ違った道があったのかもね…可哀そうだから…そうね、これとっちゃう…結構な美乳だろう? 3分間見放題だ…サービス、サービス」
「ううっ…ありがとう」
「さぁ少年、3分間思いっきり楽しめ…そして死ね…スタートだ」
「皆、馬鹿で…ありがとう」
俺は用意して置いた物を床に叩きつけた。
◆◆◆
「う~ん…あれ…私は…」
「サクヤヒメ…目が覚めた?」
「泰明…え~っ!」
見た瞬間、目を疑った。
目の前にはワルキューレ13人と候補生2人の死体がある。
しかも…それだけじゃない…マイケルの死体もある。
「ウエッゲェェェェェェェェェーーッ ハァハァハァハァ うぷっうぷっ…」
私だって殺人鬼だ。
只の死体なら幾らでも見た。
だが、目の前の死体は違う。
言い方を変えれば…死の尊厳が完全に踏みにじられている。
ある者は両手両足が切断されたうえで内臓が飛び出している。
死体をおもちゃにした…それが一番近い表現だ。
お腹を裂かれた状態で…他の死体の頭を突っ込まれた様な物。
口の中に他の死体からもぎ取った手が突っ込まれているようなもの…
地獄…
それしか思いつかない。
ビデオが回っているその前で泰明はその死体を弄ぶように遊んでいる。
「これ切り取った手を4つ繋げて、真ん中にブリュンヒルドの首をね入れてみたんだレリーフみたいで面白いよね」
私は何を見ているんだ…これは夢…
「ああっ」
「こっちはね、手足切断してうつ伏せにしたんだ…有名な人間椅子…なんちゃって」
「ああっあああ…」
ワルキューレの死体をまるで積み木かなにかの様におもちゃにしている。
これは夢だ。
可笑しい、可笑しすぎる…泰明が勝てる筈が無い。
手足だけじゃない、乳房を切り取り…目を抉り、裸の死体を弄ぶ。
あれは…人間じゃない…獣…いや鬼だ。
「ああっ」
「あはははははははっ、もっと面白く楽しんだ様にしないと…」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
恐怖に体が震え…耐え切れず…私は意識を手放した。
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