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カッシム様が体調不良により学園を休学される事になりました。
わたくしも婚約者としてカッシム様のお見舞いに伺おうと思ったのですがお断りされてしまいましたわ。
お兄様、継母、義妹、婚約者とその浮気相手……と、わたくしに関わった方々が連続して体調に不調をきたした事で、さすがに周りも異変を感じ始めた様です。
ですがわたくしの事を生まれてからずっと『無能』だと蔑んできたので今更わたくしが『他者の体に干渉できるほどの魔法が使える』などと認めたくないのでしょう。誰も目に見えてわたくしに何かを言う人は居ません。継母と義妹だけはわたくしがやったと騒いでいる様ですが、それを認める人はいません。それだけ“一つの魔力しか持っていない”ということは蔑みの対象なのです。
ですがそのお陰で今はのんびりできるのですから、物は考えようですね。
わたくしは学園で初めて、気を張ることなくゆったりとした生活を送ることができています。
元々友人も一人も居ないので誰に気兼ねする事もありません。
いつもの昼休み。
わたくしは人気のない場所を選んで一人でゆっくりベンチで休んでいました。
そんなわたくしに珍しく近づいてくる人が居ます。
しっかりと私を見て歩いてくる男性に、わたくしもさすがに知らないふりをする訳にもいかず、相手の目を見てベンチから立ち上がりました。
そんなわたくしに近づいてきた方は片手を上げて微笑みました。
「やぁ、休んでいるところにゴメンね」
「いえ、お気になさらずに……」
「パーシバル侯爵令嬢と少し話がしたかったんだ」
「なんでしょうか、リットン侯爵令息」
話しかけてきたリットン侯爵家の次男ダリス・リットンはわたくしの同級生です。挨拶や社交辞令で言葉を交わしたことはありますが、こうやって二人だけで面と向かって話をするのは初めてでした。
……なんとなく、彼が言いそうな事が分かります。
彼は、王宮魔法士団の団長の息子なのです。そして彼自身もとても強い魔力と優れた魔法操作能力を持った、将来を有望視されている人でもあります。そんな人がわたくしに声を掛けてきたのです……その理由なんて一つしかありません。
わたくしは緊張してきた事がバレないように平静を取り繕いました。
そんなわたくしの目をじっと見つめてリットン侯爵令息は口を開きます。
「パーシバル侯爵令嬢。
君、魔法、使ったよね?」
優しい笑みを浮かべながら彼は直球で聞いてきました。
そんな彼の言葉にわたくしは戸惑いの表情を浮かべます。
いつかは誰かにこんな風に指摘されるだろう事は予想していました。だからわたくしはその為に用意していた態度と言葉で、できるだけ不審に思われないように意識しながら、相手と向き合います。
「……え、な、んの事ですか?」
「魔法だよ、魔法。
僕、そういうの分かるんだよね。誰が魔力を使ってるか。
君、何度か魔法、飛ばしてるよね?」
「そ、そんな事は」
「僕に誤魔化しは利かないよ。分かるんだから」
「あ……」
「君の事は知ってる。水の魔力しか持ってないんでしょ? だから皆から“無能”って呼ばれてる事も。
でもさ、水の魔力を持ってるって事はさ、“水魔法は使える”って事でしょ?
僕はさ、水魔法が使えれば無能だとは思わないんだよね。むしろ水の魔力しか持って無いって事はさ、
“他の人より凄い水魔法が使える”
って事だよね」
「え?」
わたくしはリットン侯爵令息から出た予想もしていなかった言葉に驚きました。
水魔法しか使えないと蔑まれてきた人生で初めて“わたくしを認める”ような発言をされたからです。
驚いた顔をしたわたくしにリットン侯爵令息は我が意を得たりとばかりにニッコリと笑いました。
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カッシム様が体調不良により学園を休学される事になりました。
わたくしも婚約者としてカッシム様のお見舞いに伺おうと思ったのですがお断りされてしまいましたわ。
お兄様、継母、義妹、婚約者とその浮気相手……と、わたくしに関わった方々が連続して体調に不調をきたした事で、さすがに周りも異変を感じ始めた様です。
ですがわたくしの事を生まれてからずっと『無能』だと蔑んできたので今更わたくしが『他者の体に干渉できるほどの魔法が使える』などと認めたくないのでしょう。誰も目に見えてわたくしに何かを言う人は居ません。継母と義妹だけはわたくしがやったと騒いでいる様ですが、それを認める人はいません。それだけ“一つの魔力しか持っていない”ということは蔑みの対象なのです。
ですがそのお陰で今はのんびりできるのですから、物は考えようですね。
わたくしは学園で初めて、気を張ることなくゆったりとした生活を送ることができています。
元々友人も一人も居ないので誰に気兼ねする事もありません。
いつもの昼休み。
わたくしは人気のない場所を選んで一人でゆっくりベンチで休んでいました。
そんなわたくしに珍しく近づいてくる人が居ます。
しっかりと私を見て歩いてくる男性に、わたくしもさすがに知らないふりをする訳にもいかず、相手の目を見てベンチから立ち上がりました。
そんなわたくしに近づいてきた方は片手を上げて微笑みました。
「やぁ、休んでいるところにゴメンね」
「いえ、お気になさらずに……」
「パーシバル侯爵令嬢と少し話がしたかったんだ」
「なんでしょうか、リットン侯爵令息」
話しかけてきたリットン侯爵家の次男ダリス・リットンはわたくしの同級生です。挨拶や社交辞令で言葉を交わしたことはありますが、こうやって二人だけで面と向かって話をするのは初めてでした。
……なんとなく、彼が言いそうな事が分かります。
彼は、王宮魔法士団の団長の息子なのです。そして彼自身もとても強い魔力と優れた魔法操作能力を持った、将来を有望視されている人でもあります。そんな人がわたくしに声を掛けてきたのです……その理由なんて一つしかありません。
わたくしは緊張してきた事がバレないように平静を取り繕いました。
そんなわたくしの目をじっと見つめてリットン侯爵令息は口を開きます。
「パーシバル侯爵令嬢。
君、魔法、使ったよね?」
優しい笑みを浮かべながら彼は直球で聞いてきました。
そんな彼の言葉にわたくしは戸惑いの表情を浮かべます。
いつかは誰かにこんな風に指摘されるだろう事は予想していました。だからわたくしはその為に用意していた態度と言葉で、できるだけ不審に思われないように意識しながら、相手と向き合います。
「……え、な、んの事ですか?」
「魔法だよ、魔法。
僕、そういうの分かるんだよね。誰が魔力を使ってるか。
君、何度か魔法、飛ばしてるよね?」
「そ、そんな事は」
「僕に誤魔化しは利かないよ。分かるんだから」
「あ……」
「君の事は知ってる。水の魔力しか持ってないんでしょ? だから皆から“無能”って呼ばれてる事も。
でもさ、水の魔力を持ってるって事はさ、“水魔法は使える”って事でしょ?
僕はさ、水魔法が使えれば無能だとは思わないんだよね。むしろ水の魔力しか持って無いって事はさ、
“他の人より凄い水魔法が使える”
って事だよね」
「え?」
わたくしはリットン侯爵令息から出た予想もしていなかった言葉に驚きました。
水魔法しか使えないと蔑まれてきた人生で初めて“わたくしを認める”ような発言をされたからです。
驚いた顔をしたわたくしにリットン侯爵令息は我が意を得たりとばかりにニッコリと笑いました。
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