5 / 14
──5──
しおりを挟むヒロインが聖女ならば、悪役令嬢はラスボス。
回復守護特化の聖女を脅かす攻撃特化の悪魔法を使うのがラスボスになった悪役令嬢リゼリーラだったけれど、悪魔法に手を出さずともリゼリーラは魔力が桁違いに高く魔法操作も子供の頃から上手い魔法特化型のキャラだった。
だからわたくしも小さい頃から自分の魔法能力を磨き続けてきた。
戦う為じゃなくて単純に生活に活用したいからだったけれど。そのお陰で今じゃ無詠唱で物を動かせる。サイコキネシスみたいな魔法の使い方が出来るけどその事は誰にも話していない。
何故なら『無詠唱』自体がこの世界でも異端だから。無詠唱が使えると分かった時点でその人は『賢者』と呼ばれて国の重要人物扱いとなる。何かあったら前線に駆り出されると分かってるそんな人に誰が成りたいと思うのよ。今でもわたくしは第一王子の婚約者という超面倒くさい生活をさせられているのに、そこに賢者の称号なんて貰ったら軟禁監禁が目に見えてるわ。だからわたくしが無詠唱使いなのは墓場まで持っていく秘密。
そんな力でわたくしはヒロインと戦うの。
と、言ってもわたくしも鬼じゃない。
ヒロインを暗殺しちゃえば終わるけど、同じ転生者のよしみとしてそんな酷い事しないで彼女と戦おうと思う。
だけど丁度良い感じの攻め方が分からない……。
それにわたくし自身も暇じゃない。
授業が終われば毎日王城まで行ってそこから王子妃教育を夜遅くまで受ける。授業の合間の休み時間やお昼休みでは友人たちとも関係を築き続け、将来の為の社交をしなければいけない。
その中で『一人になる時間を確保してただ一人の為に自分の力を行使する』なんて……そんなのやってられないわよ……。自分の疲労回復を後回しにしてヒロインに構うとか、どれだけヒロインの事好きなんだってなるわよ……。自分が大切なわたくしには絶対に無理だわ……。
そう考えるとゲームの中のリゼリーラはバイタリティがあって、やると決めた事は絶対に諦めたりしないんだから本当に凄いと思うわ。悪役令嬢ってそういうところあるわよね……。ゲームの中のリゼリーラも毎日ぎゅうぎゅうに詰まったスケジュールの中でヒロインへのイジメにも手を抜かなかったんだからどれだけハイスペックなのよ……。
わたくしには無理……1時間ぐらい何も考えずにボ~~ッとする時間が無いと……。
そんなこんなで考えた末に思いついたのが『彼女が望むのならばむしろ彼女の望み通りにしちゃいましょ!作戦』である。
わたくしは一人になった自室でベッドの上に横になり目を閉じて念じる。
『ヒロインさんが望む通り、歩いていたら何かに足を掛けられて転び、何かに背中を押され、持ち物を壊され、耳元で陰口を言われ、軽蔑の眼差しでどこかから見られ、何か小さな怖い目に遭い続けますように~~~』
侍女が部屋に入ってきてもわたくしをただ寝ていると思うだろう姿勢でわたくしはヒロインに向かって魔法を飛ばし続けた。
まぁ一種の呪いみたいなものね。
『呪い』ではないから聖女の力で祓ったり出来ないけれど、ずっと彼女にまとわりつく魔法。わたくしの想像通り、彼女の周りに人がいない時だけに発動する小さな魔法。
さぁ、ヒロインさん♪
これで明日から自演しなくてすみますよ♪(^v^)
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
468
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる