イレブン

九十九光

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♯17ー1

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 とてつもなく濃密な一日の翌日である、八月四日の午前七時半。この日私は梅の館から、さらに南西に車を走らせていた。

 小林先生のスパルタぶりを改めて感じる。学校祭をつぶす会に参加したいですと言ったのが昨日で、その次の日から来いと言うのだ。あの人が女子生徒たちから恐怖の対象になっている理由がよく分かる話だ。

 そんなことを考えていたわけではないが、すれ違う車も少ない道を愛車で進むこと約十分。私は知多市立佐布里小学校の正門に入り、そこからすぐの来客用の駐車場に車を停めた。

 ここは東中とはまったく違う地域を学区に定めている小学校であり、知多市の東西の境目あたりに存在する学校だ。私が走ってきた梅の館方面の家々は、太陽光パネルつきの新しい家数軒の中に、懐かしき昭和の時代に建てましたと言わんばかりに苔むしたブロック塀の家が数十軒と存在する、竹藪と農地の入り乱れた場所だ。一方、そこからさらに南西に進むと、二階建ての真新しい雰囲気の家々が何十軒と隙間なく並んだ住宅地に入り、市の各施設や岡田地区で働く人たちが多く住んでいる(と勝手に予想する)。

 そんな立地に存在する小学校に私がやってくると、「おはようございますー」と言いながら一人の男性が近づいてきた。スキンヘッドのたれ目の男性で、タレントの竹中直人に似た雰囲気を持つ人だ。正直全国どこにでもいそうな見た目の人ではある。

「えっと……。佐布里小学校の校長先生でいらっしゃいますか」

「はい。樋口明美先生でいらっしゃいますね。山田先生からお話は伺っておりますー」

 佐布里小の校長は深々と頭を下げ、東中の三年生の学年主任の名前を口にした。

 東中の学校祭をつぶす会は、この佐布里小学校の敷地を借りてその準備を進めていた。自転車を使うなりどこかで生徒を拾って車で向かうなりすればすぐに行ける場所にあり、なおかつ東中の関係者とすれ違う可能性も低い。それがこの小学校が選ばれた理由だった。そんな立地の話もあるだろうが、それ以上に大きかったのは、山田先生の人脈だった。

「しかし、素晴らしいことを考えて実行する人ですよ、山田先生は。同じ大学の後輩とは思
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