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56:森の開拓

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 あの会議から一月が経過した。
 今はエルン村の拡張工事の真最中だ、元々この集落の人口は100人弱、程で、現在の400人程の人口には狭すぎる。別の集落に分散する案も出たらしいが、大人の人数が圧倒的に少ないため、何かあった場合対処できない場合が出てくるので、この村を大きくする方針に皆で決めた様だ。ソラも其に賛成して、村の発展に協力すると決めた。具体的には、力仕事や技術力の向上だ。力仕事は、ステータスにものを言わせて(加減はしている)大木をぶった切ったり、運搬が主である。技術力の向上は、実際にはソラにそんな知識など無いと思っているのだが。メルさんに掛かれば、ソラの記憶の中から、およそ三十年間見聞きした役に立ちそうな情報を、其のチートシステムでネット動画やTV など何気無く観た、たまにやってる日本の職人技特集とか学校の授業など、本人は忘れているし、思い出す事など無理だが、そんなこと観た記憶すら覚えていないがしかし、確実に記憶の片隅で埋もれている〔忘れているが消えてはいないらしい〕記憶を…アイテム創造を使って書籍として創り出した。書籍と言っても一般人向けの知識なので、設計図や、企業秘密の工程や専門の特殊な道具は無いので、あくまでもこう言うやり方も有りますよ?参考にしてみては?
と、言う程度であるが、皆に渡してみた。すると、字の読める者が、これは素晴らしいと、他の者達に読み聞かしたり、挿し絵を見せて皆に教え始めた。元々ここの住人は、森の民なので、日本の木材加工技術は、良い刺激になったらしく、以外にも老人達がやる気を見せている。老人と、言っても40後半~50代なので、元気な人は、結構いる…其が、怪我が治った兵士や若者を引き連れて土木作業に精を出している。
 
 因に何故、寿命が低いのかと言うと、他にも要因は有るが大体は食料事情が悪いことと、医療が原因だ。今はソラが食料を無尽蔵な位持っているので、ある程度は、改善されるだろう。
 今やっているのは、住居の造築と、集落の拡張だ、住居は、首都の様に地面に建てるタイプが主だ。
 変わった物と言えば「学校を建てる」と、言う計画がある。これはソラの提案で、子供が多く一ヶ所に纏めた方が、世話をしやすいし、彼等の殆どが親を亡くした者が大半だ、そこで寮の様な建物を造って集団生活を送って貰い、ついでに教育も受けさせたらどうか?と、提案したのだ。取り敢えずは、寮だけ建てて、校舎の敷地だけ確保する事になった…まだ、教師となる者が居ないし、他に優先させる事が有るから、住居を先に建てる事にした…。

 因みに、これ等の建物などは全て住人やソラ達の手作業で、ソラのチートは使用していない。能力を使えば、あっという間に出来上がるが…彼等は配下では無いので、ソラの秘密が他所に漏れる可能性があるのも理由だが。これから先を見据えると、これ等は良い経験となると、ソラは考えたのだ。
 
 自分達で考え試行錯誤して、造り上げたモノは、知識となり文化となる、これからの発展には必要なモノだ…ソラは、女神様の願いをこの村から実現させていくと決めたのだ。そして、自分は其を影からちょっとだけ支えていこうと…まぁ…ソラ達の寿命は、ほぼ無いので時間が掛かっても問題ないし、別にそこまで発展しなくても、その時はその時で考えれば良いと考えていたのである。

(今すっごく充実してるな…大分建物も完成したし、後は、任せても大丈夫だろう、あのじいさん達、今じゃ熟練の大工みたいに大活躍してるし…何か年相応に若返った気がする…最初は、ガリガリでヨボヨボだったのに…しかし、そろそろ向こうの王都に戻るか…。いや、その前に食料を何とかしないと、ずっと俺が提供するのは不味いだろ…村が完成したら皆、働かなくなってしまう…後は……やはり武器とかだなッ!彼等にもちゃんとした物を持たせて、今の自分達の人数でも賄える実力を付けさせないと…)

 ソラは、モモの所にやって来た。

「モモさん、話があるのですが?」

「ん?ソラ殿じゃないか!話ってなんだ?」

「実は、これなんだが…」

 と、言ってソラは何時もの武器と防具などの装備品を取り出した。

「これは?」

「はい!以前、俺が仕入れた武器たちです!かなり良いものですので、是非これから新設される部隊に、使って頂こうかと思いまして。」

「スゴいなこれは、以前私達が使っていた正規の部隊装備より、優れた物だな…しかし良いのか?そんなに、払える金は無いぞ?」

「あッ!寄付しますよ!どうぞ使ってください。」

「きふ?それってまさか!本気か?」

「えぇ……差し上げます。新設されるのは、若い者達を集めた魔物討伐部隊と、聞きました。彼らには、折角助かった命だから長生きして立派に成長して欲しいですからね!」

「感謝する、ソラ殿」

 モモは深々と頭を下げて、御礼を言ってきた。ソラは、其を手で制止させ、新たに武器を取り出し。最後に、腕時計の様な腕飾りをモモに手渡した。

「後、こっちは自警団用です!」

「まだ有るのかッ!」

「ややさっきより劣りますが、使ってください!後、これは、通信用の魔道具です。何かあった時や、早く報せたい情報がある時は、これを使って下さい。人数分、用意しますので、数が決まったら教えてください。」

「ソラ殿、やはり貴方が長になってはくれないのか?」

「其は、散々話したでしょ?俺は、表舞台に立つ気は有りませんよ、其に自由に動ける方が助けになり安いんですよ!」

「すまん…皆の為……なんだなよな…」

「この集落で俺の力に気付いたのは、貴女とケルテトさん、後は、ティティだけです、勿論ここまで知っているのは貴女だけですので、呉々も内密にお願いしますよ?」

「分かっているよ!もしもバレたら、他の国々まで、君の居るこの地を狙って攻めて来ないとも限らないからな。」

「ありがとうございます。」

「何を言う、こちらこそ感謝してもしたり無い位だ。大事に使わせて貰うよ!」

「はい!ではまたッ!」

「あぁ!またなッ!」

 ソラは、モモの所を離れると、自宅の自室に戻ってきた。

(メル!王都の様子はどうだ?)

〔はいマスター、いたって平穏ですね。今のところ獣人の国に、ついてはそれほど重要視されていないようで、全て滅んだと信じている用です。帝国の動きも、今は無いようです。〕

(そうか…例の貴族はどうなった?)

〔どうやら諦めた用ですね、既に国外で活動していると考えたようです。しかし、別の者達の動きが、気になります。〕

(別の者達?…別の貴族や王族達か?)

〔いいえ、商人達です。〕

(何だってッ!マジか……怖いよ~闇商人とか貴族よりたちが悪いって言うじゃないかッ!どうしてこうなった?暗殺とかされちゃうの俺?)

〔マスター落ち着いて下さい。〕

(落ち着いて要られるかっての!ヤバイよヤバイよヤバイよ…)

〔マスターッ!しっかりして下さい…何があっても私達が付いていますッ!ご安心下さい。〕

(そうだったな、すまん!それで、商人ってどこの誰なんだ?)

〔其がですね…〕





 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。次回も暇潰ししていって下さい。宜しくお願いします。
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