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第4章 洞窟都市グロッタ

#30 黄金都市の秘密①

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 どうやって部屋に帰ったのか、まったく記憶になかった。

 目覚めると、ルビイは手足のない状態でベッドにうつぶせており、肩までシーツをかけられていた。

 部屋の隅ではすでに起きたサトが着替えをしているところだった。

 豊満なボディをボンテージ風のボディスーツに包み、椅子に腰かけて網タイツを穿いている。

「お目覚めですか。ルビイさま」
 
 網タイツをガーターベルトで留めながら、何食わぬ顔でサトが言った。

「今朝は冷えます。ご注意を」

「ええ、ありがとう」

 ずり上がるようにして動き、背中をヘッドボードにつける。

 何も言わないうちに、ボンテージスーツの上にメイド服を着終えたサトが、義手と義足を持って歩いてきた。

「昨夜のうちに、外して乾かしておきました。濡れたままでは、神経コネクトに支障が出るということなので」

「昨夜はちょっと、興奮しすぎたみたい」

 サトに義手を装着してもらいながら、ルビイは顔を赤らめた。

「新しい相手というのは、燃えるものね。でもまさか、エリスがあそこまで乱れるなんて、思ってもみなかった」

「結果的には、大成功だったと思います。エリスさまの魔力も十分にチャージできましたし、それになにより、あの方のお心はすでにルビイさまのもの。何があっても裏切ることはないでしょう」

「サトったら、本当に策士。そうやって、忠誠を誓う部下を増やしていこうと?」

「人間の心は移ろいやすいものでございます。それを確実につなぎ留めておくには、麻薬のような快楽に頼るしかありません。マリウスさましかり、エリスさましかり」

「でも、他のメンバーは無理そうね。双子はまだ子どもだし、マグナはちょっと…」

「部隊の要はエリスさまです。後の3人は、いつでも替えがきく。ですから、そこまでされる必要もないかと」

 サトの言葉に、エリスは一瞬、背筋に氷柱を当てられたような悪寒を覚えた。

 確かに、理屈を言えば、サトの言う通りだろう。

 エリスのような強大な魔力を持った魔導士は、貴重な存在である。

 それに比べて、戦士や格闘家は、大陸中を探せば掃いて捨てるほど存在する。

 いったん、悪役令嬢として生まれかわることを決意したからには、ルビイにもそのくらいの覚悟は必要なのだ。

 が、どうにもそこまで割り切れない自分がいるのも、また否定し難い事実だった。

 知り合ってまだ日は浅いが、マグナも双子もここまでともに戦ってきた仲間なのである。

 そんなに簡単に切り捨てることなど、できるはずがない。

「そんなに深刻お顔をなさらないでください」

 ルビイの義足を嵌め終えて、サトが口角をわずかに吊り上げた。

「例えばの話です。双子やマグナがルビイさまを裏切る日が来るなどと、サトも真剣に考えているわけではありません」
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