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17:調べ物と新たな出会い
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セガールと恋人(フリ)になって一週間程経った。恋人のフリをするからといって、特に変化もなく、日々を過ごしている。
今日はカールとシェリーは休日で、セガールは仕事である。冷たい風が吹いている中、カールはシェリーと一緒に、街を目指して走っていた。
「ねぇねぇ。カール」
「んー?」
「パパとカール、前と変わらなくない?」
「付き合い始めて一週間位だしなぁ。シェリーさんや」
「なによ」
「恋人が長続きするのに大事な事ってなんだと思う?」
「えー?愛とかなんかそんなの」
「その愛を育む為に必要な事があるんだな」
「なにそれ」
「まずは、いっぱいお喋りして、お互いの事を知り合うんだよ。手を繋ぐとか、ハグをするとか、そういうスキンシップも大事だけど、まずはお互いにいっぱい色んな話をして、相手の事を知ることが大事なのだよ」
「そんなもん?」
「そ。少なくとも、俺の持論ではそうだね」
「それで長続きするの?」
「はっはっは。まぁね。もっとも、俺の場合は仕事の関係でフラレてばっかだったけど。ほら。俺って下手すると1年位帰らないからさ。相手が待ちきれなくて自然解消……みたいな?」
「わぉ。海軍の船乗りも大変なのね」
「まぁねー。でも好きで船に乗ってるからね。仕方がない部分はあるかな」
「ふーん。じゃあ、今はパパとお喋りして知り合ってる段階なの?」
「そ。シェリーが寝た後に一緒に酒を飲みながらお喋りしたりしてるよ。毎日じゃないけどね。仕事があるし」
「そうだったの」
「ほら。俺もアンナ先生もシェリーの友達だけど、お喋りの内容とか、一緒にやることとか違うだろ?恋人も一緒で、それぞれに合った付き合い方ってのがあるのよ」
「なるほど。確かに言われてみれば、アンナちゃんとカールじゃ、お喋りの中身もやることも違うわ。恋人も人それぞれってこと?」
「そういうこと。俺達には俺達のペースがあるのよー」
「ふーん。そういうものなのね」
「うん。さ、街に到着。図書館が先がいい?中央広場が先がいい?」
「図書館が先がいいわ。どうせ本を借りて帰るから、鞄の重さは変わらないもの」
「それもそうだ。追っかけてるシリーズの新刊出てるといいなぁ」
「あ、今日は調べ物の本も借りなきゃいけないの」
「調べ物?」
「マルク先生からの宿題。ダリダナ国の歴史で、特に興味を持った事を詳しく調べてレポートにするの」
「へぇ!そんな事もやるんだ。面白そうだなぁ」
「うん。こういう宿題は初めてだから、ワクワクしちゃうわ」
「いいね。どんなことを調べる?資料になる本を探すの手伝うよ」
「ありがと。今のところは、3代前の国王陛下が行った孤児院増設の事を調べるつもり」
「あー。あったな。そういえば。教科書に載ってた記憶があるわ」
「とりあえず歴史書のコーナーに行けばいいのかしら」
「んーー。あっ!先に司書の人に聞いてみよう。もしかしたら、いい本知ってるかも」
「あっ。そっか。毎日本の管理をしてるから詳しい筈よね」
「あとさ、教科書の後ろの方に、参考文献とか載ってない?」
「……確かあった気がする?」
「その本を探してみるのもありかも」
「なるほど。歴史の教科書は一応持ってきてるわ」
「流石。じゃあ、まずは調べ物の資料探しからやるか」
「うん。……ふふっ。なんだか宝探しみたい」
「ははっ。いいね。分かりやすくて詳しい資料という名の宝探しだ。本は山程あるから、その中からお宝を見つけ出そうぜ」
「うん!」
カールはシェリーと顔を見合わせて、ニッと笑ってから、図書館の中へと入った。
先に歴史の教科書の後ろの方に記載されている参考文献をざっと見て、シェリーが調べたい事が載っていそうな本を探す。1冊、それらしいものがあったので、まずはその本を探してみることにした。
カールは歴史には然程興味が無かったので、あまり詳しくはない。
2人で歴史書コーナーに行き、沢山並んでいる歴史書の中から、なんとか教科書に記載されていた本を見つけ出した。しかし、目次からお目当ての頁へ飛んで読んでみて、カールとシェリーは同時にうーんと唸った。
「これ、教科書と内容ほぼ一緒じゃない?」
「だよな。ちょこっとしか載ってないなぁ。これだけじゃ、調べ物って感じじゃない気がする」
「そうよね。えー。司書の人に聞いた方が早いかしら」
「んー。そうするか?」
「あの」
「「ん?」」
本棚の前で2人で本を覗き込んでいると、後ろから声をかけられた。振り返れば、13~14歳くらいの眼鏡をかけた少年がいた。
「その本、借りられるんですか?」
「あーー、どうする?シェリー」
「借りても、あんまり意味なくない?」
「そうだよなぁ」
「もしかして、調べ物ですか?」
「あ、うん。この子の宿題でね」
「調べたい事はなんですか?」
「……3代前の国王陛下が行った孤児院増設についてだけど……」
「あ、それならもっといい本があるよ。ちょっと待っててください」
眼鏡の少年が、歴史書コーナー内の少し違う所へ行き、何冊か本を取って、こちらに戻ってきた。
「はい。これが詳しいよ。初等学校に通ってる子だよね?中等学校じゃ見たことないし。少し難しい表現のところもあるから、分からなかったら大人の人に聞いてみたらいいよ」
「え、あ、ありがとう……」
眼鏡の少年がシェリーに3冊の本を手渡した。シェリーは驚いて、目をぱちくりさせている。カールも驚いて、少年に話しかけた。
「よく知ってるね」
「少し前に、学校の課題で僕も調べたんです」
「あ、なるほど」
「そっちの本、借りないなら僕が借りてもいいですか?」
「え、あ、どうぞ……」
「ありがとう。この本、そんなに詳しい事は載ってないけど、その分色んな範囲の歴史に関する事が載ってるから、調べ物をする取っ掛かりにはちょうどいいんだ」
「「へー」」
「少年も学校の課題?」
「いえ。単なる趣味です。歴史が好きなんです」
「ほぁー。そいつはすごいな」
「いえ。すごくは無いんですけど……」
眼鏡の少年が少し困ったように眉を下げた。なんとも大人しい雰囲気だが、頭がよさそうな感じの子である。
シェリーが3冊の本を抱きしめて、おずおずと眼鏡の少年に声をかけた。
「あの、ありがとう。どうやって調べたらいいか、分かんなかったから、助かります」
「あ、いや。調べ物をする時は、こういう本の参考文献から本を探したり、司書の人に聞くのが一番早いよ」
「あ、ありがとう」
「宿題、頑張ってね」
「あ、うん」
眼鏡の少年が小さくシェリーに笑いかけ、本を片手に去っていった。カールはシェリーと顔を見合わせて、同時に眼鏡の少年が持ってきてくれた本を見下ろした。
「すごい子だったな」
「うん。中等学校に上がったら、皆あぁなるの?」
「いやぁ?多分あの子だからだと思うよ」
「ふーん。でも、本当にすごく助かったわね」
「うん。帰ったら一緒に読もうか」
「うん。お宝探しは終わったから、他に読む本を探しましょ」
「そうだな。シェリーは、今日は残り2冊だな。他にも読みたい本が見つかったら、俺が借りようか?」
「うん。お願い」
「よし。今度は楽しい本を探しに行こう」
「お宝探し再開ね」
カールはシェリーと一緒に、児童書コーナーへと向かった。
図書館を出て、中央広場に向かうと、少し遠目にさっきの眼鏡の少年が見えた。シェリーも気づいたのか、カールのコートの袖をツンツン引っ張って、眼鏡の少年の方を指差した。
「ねぇ。ちょっとだけ、あの子と話してもいい?」
「勿論。面白そうな子だもんな」
「うん。初等学校の猿とは全然違うわ」
「気になる?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、話しかけてみようか」
「うん」
カールはシェリーと一緒に、ベンチに座って本を読んでいる眼鏡の少年に近寄った。
シェリーが少し躊躇ってから、眼鏡の少年に声をかけた。
「あの」
「え?」
「あの……名前、なんていうの」
「えっと、僕?リールだけど……」
「あの、私はシェリー。10歳。貴方は何歳なの?」
「13歳だよ。君、まだ10歳だったんだ。お勧めした本は少し早かったかも……」
「多分大丈夫よ。本はいっぱい読んでるもの」
「本が好きなんだね」
「うん。あの、えっと、本とか、調べ方とか、教えてくれてありがとう。調べてレポートを書くの」
「どういたしまして。レポート、頑張ってね」
「ありがとう。……その、よく図書館に来るの?」
「休みの日はいつも図書館に入り浸ってるよ」
「そ、そう。じゃあ、また会うかもね」
「うん」
「……お勧めの本があったら、また教えてくれる?」
おずおずとしたシェリーの言葉に、リールがキョトンとした顔をした後で、ふわっと笑った。
「勿論。本好き仲間は大歓迎」
「……ありがとう。えっと、じゃあ、またね」
「うん。またね」
シェリーは少し喋って満足したのか、カールのコートの袖を引いて、その場から離れた。
クレープ屋の前まで来ると、シェリーがふぅと息を吐き出した。
「緊張した」
「あの子と友達になりたい感じ?」
「うん。歳が近い本好き仲間ってなんかいいなって。初等学校の子達とは全然違うし」
「そうだね。13歳にしては落ち着いてる感じの子だった」
「うん。……多分だけど、リールは私のこと『男女』とか馬鹿にしない気がする」
「全然しそうに見えないかな。仲良くなれるといいね」
「うん」
嬉しそうに笑うシェリーの頬は、ほんのり淡く赤く染まっていた。
これはもしかしたら早めの春がきちゃうのかもしれない。カールはそんな事を考えながら、シェリーとクレープを買い、日向にあるベンチに向かった。
これはセガールには、まだ報告しない方がいいかもしれない。暫くは大人しく見守っておくのが一番だろう。
カールはシェリーとクレープを食べながら、若いっていいなぁと思った。
今日はカールとシェリーは休日で、セガールは仕事である。冷たい風が吹いている中、カールはシェリーと一緒に、街を目指して走っていた。
「ねぇねぇ。カール」
「んー?」
「パパとカール、前と変わらなくない?」
「付き合い始めて一週間位だしなぁ。シェリーさんや」
「なによ」
「恋人が長続きするのに大事な事ってなんだと思う?」
「えー?愛とかなんかそんなの」
「その愛を育む為に必要な事があるんだな」
「なにそれ」
「まずは、いっぱいお喋りして、お互いの事を知り合うんだよ。手を繋ぐとか、ハグをするとか、そういうスキンシップも大事だけど、まずはお互いにいっぱい色んな話をして、相手の事を知ることが大事なのだよ」
「そんなもん?」
「そ。少なくとも、俺の持論ではそうだね」
「それで長続きするの?」
「はっはっは。まぁね。もっとも、俺の場合は仕事の関係でフラレてばっかだったけど。ほら。俺って下手すると1年位帰らないからさ。相手が待ちきれなくて自然解消……みたいな?」
「わぉ。海軍の船乗りも大変なのね」
「まぁねー。でも好きで船に乗ってるからね。仕方がない部分はあるかな」
「ふーん。じゃあ、今はパパとお喋りして知り合ってる段階なの?」
「そ。シェリーが寝た後に一緒に酒を飲みながらお喋りしたりしてるよ。毎日じゃないけどね。仕事があるし」
「そうだったの」
「ほら。俺もアンナ先生もシェリーの友達だけど、お喋りの内容とか、一緒にやることとか違うだろ?恋人も一緒で、それぞれに合った付き合い方ってのがあるのよ」
「なるほど。確かに言われてみれば、アンナちゃんとカールじゃ、お喋りの中身もやることも違うわ。恋人も人それぞれってこと?」
「そういうこと。俺達には俺達のペースがあるのよー」
「ふーん。そういうものなのね」
「うん。さ、街に到着。図書館が先がいい?中央広場が先がいい?」
「図書館が先がいいわ。どうせ本を借りて帰るから、鞄の重さは変わらないもの」
「それもそうだ。追っかけてるシリーズの新刊出てるといいなぁ」
「あ、今日は調べ物の本も借りなきゃいけないの」
「調べ物?」
「マルク先生からの宿題。ダリダナ国の歴史で、特に興味を持った事を詳しく調べてレポートにするの」
「へぇ!そんな事もやるんだ。面白そうだなぁ」
「うん。こういう宿題は初めてだから、ワクワクしちゃうわ」
「いいね。どんなことを調べる?資料になる本を探すの手伝うよ」
「ありがと。今のところは、3代前の国王陛下が行った孤児院増設の事を調べるつもり」
「あー。あったな。そういえば。教科書に載ってた記憶があるわ」
「とりあえず歴史書のコーナーに行けばいいのかしら」
「んーー。あっ!先に司書の人に聞いてみよう。もしかしたら、いい本知ってるかも」
「あっ。そっか。毎日本の管理をしてるから詳しい筈よね」
「あとさ、教科書の後ろの方に、参考文献とか載ってない?」
「……確かあった気がする?」
「その本を探してみるのもありかも」
「なるほど。歴史の教科書は一応持ってきてるわ」
「流石。じゃあ、まずは調べ物の資料探しからやるか」
「うん。……ふふっ。なんだか宝探しみたい」
「ははっ。いいね。分かりやすくて詳しい資料という名の宝探しだ。本は山程あるから、その中からお宝を見つけ出そうぜ」
「うん!」
カールはシェリーと顔を見合わせて、ニッと笑ってから、図書館の中へと入った。
先に歴史の教科書の後ろの方に記載されている参考文献をざっと見て、シェリーが調べたい事が載っていそうな本を探す。1冊、それらしいものがあったので、まずはその本を探してみることにした。
カールは歴史には然程興味が無かったので、あまり詳しくはない。
2人で歴史書コーナーに行き、沢山並んでいる歴史書の中から、なんとか教科書に記載されていた本を見つけ出した。しかし、目次からお目当ての頁へ飛んで読んでみて、カールとシェリーは同時にうーんと唸った。
「これ、教科書と内容ほぼ一緒じゃない?」
「だよな。ちょこっとしか載ってないなぁ。これだけじゃ、調べ物って感じじゃない気がする」
「そうよね。えー。司書の人に聞いた方が早いかしら」
「んー。そうするか?」
「あの」
「「ん?」」
本棚の前で2人で本を覗き込んでいると、後ろから声をかけられた。振り返れば、13~14歳くらいの眼鏡をかけた少年がいた。
「その本、借りられるんですか?」
「あーー、どうする?シェリー」
「借りても、あんまり意味なくない?」
「そうだよなぁ」
「もしかして、調べ物ですか?」
「あ、うん。この子の宿題でね」
「調べたい事はなんですか?」
「……3代前の国王陛下が行った孤児院増設についてだけど……」
「あ、それならもっといい本があるよ。ちょっと待っててください」
眼鏡の少年が、歴史書コーナー内の少し違う所へ行き、何冊か本を取って、こちらに戻ってきた。
「はい。これが詳しいよ。初等学校に通ってる子だよね?中等学校じゃ見たことないし。少し難しい表現のところもあるから、分からなかったら大人の人に聞いてみたらいいよ」
「え、あ、ありがとう……」
眼鏡の少年がシェリーに3冊の本を手渡した。シェリーは驚いて、目をぱちくりさせている。カールも驚いて、少年に話しかけた。
「よく知ってるね」
「少し前に、学校の課題で僕も調べたんです」
「あ、なるほど」
「そっちの本、借りないなら僕が借りてもいいですか?」
「え、あ、どうぞ……」
「ありがとう。この本、そんなに詳しい事は載ってないけど、その分色んな範囲の歴史に関する事が載ってるから、調べ物をする取っ掛かりにはちょうどいいんだ」
「「へー」」
「少年も学校の課題?」
「いえ。単なる趣味です。歴史が好きなんです」
「ほぁー。そいつはすごいな」
「いえ。すごくは無いんですけど……」
眼鏡の少年が少し困ったように眉を下げた。なんとも大人しい雰囲気だが、頭がよさそうな感じの子である。
シェリーが3冊の本を抱きしめて、おずおずと眼鏡の少年に声をかけた。
「あの、ありがとう。どうやって調べたらいいか、分かんなかったから、助かります」
「あ、いや。調べ物をする時は、こういう本の参考文献から本を探したり、司書の人に聞くのが一番早いよ」
「あ、ありがとう」
「宿題、頑張ってね」
「あ、うん」
眼鏡の少年が小さくシェリーに笑いかけ、本を片手に去っていった。カールはシェリーと顔を見合わせて、同時に眼鏡の少年が持ってきてくれた本を見下ろした。
「すごい子だったな」
「うん。中等学校に上がったら、皆あぁなるの?」
「いやぁ?多分あの子だからだと思うよ」
「ふーん。でも、本当にすごく助かったわね」
「うん。帰ったら一緒に読もうか」
「うん。お宝探しは終わったから、他に読む本を探しましょ」
「そうだな。シェリーは、今日は残り2冊だな。他にも読みたい本が見つかったら、俺が借りようか?」
「うん。お願い」
「よし。今度は楽しい本を探しに行こう」
「お宝探し再開ね」
カールはシェリーと一緒に、児童書コーナーへと向かった。
図書館を出て、中央広場に向かうと、少し遠目にさっきの眼鏡の少年が見えた。シェリーも気づいたのか、カールのコートの袖をツンツン引っ張って、眼鏡の少年の方を指差した。
「ねぇ。ちょっとだけ、あの子と話してもいい?」
「勿論。面白そうな子だもんな」
「うん。初等学校の猿とは全然違うわ」
「気になる?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、話しかけてみようか」
「うん」
カールはシェリーと一緒に、ベンチに座って本を読んでいる眼鏡の少年に近寄った。
シェリーが少し躊躇ってから、眼鏡の少年に声をかけた。
「あの」
「え?」
「あの……名前、なんていうの」
「えっと、僕?リールだけど……」
「あの、私はシェリー。10歳。貴方は何歳なの?」
「13歳だよ。君、まだ10歳だったんだ。お勧めした本は少し早かったかも……」
「多分大丈夫よ。本はいっぱい読んでるもの」
「本が好きなんだね」
「うん。あの、えっと、本とか、調べ方とか、教えてくれてありがとう。調べてレポートを書くの」
「どういたしまして。レポート、頑張ってね」
「ありがとう。……その、よく図書館に来るの?」
「休みの日はいつも図書館に入り浸ってるよ」
「そ、そう。じゃあ、また会うかもね」
「うん」
「……お勧めの本があったら、また教えてくれる?」
おずおずとしたシェリーの言葉に、リールがキョトンとした顔をした後で、ふわっと笑った。
「勿論。本好き仲間は大歓迎」
「……ありがとう。えっと、じゃあ、またね」
「うん。またね」
シェリーは少し喋って満足したのか、カールのコートの袖を引いて、その場から離れた。
クレープ屋の前まで来ると、シェリーがふぅと息を吐き出した。
「緊張した」
「あの子と友達になりたい感じ?」
「うん。歳が近い本好き仲間ってなんかいいなって。初等学校の子達とは全然違うし」
「そうだね。13歳にしては落ち着いてる感じの子だった」
「うん。……多分だけど、リールは私のこと『男女』とか馬鹿にしない気がする」
「全然しそうに見えないかな。仲良くなれるといいね」
「うん」
嬉しそうに笑うシェリーの頬は、ほんのり淡く赤く染まっていた。
これはもしかしたら早めの春がきちゃうのかもしれない。カールはそんな事を考えながら、シェリーとクレープを買い、日向にあるベンチに向かった。
これはセガールには、まだ報告しない方がいいかもしれない。暫くは大人しく見守っておくのが一番だろう。
カールはシェリーとクレープを食べながら、若いっていいなぁと思った。
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