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第3章:歯車は動き出す
89話
しおりを挟む「…龍司様。あなたはぼく達に、“自由に生きろ”と言ってくださいました…。しかし、自由を知らないぼく達はどうすることが“自由”なのか分からなかったのです。ぼく達にとってトモの所は、孤児院よりも地獄でした…。そんな地獄から救ってくれたあなたは、ぼく達にとってかけがえのない存在であり、恩人なのです。」
「そうです、龍司様!おれ達は龍司様の為になにかをしたいと、ずっと4人で話してきました…っ!ご迷惑だというのは承知で…でもっ、龍司さまの家柄や立場などを考えた時、これからあなたは、命に関わるような危険な目にも合うかもしれないと…!!そんなあなたを守り抜く事がぼく達にとってするべき事だと思ったのです!!」
両隣にいた晃と琉夏が零と同じように跪くと、地面に頭をこすりつけながら話した。
「…晃…、琉夏…。」
「龍司様、勝手な事をしてもうしわけありません…っ!でもおれたちは、あなたの為に動いていたいんですっ…!」
続けて零が頭を深く下げる。
―――こいつらはなんて馬鹿なのだろうか。
せっかく自由になったというのに、その自由をおれなんかの為に使うなんて―。
深く頭を下げた3人の少年達を順番に見ると、強張っていた表情が緩んだ気がした。
「…本当に馬鹿だな、お前らは。おれなんかの為に―――」
自分でも驚くほど優しい声が出たと思った。
そんな龍司の声に反応して3人が顔をあげれば、そこには泣きそうに歪んだ3人の表情が映る。
「――龍司様…」
――本当に、おまえらは馬鹿以外のなにものでもない…
――――――――――・・・
そのあとすぐに、龍司の身を心配していた芹名に連絡をした。
芹那は1コールもしない内に電話に出ると、心底安心したように「よかったですっ…!」と泣きながら言った。
1人だと思っていたおれには、いつの間にか仲間と呼べる大切な人達が出来ていた。
百合亜ねえさんと湊以外で、初めて大切だと思えた人間に巡り合う事が出来たと思った。
それは、今までの孤独や辛さを全て跳ねのけてくれるほど、龍司にとっては強い存在だった。
おれでも大切な仲間を作る事が出来た。
おれでも、幸せになるのを神様が許してくれたんだとそう思ったのだ。
仲間という存在がこんなにも大きいものだとは思わなかった。
――なるほど、父上がおれを学校に行かせなかった理由が分かった。
きっと父上は、俺に仲間が出来るのを恐れていたんだ。
俺に仲間が出来れば、俺の味方に付く者が必ず現れ、いずれ自分が負けてしまうのではないかと思っていたから。
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