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第一章

始まり③

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「公爵様、サラディーヌ様にどの程度の情報を与えてもよろしいものでしょうか」

「カリンメテオール様のご息女であられる。が、血縁関係の話は伏せておくように。こちらの世界のことわりを話すのは構わない。湯浴みが終わる頃には目を覚ますだろう。俺もこの部屋で待つ」

「いやいや、ハインリヒ様、ご自身がどんな惨状か気づいておられないのです?魔狼どもの返り血でどす黒くなってますよ。そんな姿を見せたら、また気絶しちゃうと思いますがね」
 エリアスが話に割り込んだ。

「…ああ。一時いっときも離れがたかったので、気が付かなかった…。エリアス着替えを取ってきてくれるか?」

「まさか一緒に風呂に入るつもりですか…時渡りした途端の醜聞になるじゃあないですか」

「湯浴みの最中に犯すつもりは無いから安心しろ。俺の手付きと噂になるのは構わんだろう」

「はいはい、分かりました。っと、あとで踊り場に転移陣を書いておきます。ハインリヒ様、どうせこの部屋にしばらく籠られるんでしょう?着替えも何着か届けるように申し付けておきますよ」
 
 どのみち寝台で抱くんでしょうから、どこでヤろうが、そんなに変わんないですよ、サラディーヌ様もお可哀そうに、と小声で言いながら、エリアスは姿を消した。

 ハインリヒが部屋に入り、風呂場に移動すると、脱衣所でメイドのアデリナが、彼女が着ていた服を片付けているところだった。摘まみ上げて顔を?と傾げている。

「あ、公爵様。サラディーヌ様の服が珍しいので、つい…」

「湯浴みを終えたら、その衣服を持って明日の朝までに、サラディーヌ様の身に着けるものを整えてくれるか。公爵家の名をいくら出しても構わない。所有の商会の利益になるように立ち回れ」

「かしこまりました」

 それ以上は彼女に構うことなく、ハインリヒが服を脱ぎ始める。常に戦場暮らしが長かったため、一人で服を着脱することには慣れていた。
 幼い頃から使用人にかしずかれているので、裸に羞恥を覚えることもない、貴族そのものの態度だった。
「異世界の品は興味深いな。最初に見た時は、余りのスカートの短さにびっくりした。そのような服装で外を歩けるとは、異世界は平和なのだな」

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