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第一章
幕間1 エリアスは考える②
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公爵家に代々伝わる、嫡男だけが読むことを許される予言書には、この年、この月、御柱が立ち、カリンメテオール様のご息女、サラディーヌ様が異世界から、この世界を救うために転移して来ると、予言が浮かび上がったそうだ。
そして、その御方こそ、時渡りの聖女として、奇跡の力が授けられていると。
「馬はあれ以上進んだら、怯えて止まってしまっていただろうからな。間に合って良かった。光の壁が発動しているのを見た。間違いなくサラディーヌ様だ…。エリアス、塔まで転移可能か?」
光の防御魔法を使えるのなら、確かにサラディーヌ様で間違いない。
光の防御魔法は、直系王族の女性だけが持つ魔法体系の一つだからだ。
「はい。今日は魔力を使ってないので可能です。塔にはまだ転移魔法陣を書いてないので、最も近いのは公爵家の教会になりますが」
公爵家の要所には、転移魔法陣を何か所か敷いてある。
一番近い場所を思い出すと、敷地内にある教会が一番近い場所だった。
歴代の公爵様が、そこで挙式を行っている。
転移したい場所の魔法陣にあらかじめ書かれてある数字を、転移する場所に書く魔法陣に入れれば転移可能だ。
三人同時転移となると、一人で書く転移魔法陣としては最大人数に近い。かなりの魔力を消費するので、今日はまだ魔力を使ってないことにほっとする。
杖を呼び出し、魔法陣を書き始めた。
魔狼の死体も血も、有能な騎士たちのおかげで跡形も無くなっている。
書きながら、置いてきた馬を連れて帰ってくれるように指示すると、公爵様がサラディーヌ様を抱えて近づいてきた。
いつものことなので、公爵様も手慣れたもので、書き終わった途端に、魔法陣の中に入って来る。
教会の魔法陣の数字と同じ数字を書き込むと、魔法陣が起動して、視界の景色が変化した―――
教会から塔までは歩いてもそれほどかからない。
「ハインリヒ様…。こんなところに監禁したら、酷いトラウマになりかねませんよ」
塔はかなりの高さで、飛び降りれば死は免れない。何代か前の公爵様が、見張り台を兼ねたこの塔を建てたと聞いている。
塔とはいえ、かなりの規模であるその建築物の最上階には、部屋が三つあり、大居室、数人が同時に入れる大きさの浴槽がついた支度部屋、召使いたちが使う控え部屋と、貴族が不自由なく過ごせるような広さは十分にある。だが、窓には逃亡防止の格子が嵌め込まれているし、踊り場には見張りが常に立っていて、ていのいい監禁部屋でしかない。
監禁部屋をしつらえたという自覚があるのか、苦い表情になって、ハインリヒ様が、俺の言葉に応える。
「…仕方がないだろう。最初から隣室に置きたいが、王族に知られたら奪われるのは目に見えている。彼女がこの世界に融和するまでの間、誰の目にも触れさせず、俺のもので貫いて、膣に子種を注いで染めるつもりだ。決して離さなくて済むように万全の策を取る。子が出来るまで閉じ込めておきたいくらいだが」
あー!もう!異世界からやってきて、こっちの世界のことなど何も知らない女性を、いきなり監禁してやることはそれですか!?
「…嫌われても知りませんからね。一から手順を踏んで、出会いから始めたほうが後悔が無くていいと思いますよ」
「勝ち戦で女を手に入れるのと変わらないだろう?戦闘の興奮状態で襲い掛かる、そういう女たちとは違って、征服した後は正妻にするんだ。何の問題がある」
こりゃ駄目だ。戦場暮らしが長すぎた弊害か、常識が明らかに平時のものじゃない。
今は帝国と一触即発とはいえ、休戦中だというのに。
「問題があるのは、戦争バカな貴方のその考え方ですよ。貴方自身がそういう行為をしたことが無くてもね。…まあ、拗れに拗れてますから、何を言っても説得できるとは思えませんけどね」
そして、その御方こそ、時渡りの聖女として、奇跡の力が授けられていると。
「馬はあれ以上進んだら、怯えて止まってしまっていただろうからな。間に合って良かった。光の壁が発動しているのを見た。間違いなくサラディーヌ様だ…。エリアス、塔まで転移可能か?」
光の防御魔法を使えるのなら、確かにサラディーヌ様で間違いない。
光の防御魔法は、直系王族の女性だけが持つ魔法体系の一つだからだ。
「はい。今日は魔力を使ってないので可能です。塔にはまだ転移魔法陣を書いてないので、最も近いのは公爵家の教会になりますが」
公爵家の要所には、転移魔法陣を何か所か敷いてある。
一番近い場所を思い出すと、敷地内にある教会が一番近い場所だった。
歴代の公爵様が、そこで挙式を行っている。
転移したい場所の魔法陣にあらかじめ書かれてある数字を、転移する場所に書く魔法陣に入れれば転移可能だ。
三人同時転移となると、一人で書く転移魔法陣としては最大人数に近い。かなりの魔力を消費するので、今日はまだ魔力を使ってないことにほっとする。
杖を呼び出し、魔法陣を書き始めた。
魔狼の死体も血も、有能な騎士たちのおかげで跡形も無くなっている。
書きながら、置いてきた馬を連れて帰ってくれるように指示すると、公爵様がサラディーヌ様を抱えて近づいてきた。
いつものことなので、公爵様も手慣れたもので、書き終わった途端に、魔法陣の中に入って来る。
教会の魔法陣の数字と同じ数字を書き込むと、魔法陣が起動して、視界の景色が変化した―――
教会から塔までは歩いてもそれほどかからない。
「ハインリヒ様…。こんなところに監禁したら、酷いトラウマになりかねませんよ」
塔はかなりの高さで、飛び降りれば死は免れない。何代か前の公爵様が、見張り台を兼ねたこの塔を建てたと聞いている。
塔とはいえ、かなりの規模であるその建築物の最上階には、部屋が三つあり、大居室、数人が同時に入れる大きさの浴槽がついた支度部屋、召使いたちが使う控え部屋と、貴族が不自由なく過ごせるような広さは十分にある。だが、窓には逃亡防止の格子が嵌め込まれているし、踊り場には見張りが常に立っていて、ていのいい監禁部屋でしかない。
監禁部屋をしつらえたという自覚があるのか、苦い表情になって、ハインリヒ様が、俺の言葉に応える。
「…仕方がないだろう。最初から隣室に置きたいが、王族に知られたら奪われるのは目に見えている。彼女がこの世界に融和するまでの間、誰の目にも触れさせず、俺のもので貫いて、膣に子種を注いで染めるつもりだ。決して離さなくて済むように万全の策を取る。子が出来るまで閉じ込めておきたいくらいだが」
あー!もう!異世界からやってきて、こっちの世界のことなど何も知らない女性を、いきなり監禁してやることはそれですか!?
「…嫌われても知りませんからね。一から手順を踏んで、出会いから始めたほうが後悔が無くていいと思いますよ」
「勝ち戦で女を手に入れるのと変わらないだろう?戦闘の興奮状態で襲い掛かる、そういう女たちとは違って、征服した後は正妻にするんだ。何の問題がある」
こりゃ駄目だ。戦場暮らしが長すぎた弊害か、常識が明らかに平時のものじゃない。
今は帝国と一触即発とはいえ、休戦中だというのに。
「問題があるのは、戦争バカな貴方のその考え方ですよ。貴方自身がそういう行為をしたことが無くてもね。…まあ、拗れに拗れてますから、何を言っても説得できるとは思えませんけどね」
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