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第一章

朝からそれは②

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そのことをまだ知らない今の私は、ハインリヒ様がお母さんにどんな感情を抱いていたかなんてこれっぽっちも知らず、ただ名前のことを考えていた。
 カリンメテオールとサラディーヌ、花林と沙羅…。偶然という可能性はあるんだろうか。
 この共通点を考えたら、やっぱり私はサラディーヌなんだろうか…。

 と、いきなり唇に何かを当てられた。むぐっ?
「…俺といるときは、他の者のことなど考えないで欲しいが…」
 
 強引に唇に捻じ込まれた何かは、一粒のぶどうだった。…んっ。

「おいし…」

 もうちょっと食べたいなと思った瞬間、唇を塞がれた。
 しまった!完全にハインリヒ様のこと忘れて考え事してた!
 侍女がいるのになんてことするの!と思ったけど、近くには見当たらなかった。いつの間に二人きりになってたのかも分からなかった…っ。


 舌が口内を味わいながら、私の舌を舐ってくる。舌同士が絡み合って、まるで昨夜の私たちの身体みたいだ―――
 そんなことを考えただけで、下半身がじゅぷっと反応してしまう。
 
「もう空腹では無くなったか…?…次は俺の空腹を満たしたいんだが……」
 ねっとりと耳元で囁かれ、ぞわぞわっと毛が逆立った。
 ハインリヒ様の言う空腹がどういうものなのか、理解した瞬間に抱き上げられてしまう。ナイトガウンのレースがひらりと舞った。
 
「貴女が空腹を満たすまでずっと辛抱していたから、俺のものはもう限界だ……」

 そう言って、大股で歩き出す。それが性急な行動に思えて思わずぶるっと震えてしまった。
 私が空腹だったから我慢してくれてたというのはちょっとびっくりしたけど、こんな朝っぱらから第二ラウンドとか聞いてない。

 あっというまにベッドにたどり着いてしまう。

 そりゃそうですよね。だって同じ部屋なんだもん。数歩しか離れてないじゃん。てか、この部屋コンパクトにまとまってるけど、いったい何に使ってる部屋なの?
 
 ベッドは既にベッドメイキングされていて、昨日の激しさの痕跡は全くなかった。

 いつの間に!?と思ったけど、優しくベッドに下ろされて、頬を指でなぞられる。私の顔を見下ろす青い瞳には、はっきりと欲情が浮かんでいた。
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