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第一章
戦争好きな国①
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「問題はそれだけでは無いんです。世界各地に大発生している瘴気の消滅作業を、カリンメテオール様が聖女の義務を果たさずに、放置して逃げたと無責任の烙印を押し、未婚で妊娠したふしだらな女だと、王族自らが公布したのです。カリンメテオール様はシュヴァルツを名乗ることを禁止され、御名前のゴルトも返上させられました」
「何それ……酷い」
確かに王家の姫が未婚で身ごもったというのは醜聞かも知れないけれど……身内なのに。
ハインリヒ様が頷いて、私の頬を指で撫でてくる。多分、話を聞いていた私が顔面蒼白だったからだろう。
そっと撫でられるのが気持ち良いので、されるがままだ。何だか安らげるし。
「アルトゥール様が公布なさったのだろう。弟の、姉に対する執着は常軌を逸していたそうだから。自分の種でない子を身ごもられたカリンメテオール様の胎を蹴って、流してしまいたかったに違いない。そのせいで、カリンメテオール様を異世界にお逃がしするしか無かったのだ」
「異世界に自在に移動出来る魔法みたいなのがあるんですか?移動出来るのが分かっていて、カリンメテオール様をお逃がししたという口ぶりですよね?」
「異世界が存在しているなど、この時まで誰も知らなかったはずだ。異世界にお逃がしするという案を持ち込んだのは、異世界の存在を信じるカリンメテオール様自ら連れてこられた、ノウグスティアという魔術師だった。
協力者たちは、皆半信半疑だったそうだが、結果的に成功し、ノウグスティアも一緒に異世界に渡ったとみられている。おそらく、異世界で貴女が会ったという代理人というのが、ノウグスティアだったのでは無いだろうか」
確かに、代理人は日本人じゃなかった。それとしゃべり方に違和感があった。写真とかあれば、すぐに本人か分かるのにな、と思うけど、ないものをねだってもしょうがない。
「そのノウグスティアという人の身内とか、仲間みたいな人は、こちらの世界に残っていないんですか?」
「彼は身分が分からないよう、慎重に接触してきたそうだ。当時は、アルトゥール様の報復を恐れて、表立った行動を取れなかった者も多い。名は偽名だろう。魔術師は全員魔術協会への登録が必要だが、ノウグスティアという名の者は、数百年前に一度登録されただけだったからだ」
エアリスが補足するように後を継ぐ。魔術師の知識は彼が専門なのかな。
「時を極めしノウグスティア……という二つ名で呼ばれた、希代の魔術師ですよ。
比類なき魔力量を有し、彼の最期は、魔力が暴発してその地域一帯が消失し、草一本残らなかった、と伝えられています。
その後魔術師にとってノウグスティアという名は忌み名となり、以降魔力を持つ者にその名を付けた者はおりません」
「何それ……酷い」
確かに王家の姫が未婚で身ごもったというのは醜聞かも知れないけれど……身内なのに。
ハインリヒ様が頷いて、私の頬を指で撫でてくる。多分、話を聞いていた私が顔面蒼白だったからだろう。
そっと撫でられるのが気持ち良いので、されるがままだ。何だか安らげるし。
「アルトゥール様が公布なさったのだろう。弟の、姉に対する執着は常軌を逸していたそうだから。自分の種でない子を身ごもられたカリンメテオール様の胎を蹴って、流してしまいたかったに違いない。そのせいで、カリンメテオール様を異世界にお逃がしするしか無かったのだ」
「異世界に自在に移動出来る魔法みたいなのがあるんですか?移動出来るのが分かっていて、カリンメテオール様をお逃がししたという口ぶりですよね?」
「異世界が存在しているなど、この時まで誰も知らなかったはずだ。異世界にお逃がしするという案を持ち込んだのは、異世界の存在を信じるカリンメテオール様自ら連れてこられた、ノウグスティアという魔術師だった。
協力者たちは、皆半信半疑だったそうだが、結果的に成功し、ノウグスティアも一緒に異世界に渡ったとみられている。おそらく、異世界で貴女が会ったという代理人というのが、ノウグスティアだったのでは無いだろうか」
確かに、代理人は日本人じゃなかった。それとしゃべり方に違和感があった。写真とかあれば、すぐに本人か分かるのにな、と思うけど、ないものをねだってもしょうがない。
「そのノウグスティアという人の身内とか、仲間みたいな人は、こちらの世界に残っていないんですか?」
「彼は身分が分からないよう、慎重に接触してきたそうだ。当時は、アルトゥール様の報復を恐れて、表立った行動を取れなかった者も多い。名は偽名だろう。魔術師は全員魔術協会への登録が必要だが、ノウグスティアという名の者は、数百年前に一度登録されただけだったからだ」
エアリスが補足するように後を継ぐ。魔術師の知識は彼が専門なのかな。
「時を極めしノウグスティア……という二つ名で呼ばれた、希代の魔術師ですよ。
比類なき魔力量を有し、彼の最期は、魔力が暴発してその地域一帯が消失し、草一本残らなかった、と伝えられています。
その後魔術師にとってノウグスティアという名は忌み名となり、以降魔力を持つ者にその名を付けた者はおりません」
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