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147.真っ赤に薬房(2)
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「ホンファには、北の蛮族たちを診てもらってて。あまり気が進まないでしょうに、ありがとうございます」
と、俺はリンシンさんに頭を下げた。
……とりあえず、胸の谷間が丸出しになってることはスルーしておこう。
「いいえ。マレビト様がお命じになられたことです。我らでお役に立てることでしたら、当然のことです」
そうか……。正式に君主になってしまった今、俺はお願いと思ってても、受け取る側にしたら命令になるんだな。
ちょっと、気を付けるようにしておこう……。
「かの囚人たちには、シュエン殿の作られる粥に、体力を回復させる薬草を混ぜるように申し付けております。ホンファの申し様では、3人のうち2人は元々体力のある身体のようで、武人かもしれません」
というリンシンさんの言葉に、シアユンさんが眉を寄せた。
「そうですか。ご苦労をかけてしまいます」
「いえいえ、苦労だなんて。薬師が薬を処方するのは当然のことですし、ホンファもシュエン殿と楽しくやっているようですよ」
ホンファがシュエンの物言いに笑い転げていたことを思い出す。……ビキニ姿で。
いかん、いかん。お母さんの前で何を思い出してるんだ、俺。
「ホンファはマレビト様の側にお仕えして、なにか粗相などしておりませんでしょうか?」
と、リンシンさんの言葉に焦ってしまった。
「そ、粗相なんて……、そんな……。ねぇ……」
と、シアユンさんに振ってしまった。頭の中は大浴場でのホンファの姿でいっぱいだ。
シアユンさんはそんな俺の心の内を知ってか知らずか、穏やかにリンシンさんに応える。
「ホンファ殿は立派に務めを果たされておりますよ」
「太保さまから、そのように言っていただけるのでしたら安心ですわ」
そ、そうですね……。大切な娘さんを預けてるんですもんね……。心配ですよね……。
ふわふわと、湯煙と泡と裸体の大浴場のことが思い浮かんで、なんだか少し後ろめたい気持ちです。
今朝の大浴場で気持ちよく感じてしまった、ふにふにの感触まで思い出してしまう……。
リンシンさんは、にこやかな表情で話しを続けた。
「マレビト様も言い伝えと違って、女性にも誠実なお方で、想い人に一途に操を立てていらっしゃる。そのような方に娘の純潔を捧げられるのは、とても幸運なことです」
……な、なんか、婉曲な表現ですけど、すごいこと言ってません? 返事に困る。
「ただ、マレビト様……」
と、リンシンさんは言葉を切って、俺の目をジッと見詰めた。
年上女性の色香に、少しドキッとしてしまう。
「もし……、ご自身の純潔が重たいようでしたら、私に降ろしていただいても構いませんから……」
……。
……。
へっ?
「私も夫に先立たれた身。いえ、マレビト様のお役に立てるのなら、むしろ夫も喜びましょう。いつでもお慰めいたしますので、ご遠慮なくお申し付けください……」
……お、お慰めします、って生々しいです。
うわ、これどうしよう、と思って、シアユンさんを見ると、真っ赤。全身真っ赤。
ですよねー。
こういうとき、シアユンさんは、そうですよねー。
ふと、里佳の笑顔と、フェイロンさんの笑顔が同時にポンッと頭に浮かぶ。
「抱きましたな、女を」
と、苦笑いしながら幼馴染にフラれた傷から立ち直った経験を教えてくれたフェイロン先輩。
だけど、いやいや、俺には里佳だけだし、って気持ち。
そして、こういうとき、どうやって断れば相手の女性を傷つけないか、そんな経験値、俺には、ない。
……ないけど、そんな胸の谷間全開の大人の色香で真正面から迫られたら、頭が爆ぜてしまいそうです。
「もちろん、お断りになられても、私に恥をかかせたなどと思わないでくださいね」
「あ……。はい……」
「誘惑しているつもりもありませんし、太保さまもいらっしゃるところで、そんなことはいたしません」
「あ……。はい……」と、シアユンさんも俺とまったく一緒の反応してるし。
「もしも、私でお役に立てることがあればというだけの話です。一途で誠実なマレビト様に、私の出番などない方がよろしいでしょうし」
「あ……、いえ……、そんな……」
「ただ、マレビト様のためでしたら、いつでも閨に馳せ参じる覚悟でおりますので、どうか、そのことだけはお心に留めておいてくださいませ」
と、深々と頭を下げてくれるリンシンさん。より一層、しっかりと谷間が見えてます……。
「私のことより、ホンファのことをよろしくお願いしますね」
リンシンさんの、にこやかな笑顔に見送られて、顔を真っ赤にした俺とシアユンさんは薬房を後にし、ミンリンさんの執務室に向かった。
帰り、ユエに心配そうな目で見られたけど、病気じゃないんで気にしないでね……。
と、俺はリンシンさんに頭を下げた。
……とりあえず、胸の谷間が丸出しになってることはスルーしておこう。
「いいえ。マレビト様がお命じになられたことです。我らでお役に立てることでしたら、当然のことです」
そうか……。正式に君主になってしまった今、俺はお願いと思ってても、受け取る側にしたら命令になるんだな。
ちょっと、気を付けるようにしておこう……。
「かの囚人たちには、シュエン殿の作られる粥に、体力を回復させる薬草を混ぜるように申し付けております。ホンファの申し様では、3人のうち2人は元々体力のある身体のようで、武人かもしれません」
というリンシンさんの言葉に、シアユンさんが眉を寄せた。
「そうですか。ご苦労をかけてしまいます」
「いえいえ、苦労だなんて。薬師が薬を処方するのは当然のことですし、ホンファもシュエン殿と楽しくやっているようですよ」
ホンファがシュエンの物言いに笑い転げていたことを思い出す。……ビキニ姿で。
いかん、いかん。お母さんの前で何を思い出してるんだ、俺。
「ホンファはマレビト様の側にお仕えして、なにか粗相などしておりませんでしょうか?」
と、リンシンさんの言葉に焦ってしまった。
「そ、粗相なんて……、そんな……。ねぇ……」
と、シアユンさんに振ってしまった。頭の中は大浴場でのホンファの姿でいっぱいだ。
シアユンさんはそんな俺の心の内を知ってか知らずか、穏やかにリンシンさんに応える。
「ホンファ殿は立派に務めを果たされておりますよ」
「太保さまから、そのように言っていただけるのでしたら安心ですわ」
そ、そうですね……。大切な娘さんを預けてるんですもんね……。心配ですよね……。
ふわふわと、湯煙と泡と裸体の大浴場のことが思い浮かんで、なんだか少し後ろめたい気持ちです。
今朝の大浴場で気持ちよく感じてしまった、ふにふにの感触まで思い出してしまう……。
リンシンさんは、にこやかな表情で話しを続けた。
「マレビト様も言い伝えと違って、女性にも誠実なお方で、想い人に一途に操を立てていらっしゃる。そのような方に娘の純潔を捧げられるのは、とても幸運なことです」
……な、なんか、婉曲な表現ですけど、すごいこと言ってません? 返事に困る。
「ただ、マレビト様……」
と、リンシンさんは言葉を切って、俺の目をジッと見詰めた。
年上女性の色香に、少しドキッとしてしまう。
「もし……、ご自身の純潔が重たいようでしたら、私に降ろしていただいても構いませんから……」
……。
……。
へっ?
「私も夫に先立たれた身。いえ、マレビト様のお役に立てるのなら、むしろ夫も喜びましょう。いつでもお慰めいたしますので、ご遠慮なくお申し付けください……」
……お、お慰めします、って生々しいです。
うわ、これどうしよう、と思って、シアユンさんを見ると、真っ赤。全身真っ赤。
ですよねー。
こういうとき、シアユンさんは、そうですよねー。
ふと、里佳の笑顔と、フェイロンさんの笑顔が同時にポンッと頭に浮かぶ。
「抱きましたな、女を」
と、苦笑いしながら幼馴染にフラれた傷から立ち直った経験を教えてくれたフェイロン先輩。
だけど、いやいや、俺には里佳だけだし、って気持ち。
そして、こういうとき、どうやって断れば相手の女性を傷つけないか、そんな経験値、俺には、ない。
……ないけど、そんな胸の谷間全開の大人の色香で真正面から迫られたら、頭が爆ぜてしまいそうです。
「もちろん、お断りになられても、私に恥をかかせたなどと思わないでくださいね」
「あ……。はい……」
「誘惑しているつもりもありませんし、太保さまもいらっしゃるところで、そんなことはいたしません」
「あ……。はい……」と、シアユンさんも俺とまったく一緒の反応してるし。
「もしも、私でお役に立てることがあればというだけの話です。一途で誠実なマレビト様に、私の出番などない方がよろしいでしょうし」
「あ……、いえ……、そんな……」
「ただ、マレビト様のためでしたら、いつでも閨に馳せ参じる覚悟でおりますので、どうか、そのことだけはお心に留めておいてくださいませ」
と、深々と頭を下げてくれるリンシンさん。より一層、しっかりと谷間が見えてます……。
「私のことより、ホンファのことをよろしくお願いしますね」
リンシンさんの、にこやかな笑顔に見送られて、顔を真っ赤にした俺とシアユンさんは薬房を後にし、ミンリンさんの執務室に向かった。
帰り、ユエに心配そうな目で見られたけど、病気じゃないんで気にしないでね……。
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