おお、勇者よ家から出ないとは情けない。

俺の幼馴染、ローラは成人の儀という儀式で勇者となってしまった。

勇者とは、魔王を討伐出来る唯一の職業。それは魔王が近々この世界に攻め込んでくるという兆候でもあった。

さらにローラは職業をもう一つ発現させる。今度は賢者。ローラは勇者で賢者というこの世の最強を組み合わせたような職業を手に入れたのだ。

二つ職業を発言させること自体が珍しいのに、それが両方ともレア職。村の皆はそりゃもう大騒ぎ。しかし、その騒ぎはさらに発現させた最後の職業によって静まり返ることになる。

ニート。それがローラが発現させた最後の職業である。この世界では聞きなじみの無い言葉に村の皆は首を傾げた。しかし、最強のローラが発現した職業だ、悪いことではないだろう。皆はそう納得し、勇者の誕生祭として村総出で祭りをした。

その次の日、ローラは家から出てこなかった。

旅の準備をしていた武器屋はローラの家に行ってくれと俺に頼んでくる。

渋々、ローラの家に行くとローラはベッドの上に寝転んでいた。いつもとろんとした瞳をしていたが、今日に限っては何故かハイライトすら消えているような気がする。

「どうしたローラ」僕は聞く。そして返ってきた言葉に僕は驚愕した。

「ヒロ、わたし旅に行かない。わたしは自宅警備員だから」


物語はここから始まり、そしてすぐに終わる。僕達の話はそんな大仰な話にはならない。

そんな勇者になった幼馴染と僕の話。
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