悪役令嬢の婚約者に転生しました

木嶋うめ香

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王子は先生に相談する。

「先生、少しお時間よろしいでしょうか」

 担任の授業の後、声を掛けてこようとする級友を無視して先生を呼び止めた。

「はい。何かございますか」
「お話したい事がありますので、先生の教務室に伺ってもいいでしょうか」
「勿論どうぞ」

 次の授業まではあまり時間がないから、マリウスに授業に遅れるかもと、先生への伝言を頼んだ。

「お忙しいところ申し訳ありません」
「いえ、私は次の時間は空いていますから」

 連れだって廊下を歩くと、あちこちから視線を感じる。
 俺と担任が一緒に歩いているのが珍しいのだろうけれど、ジロジロ見られるのはいつもの事とはいえあまり気分が良くない。

「そう言って頂けると助かります」

 にこりと笑顔を作って先生と話す。
 この先生は、確か男爵家の次男だったかな。
 低位貴族になれば成程、己が持っている魔力は少なくなるし使える魔法も低級になる。
 ゲームの中でヒロインが特待生になれたのは、上級の光魔法が使えたせいだけど、あれはかなり無理矢理な設定だと思う。
 上級貴族の隠し子という設定でも無く、ヒロインは本当の平民だ。
 光魔法を使えると分かり貴族の養女になって学園に来るのだから、そもそもの設定に無理がある。
 まあ、だからこそエバーナは劣等感を刺激されたんだろうなあ。
 自分は上位貴族で、魔力も多いと分っているのに魔法が使えないんだから。

「エルネクト殿下、私は秘書がいませんので、お茶は私が入れたものになりますがよろしいでしょうか」

 先生の部屋に到着しソファーに座ると困りきった顔で先生が聞いてきた。

「お茶等いりません。お気遣いなく」
「でも」
「話が済んだらすぐに授業に戻りますから」
「本当によろしいのですか」
「ええ」

 部屋に招いて(今回は押しかけているのだが)お茶も出さずに返すのは、完全なマナー違反だけれど、お茶の入れ方に自信がなさそうな人に無理を言うほどのことじゃない。

「では、申し訳ありませんが。このままで」
「はい。お時間頂いたのは、お知らせしたいことが一つと。伺いたいことが一つあるからです」

 安物っぽいソファーに座り、話始める。
 この学校の設備はどれも同じだと思っていたけれど、どうも違うらしいのは部屋に入ってすぐに分った。
 担任が担当する科目は魔法学。
 それは比較的魔力が少なくても出来る学問だ。
 魔法学は低年齢の学生向けの学問で、魔法の基礎と魔方陣の基礎を学ぶ。
 魔法使いの関係する学問としては、完全な基礎扱いだ。
 魔法使いとしては、攻撃魔法や防御魔法といった呪文を詠唱して魔法を放つ方が主流となり、魔方陣などは魔力が少ないものが魔法を使う為の補助扱いとなる。
 記憶を思い出す前の俺もその認識だった。
 だから、魔法学を教える先生は軽く見られてしまいがちなのだ。

「エルネクト殿下は、すでに基礎魔法も魔方陣も理解しておいでです。それなのに」
「まずは報告から、私は来年貴族学校の入学試験を受ける事になりました」
「入学試験ですか」
「ええ。諸事情あって受ける事になりました」
「そうですか。殿下であれば十分受かる可能性はあるでしょうね」

 少し皮肉めいた口調で担任はそう言うと、視線をそらし俯いた。

「試験まではまだ半年以上ありますから、これから十分な準備を行なう予定ですが。やはり難しいとは考えています」
「貴族学校の試験は国文学と魔法と算術です。そう難しくはないでしょう。殿下は魔法にも秀でておいでですから」
「それは、これから努力します。ただ、私が受験すると分れば何人かは同じ様にしようとする者が出てくる筈。それは先生から校長へと伝えておいて欲しいのです」

 ゲームでは攻略対象者が皆同じ学年なのだから、フォルードもマリウスも俺と一緒に受験するのかもしれないし、ゲームの流れと変わっているのなら、そうならないのかもしれない。
 それは今の俺には分らなかった。

「報告は以上です。もう一つは重大なお話です。先生は、魔力があっても魔法が使えない者について、なにかご存知ではありませんか」

 エバーナが魔法を使えない理由。
 それはある程度の予測はついているけれど、でも確証は無かった。
 だから、魔法学の知識を持つ先生に聞いてみようと思ったのだ。

「魔力があっても、魔法が使えない。例えばクリスティーノ・シャイネン君の様な場合ですか」

 困った様な顔をして、先生は一つ年上の生徒の名前を口にした。
 それも攻略対象者だった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

風邪をひいてぐったりな週末でした。
本当辛いです。
皆様、風邪にご注意下さいね。

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