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『人の敵になろうとも、魂を引き渡しどんなことでもすると誓うなら手を貸そう』
それは神なのか、悪魔なのか。
分からない声が、頭の中に響いた。
『復讐、家族の仇を』
『それが望みか、望みのために悪になれるか』
『悪だろうとなんだろうと構わない』
躊躇わずに答える俺に、笑い声が聞こえた気がした。
ナイフで刺されて瀕死だった俺は意識が朦朧としていた筈なのに、その声はハッキリと聞こえてきてその声を聞いているうちに考える力が戻ってきた。
それが不思議だった。
『仇とは、何をする』
『父さんの冤罪をはらして、あいつらの罪を世間に知らしめる。俺と母さんと妹を殺したのも横領も父さんにその罪をなすりつけたことも全部』
『それだけか?』
つまらない、そう言われた気がして慌てて考える。それだけで俺は満足出来るのか?
本当に、それで満足なのか?
『あいつらの大切なものを全て奪う、家族も人生も全て。そして絶望した後で、死すら救いにならないようにする。死後も苦しみ続ける』
『それから?』
『それから……俺達を嘲笑った人達に苦しみを与えたい』
父さんが捕まって、すぐに噂が広まった。
近所に、俺と香苗が通ってる学校に広まった噂、それを聞いた奴らは俺達家族を非難し始めた。
無言電話が続き、俺と香苗は友達だった奴らからも、名前すら知らない奴らからもイジメられるようになった。
母さんは遠回しに勤めていた会社を辞めるように上司に言われ、退職届けを書かされた。
父さんは無実なのに、誰も信じてくれなかったんだ。
信じていたのは俺達三人だけだった。
父さんは、絶対にそんなことしない。誤解だったと言って、元気に帰ってくる。
そう、母さんは俺達を励まして、俺達もそれを信じた。父さんの帰ってくる家を守ろうと。
そう約束したばかりだった。
『いいぞ、恨め、もっともっと恨め』
頭の中に笑い声が響く。
その声に挑発されるように、俺の恨みは深くなる。
『恨む、あいつらを、俺と香苗をイジメた奴らを、母さんに退職を強要した奴らを、俺達を犯罪者の家族だと蔑んだ全ての奴らを!!』
悔しい、悔しい、悔しい!!
父さんは横領なんてしてなかった、父さんは間違ったことなんてしてなかった。
俺達は犯罪者の家族なんかじゃない、父さんは無実なんだ!
『恨みの心を力に変えろ、お前は今から人の敵になるんだ』
『人の敵に? 俺が?』
どうやって、俺はもうすぐ死ぬのに?
悪霊にでもなれというのか、それで復讐出来るならそれでもいい。
俺に力を、復讐する力を!!
『お前の魂と、恨みの力でこの世界にダンジョンを作る。私はある世界を追われた悪神、逃げ場を探していた。丁度良く私の耳にお前の願いが聞こえてきたというわけだ』
『悪神? ある世界?』
『ダンジョンには魔物がいて、その魔物を倒さなければ魔物がどんどん増えて外に出ていく。そういう世界だ』
ダンジョンって、ファンタジーアニメやゲームの世界に出てくるあれのことだろうか。
俺は死に際に変な夢を見ているのか?
『お前の体は死ぬが、ダンジョンが育つことでお前自身が強くなり、いずれは新しい肉体を手に入れられるようになる』
『死ぬのか』
『死が怖いか』
面白がるような、馬鹿にするような声にムッとして、『今更死ぬのを怖がるわけがない』と言い返す。
怖いのは人だと、俺はもう知っている。
怖いのは何もできずに死ぬことだと、俺はもう知っている。
ずっと友達だと思っていた奴らが掌を返し、俺を罵った。
まだ、父さんの罪は確定してなかったのに、誰もそれを信じてくれず、犯罪者の子は犯罪者だとイジメだした。
俺達を殺した男達だってそうだ、父さんに罪を着せ、俺達を父さんの心を折るためだけに殺したんだから。
人は、善の心を持つ。
人は、思い遣りの心を持つ。
人に優しく生きる、誠実に生きる。
誰が見ていなくても、行いをお天道様は見ているから、良いことも悪いことも見てるから、正しく生きなければいけないよ。
そう、両親に教えられて育ったのに、真面目に生きてきた俺達を、周囲は寄ってたかって蔑み甚振ったんだ。
『死ぬのは怖くない、復讐出来ず何も出来ぬまま死ぬのが嫌だ。父さんを助けて! 母さんと香苗の仇を打って! あいつらに復讐を』
『なんでもするんだな』
『する、ダンジョンでもなんでも作る、あんたに全てを捧げるから!』
正しく生きる、優しく誠実に。
両親の教えを背くことになっても、復讐出来るなら地獄に落ちてもかまわない。
『恨め、お前たちを苦しめた全てを恨め! お前の力でこの世界の至る所にダンジョンを作るんだ。ダンジョンが出来れば人はそこに入り魔物を殺さなければならないと思うようになる。そのように我の力で誘惑し導く』
『俺はダンジョンを作ればいいのか?』
それだけで、復讐になるのか? そんなことで本当に?
『ある日突然、魔物に襲われる様になる。安全だった場所が突然魔物の住処になるんだ』
『安全だった場所? まさか、この家も?』
『この家はダンジョンにはならない、だがお前の望みの一つ、あ奴らの罪を世間に知らしめるため家に火を放つ。ボヤ程度で済むようにしてやろう』
ボヤ程度、それがどうやって罪を世間に知らしめることになるの分からない。
『火を放ち、憎む相手が逃げるところを瀕死のお前が一人に飛びつき拘束する。そこで息絶えても手を離さず、火に気がついた周囲の家の者達に犯人が見つかるのはどうだ』
『あいつらが言い逃れしないとも限らない』
『警察はそこまで馬鹿じゃない。三人を殺したのはそこで分かる。私がそう仕向ける。そこからあ奴らの罪は暴かれ警察がお前の父親を逮捕しなければ、お前達三人は殺されずに済んだと世論を誘導する。そうすれば誤認逮捕した警察はどれだけ責められるだろうな。後悔しても後悔しても自分の犯したことで罪のない人が殺された事実を悔やみ続けるんだ』
そんな簡単な話だろうか。
でも、父さんの家族を殺したのが分かれば、そこから調べてもらえるかもしれない。
世の中の人は、叩ける理由があればそれだけで正義感ぶって相手を責め始める。そうなれば、父さんを非難していたテレビの報道も、俺達家族を追い詰めたやつらも、父さんを誤認逮捕した警察も皆責められるだろう。
何人かはそれで職を失い、苦しむことになるかもしれない。
『分かった、それでいい』
とにかく俺は、この声を信じるしかないんだから。
それは神なのか、悪魔なのか。
分からない声が、頭の中に響いた。
『復讐、家族の仇を』
『それが望みか、望みのために悪になれるか』
『悪だろうとなんだろうと構わない』
躊躇わずに答える俺に、笑い声が聞こえた気がした。
ナイフで刺されて瀕死だった俺は意識が朦朧としていた筈なのに、その声はハッキリと聞こえてきてその声を聞いているうちに考える力が戻ってきた。
それが不思議だった。
『仇とは、何をする』
『父さんの冤罪をはらして、あいつらの罪を世間に知らしめる。俺と母さんと妹を殺したのも横領も父さんにその罪をなすりつけたことも全部』
『それだけか?』
つまらない、そう言われた気がして慌てて考える。それだけで俺は満足出来るのか?
本当に、それで満足なのか?
『あいつらの大切なものを全て奪う、家族も人生も全て。そして絶望した後で、死すら救いにならないようにする。死後も苦しみ続ける』
『それから?』
『それから……俺達を嘲笑った人達に苦しみを与えたい』
父さんが捕まって、すぐに噂が広まった。
近所に、俺と香苗が通ってる学校に広まった噂、それを聞いた奴らは俺達家族を非難し始めた。
無言電話が続き、俺と香苗は友達だった奴らからも、名前すら知らない奴らからもイジメられるようになった。
母さんは遠回しに勤めていた会社を辞めるように上司に言われ、退職届けを書かされた。
父さんは無実なのに、誰も信じてくれなかったんだ。
信じていたのは俺達三人だけだった。
父さんは、絶対にそんなことしない。誤解だったと言って、元気に帰ってくる。
そう、母さんは俺達を励まして、俺達もそれを信じた。父さんの帰ってくる家を守ろうと。
そう約束したばかりだった。
『いいぞ、恨め、もっともっと恨め』
頭の中に笑い声が響く。
その声に挑発されるように、俺の恨みは深くなる。
『恨む、あいつらを、俺と香苗をイジメた奴らを、母さんに退職を強要した奴らを、俺達を犯罪者の家族だと蔑んだ全ての奴らを!!』
悔しい、悔しい、悔しい!!
父さんは横領なんてしてなかった、父さんは間違ったことなんてしてなかった。
俺達は犯罪者の家族なんかじゃない、父さんは無実なんだ!
『恨みの心を力に変えろ、お前は今から人の敵になるんだ』
『人の敵に? 俺が?』
どうやって、俺はもうすぐ死ぬのに?
悪霊にでもなれというのか、それで復讐出来るならそれでもいい。
俺に力を、復讐する力を!!
『お前の魂と、恨みの力でこの世界にダンジョンを作る。私はある世界を追われた悪神、逃げ場を探していた。丁度良く私の耳にお前の願いが聞こえてきたというわけだ』
『悪神? ある世界?』
『ダンジョンには魔物がいて、その魔物を倒さなければ魔物がどんどん増えて外に出ていく。そういう世界だ』
ダンジョンって、ファンタジーアニメやゲームの世界に出てくるあれのことだろうか。
俺は死に際に変な夢を見ているのか?
『お前の体は死ぬが、ダンジョンが育つことでお前自身が強くなり、いずれは新しい肉体を手に入れられるようになる』
『死ぬのか』
『死が怖いか』
面白がるような、馬鹿にするような声にムッとして、『今更死ぬのを怖がるわけがない』と言い返す。
怖いのは人だと、俺はもう知っている。
怖いのは何もできずに死ぬことだと、俺はもう知っている。
ずっと友達だと思っていた奴らが掌を返し、俺を罵った。
まだ、父さんの罪は確定してなかったのに、誰もそれを信じてくれず、犯罪者の子は犯罪者だとイジメだした。
俺達を殺した男達だってそうだ、父さんに罪を着せ、俺達を父さんの心を折るためだけに殺したんだから。
人は、善の心を持つ。
人は、思い遣りの心を持つ。
人に優しく生きる、誠実に生きる。
誰が見ていなくても、行いをお天道様は見ているから、良いことも悪いことも見てるから、正しく生きなければいけないよ。
そう、両親に教えられて育ったのに、真面目に生きてきた俺達を、周囲は寄ってたかって蔑み甚振ったんだ。
『死ぬのは怖くない、復讐出来ず何も出来ぬまま死ぬのが嫌だ。父さんを助けて! 母さんと香苗の仇を打って! あいつらに復讐を』
『なんでもするんだな』
『する、ダンジョンでもなんでも作る、あんたに全てを捧げるから!』
正しく生きる、優しく誠実に。
両親の教えを背くことになっても、復讐出来るなら地獄に落ちてもかまわない。
『恨め、お前たちを苦しめた全てを恨め! お前の力でこの世界の至る所にダンジョンを作るんだ。ダンジョンが出来れば人はそこに入り魔物を殺さなければならないと思うようになる。そのように我の力で誘惑し導く』
『俺はダンジョンを作ればいいのか?』
それだけで、復讐になるのか? そんなことで本当に?
『ある日突然、魔物に襲われる様になる。安全だった場所が突然魔物の住処になるんだ』
『安全だった場所? まさか、この家も?』
『この家はダンジョンにはならない、だがお前の望みの一つ、あ奴らの罪を世間に知らしめるため家に火を放つ。ボヤ程度で済むようにしてやろう』
ボヤ程度、それがどうやって罪を世間に知らしめることになるの分からない。
『火を放ち、憎む相手が逃げるところを瀕死のお前が一人に飛びつき拘束する。そこで息絶えても手を離さず、火に気がついた周囲の家の者達に犯人が見つかるのはどうだ』
『あいつらが言い逃れしないとも限らない』
『警察はそこまで馬鹿じゃない。三人を殺したのはそこで分かる。私がそう仕向ける。そこからあ奴らの罪は暴かれ警察がお前の父親を逮捕しなければ、お前達三人は殺されずに済んだと世論を誘導する。そうすれば誤認逮捕した警察はどれだけ責められるだろうな。後悔しても後悔しても自分の犯したことで罪のない人が殺された事実を悔やみ続けるんだ』
そんな簡単な話だろうか。
でも、父さんの家族を殺したのが分かれば、そこから調べてもらえるかもしれない。
世の中の人は、叩ける理由があればそれだけで正義感ぶって相手を責め始める。そうなれば、父さんを非難していたテレビの報道も、俺達家族を追い詰めたやつらも、父さんを誤認逮捕した警察も皆責められるだろう。
何人かはそれで職を失い、苦しむことになるかもしれない。
『分かった、それでいい』
とにかく俺は、この声を信じるしかないんだから。
感想
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