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一部
十夜
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普通のバイトはというと見つけられずにいた。正確には思った以上にテンダーが繁盛していて殆ど休みが取れず探している暇も無かったのだ。空いた時間に神谷の所に帰りできる当番はこなしては出掛けた。
「今日もバイトか」
「はい」
「忙しいな」
「そうですね」
「こっちが繁盛してる時ってのは世間が暇なときだからな。景気も良くないがどっかの誰かが儲かってるって証拠だ」
「そうなんですか…」
「半年もすれば落ち着くだろ」
神谷の言う通り数ヵ月もしたらこのバイトも徐々に落ち着いてきた。前ほどは忙しくなく時間もとれるようになりこれで普通のバイトが探しやすくなると思って今日もここに来ていた。
慣れはしないが意外にもお客さんも売り子も礼儀正しくお金を払わないとかそういったことはなかった。たまに自分と勘違いをする人はいたが違うと話すと慌てて離れていた。あちら側にもルールがあるようでテンダーには逆らわないこと。売りの子への暴力行為や無理強いはなし。何かあればテンダーが連絡役となり上の人と連絡をとる。それを破るとペナルティが化せられてしまう。
美日下はその年齢にも関わらず行為そのものに興味は湧かなかった。すぐ近くでしていても何の興奮も感じなかった。時折見ていて欲しいなどの要望はあれど「見る」ということはせず「いる」というのを許していた。
初めて見た時は生でいきなり見たのもあってビックリはしたがどちらかというと嫌悪の方が強かった。それからは特に何も思わなくなった。何度見てもどの行為も同じに見えるのはそれが作り物だという世界だったからだ。どちらも演技をしている行為は自分にとっては単調なおもちゃが動いているようにしか思えなかった。
ピンポーン
いつものようにインターホンを覗く。
「テンダーさん宜しくお願いします」
シオンさん…
部屋を貸した時に初めて使ったのがシオンだった。あれ以来会うことは無かったが元気そうで安心した。もしかしたらシオンも危ない目に遭っていたかもしれないと心配していた。招き入れるとシオンも驚いていた。
「テンダーになってたんだ!」
「はい…いろいろあって。西原さんから鍵を譲りうけました」
「そっか、大変だったね、俺の代わりにごめんね。いつか会えたら謝ろうと思ってた」
「いえ。シオンさんこそあれから大丈夫ですか?」
「うん、俺の方には来なかったしね。一応仕事復帰はしたけど1ヶ月ぐらい休みになっちゃって大変だった。その分売上0だったから」
「そうですか」
そうこうしているうちにお客さんがきてシオンはまた同じように相手をしていた。自分は一応頼りないがボディーガードもかねているはずなので隣の部屋もしくは邪魔にならない場所で待機していた。行為中はイヤホンを片方だけかけ危ない行為はないかだけ注意している。誰がどうやろうが勝手だがシオンの時はお客さんがやたらはりきっているそんな印象だった。
全てが終わり掃除をしているとシオンが話しかけてきた。
「今日はこれで終わり?」
「はい、これが終わったら帰ります」
「俺もなんだ。一緒に駅まで行かない?」
断る理由もないのではいと返事をした。
「美日下君だったよね?」
「はい」
「ヤクザになったの?」
「…なってはないですけど、こんなことをしている以上は端から見たらそうかもしれないです。俺も借金があるので」
「そっか…美日下君、印象変わったね。もっとなよっちかったけど逞しくなったというか」
「そうですか…自分ではわかりません」
「俺のしてるの嫌がってたしね」
「すみません」
「いいのいいの、そういうもんだからさ。それに好き嫌いは誰にだってあるし嫌な印象の方が強いしね」
「…嫌いというわけでは」
「そうなの?てっきり俺らのやってることが嫌だと思っていた」
「…どちらかというと嫌いなのは…客の方です。自分の欲を相手に構わずぶつけるのが好きじゃないだけです」
「なるほど…」
「お客さんは選べないじゃないですか…」
「まぁね。でも、逆に言えば俺で解消できてるって俺は思うからな。普段のストレスを発散させれてるというか。できないことを俺でできているというか。っていうのは建前。何よりお金っていうか…そんな感じ」
シオンの事は全然知らないがこの人は自分の疑問をストレートに答えてくれ、かつ嫌な顔一つせずに仕事もこないしている。それに他の人と気配りや行動も全然違うので他の人より料金が高い理由もわかる気がした。
「聞いても良いですか?」
「いいよ」
「……初め嫌いだった仕事をどうやって好きに…というか続けられるのかなって」
「借金早く返さなきゃってそれしか考えてない」
「……。できるものですか?」
「できるもんだよ、実際は。するかしないというより俺はしなきゃいけないから。美日下君ってさ誰かのやってるのみて興奮しないんだね。結構そういうテンダーさんいてさ、誘われたりするんだけど」
「あー…そういうのはないですね」
「なんで?」
「…元々そういう風に売り子さんや客を見てないです。軽蔑とかそういうんじゃなくて皆同じに見えて。行為もですけど。多分シオンさん以外の今までの客や売り子の顔は殆ど覚えてないです」
「興味ない?」
「わかりません、そういう感情を持つべきなのかも。自分が商品だと思うとなおのこと」
「……わかるよ、そんな事思ってたら仕事できないしね」
シオンは親が闇金で借金をしてそれの肩代わりをさせられたのが自分だったと前斎藤から聞いていた。自分と全く同じ状況でその借金を今も返していっている。今に至るまでにいろいろ嫌なことが山ほどあったと思うがそれをどんな風に乗り越えて来たのか聞いてみたかった。
「がんばって続けようなんて無理だから、これが終わったらあれ食べようとか。これ買いに行こうとか切り替えてる。案外単純なもんだよ、後は人間観察かな」
「そうですか…」
「美日下君はまだ誰ともしたことない?」
「無理やりなら、斎藤さんに一度だけ」
「そっか、斎藤さん嫌い?」
「…そう…ですね」
「あはは、でも斎藤さんといるんだ」
「……。」
「斎藤さんのおかげで生かされてることだけは忘れないで。俺はそれができなかった人だから」
「……わかりました」
「またね!」
シオンはバイバイと手を振ってホームへ歩いて行った。シオンに斎藤が嫌いかと聞かれた時、今は迷いのある返事になっているのに気づかないふりをした。
携帯を見ると自分が1週間前に18歳になってる事に気がついた。
□□□□□
風俗店
「で、いつ出すんや」
「出しません」
「だせ」
「嫌です」
「今稼ぎ時やろ、はよ美日下仕込め」
「嫌です。あれは俺のですから俺が好きにします」
「お前はいつまでそんなこといっとんのじゃ!」
机を蹴り飛ばす和田。ここは斎藤と和田の管理する風俗店の事務所だった。
「あんまり大きい声だすと客が逃げます」
「店なんぞ大音量で聞こえへんわ!それより早よだせ。いつまでちんたら稼がせとんのや。もっと客とる仕事に回せ」
「勘違いせんといてください。加成さんの命令でも俺は同じこというてますから。それにあの人が負けたんで俺のもんです。加成さんがまた口だししてこん限り自由にしますし言われても俺のですから手出さんで下さい」
「なめとんのか!」
ガッシャーン
和田は周りにあるものを投げ捨て舎弟と出ていった。こっそり覗いていた店長がビクビクしながら声をかけてきた。
「斎藤さん…」
「すまん、片付けといて」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫や無いけど大丈夫やで」
「その子なんで出さないんですか?さっさと出したら良いじゃないですか」
「なんで他人に言われて出さなかんねん。出す時は俺が決める」
「遅かれ早かれ店にだすなら、斎藤さんが早く仕込んで出してあげた方が相手の子の為だと思いますけど…」
「うーん、勃たんねん」
「え?」
「あいつを仕込んでってなると全く勃たん」
「なんかの冗談ですか?普通に店の時できてますよね?」
「普通の人とあいつは逆やねん。俺のオンオフが逆になんねん。仕事で仕込む相手には仕事やからスイッチ入ったら勃つんやけど、いざその子をプライベートで抱こう思たら無理やねん。萎える。それと逆で美日下は仕込もう思うとなんか無理なんや。んでプライベートやと思うと勃つねん」
「はぁ、、、」
「俺、病気か?」
「つまり、その美日下さんって方はプライベートで抱きたいってことですよね」
「せやで」
「好きってことですか」
「だから言うてるやん、俺のやって。誰が好き好んで知らん男に抱かせたい思うんや。まぁ、そういうやつもおるけど」
店長はビックリして後ずさった。斎藤にこんな純粋な一面があるとは想像できなかったからだ。風俗を取り締まりやり手の斎藤の噂はどこへ行っても聞くからだ。そして会うたびに知り合った人の名前は変わっていくも本命が一人もいないのも有名だった。そんな斎藤から風俗出したくないや他の奴に抱かせたくないなどとまるで普通の人と同じ感情を言われて衝撃しかなかった。
「変な顔してんで」
「もともとです…俺のって、そのままそういう意味ですか。だったら付き合って自分のだって言って手をだされないようにしたらダメなんですか?」
「それをしたいんやけど美日下に借金あってまずはそれを返さなあかんのよな。しかも、問題は金より何よりおっさんに惚れられそうな顔してん。だからはよシオンみたいにさせたいって周りも思てて、でも俺は嫌やからずっと断ってん」
「そんな稼げそうな子だったら加成さんが黙ってないでしょう。それに仕込みも自分でしたがるはずなんじゃないですか?」
「だからあの手この手を尽くして今までなんとか避けてたんや。それに早よ堅気にしてやらんと。若いし、こんなところで変につまずかせたくない。さっさと足洗わせて俺らと関わらん方がええからな」
店長は今までにない斎藤の話にただただ驚いていた。プライベートで抱きたいだの堅気に戻したいだのヤクザらしからぬ発言に心配した。
「そうですか…気をつけて下さい。その気持ちを利用されかねませんから。横やりなんていうのはいつどこで入るかわかりませんし」
「はぁ…わかってる。けどなかなか上手くやるんは難しいな」
「シオンさんのことまだ引きずってるとか?」
「ないな。引きずってはないけど俺の戒めにはなってる」
「何だかんだNo.1になって実績もありますから向こうも金になるならですね」
「せやな」
「因みにですけど相手は斎藤さん好きなんですよね?」
「全然、嫌い言われてる」
「……抜いてきます?」
「なんでや」
「今日もバイトか」
「はい」
「忙しいな」
「そうですね」
「こっちが繁盛してる時ってのは世間が暇なときだからな。景気も良くないがどっかの誰かが儲かってるって証拠だ」
「そうなんですか…」
「半年もすれば落ち着くだろ」
神谷の言う通り数ヵ月もしたらこのバイトも徐々に落ち着いてきた。前ほどは忙しくなく時間もとれるようになりこれで普通のバイトが探しやすくなると思って今日もここに来ていた。
慣れはしないが意外にもお客さんも売り子も礼儀正しくお金を払わないとかそういったことはなかった。たまに自分と勘違いをする人はいたが違うと話すと慌てて離れていた。あちら側にもルールがあるようでテンダーには逆らわないこと。売りの子への暴力行為や無理強いはなし。何かあればテンダーが連絡役となり上の人と連絡をとる。それを破るとペナルティが化せられてしまう。
美日下はその年齢にも関わらず行為そのものに興味は湧かなかった。すぐ近くでしていても何の興奮も感じなかった。時折見ていて欲しいなどの要望はあれど「見る」ということはせず「いる」というのを許していた。
初めて見た時は生でいきなり見たのもあってビックリはしたがどちらかというと嫌悪の方が強かった。それからは特に何も思わなくなった。何度見てもどの行為も同じに見えるのはそれが作り物だという世界だったからだ。どちらも演技をしている行為は自分にとっては単調なおもちゃが動いているようにしか思えなかった。
ピンポーン
いつものようにインターホンを覗く。
「テンダーさん宜しくお願いします」
シオンさん…
部屋を貸した時に初めて使ったのがシオンだった。あれ以来会うことは無かったが元気そうで安心した。もしかしたらシオンも危ない目に遭っていたかもしれないと心配していた。招き入れるとシオンも驚いていた。
「テンダーになってたんだ!」
「はい…いろいろあって。西原さんから鍵を譲りうけました」
「そっか、大変だったね、俺の代わりにごめんね。いつか会えたら謝ろうと思ってた」
「いえ。シオンさんこそあれから大丈夫ですか?」
「うん、俺の方には来なかったしね。一応仕事復帰はしたけど1ヶ月ぐらい休みになっちゃって大変だった。その分売上0だったから」
「そうですか」
そうこうしているうちにお客さんがきてシオンはまた同じように相手をしていた。自分は一応頼りないがボディーガードもかねているはずなので隣の部屋もしくは邪魔にならない場所で待機していた。行為中はイヤホンを片方だけかけ危ない行為はないかだけ注意している。誰がどうやろうが勝手だがシオンの時はお客さんがやたらはりきっているそんな印象だった。
全てが終わり掃除をしているとシオンが話しかけてきた。
「今日はこれで終わり?」
「はい、これが終わったら帰ります」
「俺もなんだ。一緒に駅まで行かない?」
断る理由もないのではいと返事をした。
「美日下君だったよね?」
「はい」
「ヤクザになったの?」
「…なってはないですけど、こんなことをしている以上は端から見たらそうかもしれないです。俺も借金があるので」
「そっか…美日下君、印象変わったね。もっとなよっちかったけど逞しくなったというか」
「そうですか…自分ではわかりません」
「俺のしてるの嫌がってたしね」
「すみません」
「いいのいいの、そういうもんだからさ。それに好き嫌いは誰にだってあるし嫌な印象の方が強いしね」
「…嫌いというわけでは」
「そうなの?てっきり俺らのやってることが嫌だと思っていた」
「…どちらかというと嫌いなのは…客の方です。自分の欲を相手に構わずぶつけるのが好きじゃないだけです」
「なるほど…」
「お客さんは選べないじゃないですか…」
「まぁね。でも、逆に言えば俺で解消できてるって俺は思うからな。普段のストレスを発散させれてるというか。できないことを俺でできているというか。っていうのは建前。何よりお金っていうか…そんな感じ」
シオンの事は全然知らないがこの人は自分の疑問をストレートに答えてくれ、かつ嫌な顔一つせずに仕事もこないしている。それに他の人と気配りや行動も全然違うので他の人より料金が高い理由もわかる気がした。
「聞いても良いですか?」
「いいよ」
「……初め嫌いだった仕事をどうやって好きに…というか続けられるのかなって」
「借金早く返さなきゃってそれしか考えてない」
「……。できるものですか?」
「できるもんだよ、実際は。するかしないというより俺はしなきゃいけないから。美日下君ってさ誰かのやってるのみて興奮しないんだね。結構そういうテンダーさんいてさ、誘われたりするんだけど」
「あー…そういうのはないですね」
「なんで?」
「…元々そういう風に売り子さんや客を見てないです。軽蔑とかそういうんじゃなくて皆同じに見えて。行為もですけど。多分シオンさん以外の今までの客や売り子の顔は殆ど覚えてないです」
「興味ない?」
「わかりません、そういう感情を持つべきなのかも。自分が商品だと思うとなおのこと」
「……わかるよ、そんな事思ってたら仕事できないしね」
シオンは親が闇金で借金をしてそれの肩代わりをさせられたのが自分だったと前斎藤から聞いていた。自分と全く同じ状況でその借金を今も返していっている。今に至るまでにいろいろ嫌なことが山ほどあったと思うがそれをどんな風に乗り越えて来たのか聞いてみたかった。
「がんばって続けようなんて無理だから、これが終わったらあれ食べようとか。これ買いに行こうとか切り替えてる。案外単純なもんだよ、後は人間観察かな」
「そうですか…」
「美日下君はまだ誰ともしたことない?」
「無理やりなら、斎藤さんに一度だけ」
「そっか、斎藤さん嫌い?」
「…そう…ですね」
「あはは、でも斎藤さんといるんだ」
「……。」
「斎藤さんのおかげで生かされてることだけは忘れないで。俺はそれができなかった人だから」
「……わかりました」
「またね!」
シオンはバイバイと手を振ってホームへ歩いて行った。シオンに斎藤が嫌いかと聞かれた時、今は迷いのある返事になっているのに気づかないふりをした。
携帯を見ると自分が1週間前に18歳になってる事に気がついた。
□□□□□
風俗店
「で、いつ出すんや」
「出しません」
「だせ」
「嫌です」
「今稼ぎ時やろ、はよ美日下仕込め」
「嫌です。あれは俺のですから俺が好きにします」
「お前はいつまでそんなこといっとんのじゃ!」
机を蹴り飛ばす和田。ここは斎藤と和田の管理する風俗店の事務所だった。
「あんまり大きい声だすと客が逃げます」
「店なんぞ大音量で聞こえへんわ!それより早よだせ。いつまでちんたら稼がせとんのや。もっと客とる仕事に回せ」
「勘違いせんといてください。加成さんの命令でも俺は同じこというてますから。それにあの人が負けたんで俺のもんです。加成さんがまた口だししてこん限り自由にしますし言われても俺のですから手出さんで下さい」
「なめとんのか!」
ガッシャーン
和田は周りにあるものを投げ捨て舎弟と出ていった。こっそり覗いていた店長がビクビクしながら声をかけてきた。
「斎藤さん…」
「すまん、片付けといて」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫や無いけど大丈夫やで」
「その子なんで出さないんですか?さっさと出したら良いじゃないですか」
「なんで他人に言われて出さなかんねん。出す時は俺が決める」
「遅かれ早かれ店にだすなら、斎藤さんが早く仕込んで出してあげた方が相手の子の為だと思いますけど…」
「うーん、勃たんねん」
「え?」
「あいつを仕込んでってなると全く勃たん」
「なんかの冗談ですか?普通に店の時できてますよね?」
「普通の人とあいつは逆やねん。俺のオンオフが逆になんねん。仕事で仕込む相手には仕事やからスイッチ入ったら勃つんやけど、いざその子をプライベートで抱こう思たら無理やねん。萎える。それと逆で美日下は仕込もう思うとなんか無理なんや。んでプライベートやと思うと勃つねん」
「はぁ、、、」
「俺、病気か?」
「つまり、その美日下さんって方はプライベートで抱きたいってことですよね」
「せやで」
「好きってことですか」
「だから言うてるやん、俺のやって。誰が好き好んで知らん男に抱かせたい思うんや。まぁ、そういうやつもおるけど」
店長はビックリして後ずさった。斎藤にこんな純粋な一面があるとは想像できなかったからだ。風俗を取り締まりやり手の斎藤の噂はどこへ行っても聞くからだ。そして会うたびに知り合った人の名前は変わっていくも本命が一人もいないのも有名だった。そんな斎藤から風俗出したくないや他の奴に抱かせたくないなどとまるで普通の人と同じ感情を言われて衝撃しかなかった。
「変な顔してんで」
「もともとです…俺のって、そのままそういう意味ですか。だったら付き合って自分のだって言って手をだされないようにしたらダメなんですか?」
「それをしたいんやけど美日下に借金あってまずはそれを返さなあかんのよな。しかも、問題は金より何よりおっさんに惚れられそうな顔してん。だからはよシオンみたいにさせたいって周りも思てて、でも俺は嫌やからずっと断ってん」
「そんな稼げそうな子だったら加成さんが黙ってないでしょう。それに仕込みも自分でしたがるはずなんじゃないですか?」
「だからあの手この手を尽くして今までなんとか避けてたんや。それに早よ堅気にしてやらんと。若いし、こんなところで変につまずかせたくない。さっさと足洗わせて俺らと関わらん方がええからな」
店長は今までにない斎藤の話にただただ驚いていた。プライベートで抱きたいだの堅気に戻したいだのヤクザらしからぬ発言に心配した。
「そうですか…気をつけて下さい。その気持ちを利用されかねませんから。横やりなんていうのはいつどこで入るかわかりませんし」
「はぁ…わかってる。けどなかなか上手くやるんは難しいな」
「シオンさんのことまだ引きずってるとか?」
「ないな。引きずってはないけど俺の戒めにはなってる」
「何だかんだNo.1になって実績もありますから向こうも金になるならですね」
「せやな」
「因みにですけど相手は斎藤さん好きなんですよね?」
「全然、嫌い言われてる」
「……抜いてきます?」
「なんでや」
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