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第三十八話 生贄

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 2年の前期が始まって、1ヶ月が経った。

 平穏な日々を過ごしていた。

 今日は王立学院も無いので昼からベンネット伯爵家の屋敷に来ている。

 ベンネット伯爵は仕事の為いないので、リリアとエレネとシアナと一緒に昼食を食べた。

 昼食を食べた後、リリアとエレネとシアナと一緒に庭の東屋でお茶することにした。

 和やかな雰囲気が東屋に流れていた。

 いつもと変わらない日常だった。

 その時の俺はそのまま今日も終わると思っていた。 

 だが、それは違った。

 それは突然聞こえてきた。

 俺は直ぐに戦闘態勢を取った。

 声の出所を探ると紅茶から聞こえてきた。

 いや、水から聞こえてきている。

 「我はシードラゴン。帝国との戦争とやらで、生贄として差し出した純潔な少女をもう一度、我に差し出せ」

 シードラゴンだと。

 ま、まさか、シアナのことか。

 「銀色の髪に水色の瞳をした少女だ。名前はシアナ。今日中に差し出せ。もし、差し出さなければ我の怒りをかうとしれ」

 怒りだとふざけるなよ。

 「クナリア海岸の崖からその生贄の少女を夜までに突き落とせ。それだけが我の怒りを買わない方法だ。早く生贄が来ることを願う」

 そう言い残し、それ以上声が聞こえることは無かった。

 シアナは俺の顔を見てきたのだ。

 「ビリー、私をクナリア海岸まで、連れて行って」

 「な、何故だ?シアナ」

 「わ、私が生贄に、れば、多くの人が、犠牲に、ならずに済む。それに、私はビリー、リリア、エレネ、のことが好き、だから。生きて、欲しい。だから、私が犠牲になれば、解決」

 そう答えたシアナは悲しそうに寂しそうに微笑んだのだ。

 そんな表情を見たくは無かった。

 シードラゴン。

 この罪は重いぞ。

 俺の大切な婚約者のシアナにこんな表情をさせたのだから。

 俺は何も言わず、シアナのことを抱きしめた。

 シアナは驚いた表情を浮かべていた。

 俺は、アナのことを抱きしめてから魔法袋から魔銃と剣を取り出した。

 剣は腰に携え、魔銃を左手に持った。

 「リリア、エレネ、シアナのことを頼む」

 「ま、待って、ビリー。ビリー、じゃなくて、私が行けば、全て解決、するの」

 「シアナ。俺はシアナを生贄に差し出してまで、生きたいと思わないぞ。それはリリアもエレネも同じだ」

 その言葉を聞き、シアナはリリアとエレネの方を向いた。

 そして、リリアとエレネは頷いて答えたのだ。

 それを確認したシアナは俺の方を向き、体を震えていた。

 「ねぇ、ビリー。私、わがまま言っても、いいの?」

 「勿論だ」

 「ビリー、私、死にたく無い。これからも、ビリーと、リリアと、エレネと、過ごしたい。だから、私を助けて、ビリー」

 そう言い、シアナの目からは涙が流れていた。

 大粒の涙が。

 「任せろ、シアナ。俺はシアナをシードラゴンから守ろう。いや、これからもずっと守ろう」

 俺はリリアとエレネとシアナを見てから、転移魔法を使用し、クナリア海岸に向かった。

 
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