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第八話 悪魔の王
しおりを挟む戦闘音を発していたであろうと思われる場所に到着する頃には戦闘が終わっていた。
戦闘後には何かしらの障壁の中で消耗している美女と無傷な悪魔の王的な存在がいた。
その悪魔の王の頭には2本の角が生えていた。
私の角と似ているな。
確かにあれなら悪魔と間違えるな。
悪魔の王は美女の方に向かって、歩き始めた。
まずは離さないとな。
「ツァアシュテールングレーゲン」
破壊の雨が悪魔の王の上に降ったが、持ち前の危機感で避けたのだ。
「誰だ?」
そして、直ぐに俺の方を向いてきた。
「何者か分らないが、俺の知り合いに手を出さないでくれないか?」
「えっ、ハータさん。何で、ここに?」
「昨日ぶりだな。アニス」
俺は警戒している悪魔の王から視線を離し、アニスの隣に移動した。
アニスの方に右手を向けた。
「ヴァッサァシュッツアー」
すると、水がアニスを守護するように包み込んだ。
アニスは驚きの表情を浮べていた。
「アニス、大丈夫だ。これはアニスを守護するためのものだ」
「今、使ったのは魔法か?まさか異世界からの帰還者、いや、異世界人か」
「正解と言えば正解だが、帰還者でもある」
「どう言うことだ?」
「簡単な話だ。俺は帰還者であったが、異世界で死んで魔族という種族に転生しただけだ」
「そんなことがあるなんててな」
悪魔の王は俺の目を見て来た。
「提案だ、珍しき者よ。そこのシスターを見捨てれば、無事に元の世界に帰還させよう。どうだ?破格の条件の筈だ」
俺はアニスの方を向いた。
アニスは懇願するような表情を浮かべていなかった。
「これは私の戦いですからハータさんは気にせず逃げて下さい。私は大丈夫ですから」
アニスは俺を安心させるために笑顔を浮べていた。
その笑顔は何処か悲しそうだった。
そんな笑顔を見て、見捨てられる訳ないだろ。
それに、危機的な状況の女性を見捨てることは出来ない。
そこまで心は捨ててない。
「知り合った仲の女性を。危機的な状況にある女性を見捨てることなんて出来ない。だから、その提案は断る」
「そうか」
悪魔の王は真っ黒な霧の塊を剣状に変化させた。
「では、貴様には死んで貰う。そして、そこのシスターを」
悪魔の王は構えた。
私も魔法剣を抜き、構えた。
「わ、私も援護します。微力ながら」
「頼む、アニス」
「はい」
アニスは両手を握り、祈った。
すると、俺の体が真っ白な光に包まれた。
包まれると体の底から力が湧き出てくる。
これはバフか。
「感謝する。アニス」
出し惜しみは無しだ。
俺は魔法剣に水の魔力を通した。
俺は飛び出し、悪魔の王に斬りかかった。
悪魔の王は何とか自身の剣で守った。
だが、せり負けている。
俺は攻め続けた。
いつもよりもよく動ける。
これなら攻めきれる。
流石にヤバいと察したのか、悪魔の王は何処か軍団を呼んだ。
悪魔の軍団を。
見たことが無い悪魔も含まれていた。
数だけ多いな。
だったら。
俺は攻めながら、ツァアシュテールングルーゲンを唱え、悪魔の軍団は破壊の雨にさらされた。
防ぐ手段はなく、ただ破壊の雨によって体を貫通され、黒い霧となって消え去るだけだった。
悪魔の王は自身の上に黒い霧の障壁を張って、破壊の雨から守っていた。
ちなみに私とアニスはヴァッサァシュッツアーを唱えているので、破壊の雨の影響を受けることは無い。
それからも俺のターンだった。
だが、致命的な傷は与えられてない。
あまり時間を掛けたくない。
そろそろ決めるか。
まずは縛る。
「ヴァッサァザイル」
すると、水の縄が魔王の体を縛り、動きを封じた。
「こ、小癪な」
少しだけの間、止まった。
これなら大丈夫だ。
俺は魔法剣を上に掲げ、天で構えた。
目を瞑り、心を落ち着かせ、目を開いた。
「シュテルネンハオフェン」
すると、遥か上空に何かが現れた。
水で構成された何かが。
それは縛れた悪魔の王に向かって、落ち始めた。
悪魔の王は驚きの表情を浮かべ、固まっていた。
それはアニスも同じだった。
「あ、あれは何だ?あれは何だ!!」
「あれは星屑だ」
「ほ、星屑だと?」
「そうだ。この魔法は俺の中で最強だ。水で構成された星屑を落す。威力は察しの通りだ」
俺はバックステップで、アニスの隣まで移動した。
「安全を期すために離れさせて貰う。そして」
俺は左手を伸ばした。
「ヴァッサァヴァント」
すると、私の前とアニスの前に水の壁が現れた。
「さて、死んでくれ。悪魔の王よ」
悪魔の王は絶望の表情を浮べていた。
やがて星屑は縛られている悪魔の王の上に落ちたのだ。
落ちると同時に砂煙と衝撃波を発生したが、衝撃波は水の壁で守りきった。
砂煙は晴れるまで待つしかない。
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