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3 再会
しおりを挟む「やめてっ!!」
私は、両手を縛られていて抵抗できないため、その場から逃げ出そうとしました。
しかし、縄の端を彼の側近が握っていたため遠くまで離れることが出来なかったのです。
ヨハネス様が縄を思いっきり引っ張ったことで、私は地面に倒れこみました。
雨で地面はぬかるんでいて、再び私の衣服や顔は泥まみれになりました。
私の体は震えていました。
それは雨に濡れて寒かったからではなく、目の前に立つ彼......ヨハネス様への恐怖でした。
「嫌だ.........やだ........」
「どうせお前は奴隷だったんだ。いずれはこうなる運命だったんだよ」
「..........」
「泣いているお前の顔を見ているのは気分が良いな? いつも俺には興味がないと言いたげに済ました顔をしやがって!!」
すました顔などした覚えはありませんでした。
私は.........ただ、諦めていたのです。
ヨハネス様と愛し合うことを。
婚約が結ばれた当初は、彼に好かれるために努力しようとしました。
けれど、幼い頃の彼は平民の私との婚約に心底不満そうで、私が近づくだけで嫌がりました。
その態度には私だって傷ついたのです。
そして年月を重ね、次第に頑張ることを諦めたのです。
「これからお前は死ぬまで俺のおもちゃだ。せいぜい楽しませてくれよ???」
そう言って嫌な笑みを浮かべた彼は、私の服を思いっきり引っ張りました。
ボタンがはじけ飛び、服の間からは下着が見えていました。
ヨハネス様の瞳はまるで獲物を狙う獣のようで、私の体は更に震えました。
彼が舌舐めずりをして私に手を伸ばして来た.........その時です。
私達の頭上の木から、人影が降ってきました。
落ちてくるスピードはとても速く、”助けなくては”と頭の中では思っても体はピクリとも動きませんでした。
しかし、落ちてきた人は空中で器用に身体を回転させ、見事綺麗な着地を決めたのです。
目の前に突然現れた青年にヨハネス様とその側近は目を丸くし、立ち尽くすだけでした。
その青年は私に背を向けていたため顔は見えませんでしたが、背丈はヨハネス様より高く、体つきもがっしりとしていました。
筋骨隆々という訳ではなく、綺麗な身体の線をしていて、身のこなしも華麗なので”軽業師なのかしら”と私は思いました。
その青年は不意にヨハネス様の襟元を掴んだと思うと、彼を軽々と地面に叩きつけたのです。
ヨハネス様も武術の訓練は受けていたので、力が弱い訳ではないはずです。
それなのに、簡単にひっくり返された姿を見て私は目を丸くしました。
そして、青年は片足でヨハネス様の胸元を踏みつけながら、私の方を振り返りました。
その顔を見て、私は更に驚くこととなりました。
彼の顔には見覚えがあったのです。
「レン!?!?」
「よ~、久しぶりだなあ。三週間ぶりー??」
そう言って目の前の青年..........レンはニコリと微笑みました。
少し陽に焼けた肌、淡い碧色の瞳、少しつり上がった目尻と力強い眉が印象的な彼は..............間違いなく私が知っているレンでした。
彼の気の抜けた話し方に、私は少し肩の力が抜け、ホッとしました。
彼は以前キャンメル侯爵領にある村の道で倒れていました。
その村に私は、聖女としての仕事でたまたま訪れていて、帰りがけに彼を発見したのです。
彼の顔色と傷を見て、私はすぐに彼が毒にやられていることに気がつきました。
その村には、とても可愛いキツネのような動物が生息しているのですが彼らは強い毒を持っていて、可愛らしさに油断をして触れようとした旅人がよくその被害を受けて亡くなってしまうのです。
村は貧乏で薬もないため、私は”自分で面倒をみる”と言う約束を条件に神官様に彼を神殿へ運んでもらいました。
そしてそれから一ヶ月ほど、レンは神殿で暮らしていたのです。
神官様達は皆、レンが助かる訳がないとおっしゃっていましたが、レンは異常なほど回復力がありました。
後半の二週間は食事を作るのを手伝ってくれたり、薪を割ったり、神殿の近くの山から山菜を取って来てくれたりしました。
彼との生活はとても楽しく、別れの日は正直とても辛かったのです。
だから再会できたことは素直に嬉しかったのです........。
二度と会えないかと思っていた私は、感動でまた涙を流しそうになってしまいました。
「街がニセ聖女がなんだかんだって騒がしいから、探してみれば案の定.......」
「.........くっ離せ!!」
「あー?何、聞こえねえ~」
ヨハネス様はレンの踏みつけている足から逃れようともがいていましたが、レンが足を置く場所を胸元から首元に変えると大人しくなりました。
ヨハネス様の側近は、彼を助け出そうと剣を引き抜きレンを斬りつけようとしましたが、レンはそれを胸元から取り出した鞘に収まったままの短剣で受け止め、もう一方の足で側近を蹴り飛ばしました。
吹き飛んだ側近はそのまま頭を木の幹にぶつけて気絶してしまいました。
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