オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

セキュリティカメラ

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 コンテナを積んだトラックが大きな道路をひっきりなしに行き来している。フェンスや塀で仕切られている区画をいくつも過ぎて、黒いガントリークレーンが海側に並ぶ景色が見えるようになるとタクシーは目的の場所に着いた。

お金を渡して車を出ると海とガソリンの匂いが鼻につく。

俺は風に靡く自分の髪を見て、カツラを被るのを忘れた事を後悔した。でもそんな事構っている暇は無かった。気持ちが焦る。

早くジェスを助けてやらないと、何が起きるか分からない。

交換条件を突きつけて来たからには人質は無事であると思いたいがあの火事で人が死んでいた可能性もある事を考えると安易に考えない方がいい。

奴等は容赦の無い人間達だろう。

 目的の建物がある場所は道から少し奥まった所にあるゲートを通らなければならない様だ。コンテナを積んだトラックが次々とそのゲートで立ち止まり書類を渡し許可をもらって通って行く。

ゲート以外はフェンスで囲われている区画だからフェンスの上を越えるかゲートを通るかしか選択肢が無さそうだがフェンスは高い。恐らく八メートルはあるだろうか、これを登るのは逆に悪目立ちしてしまう。


積荷に紛れるか、ゲートの人間を洗脳するかどちらかだが時間が惜しい。こうしている間にもジェスは恐怖で震えているだろう。そして彼女に何かあれば自分を許せなくなる。軽い洗脳で済むだろうから体力の消費は左程心配せずに済む。まだ脅迫の電話が掛かってきてそれ程時間が経っていないからきっと警戒態勢も緩い筈だ。

 俺は次々と入ってくるトラックに気をつけながら、三つあるゲートの脇に設置してある灰色のブースに居る人間に話しかけた。英語が通じるといいが――。

「――道に迷ったんだが、君、英語は喋れるか?」

「ああ、喋れるよ。こんなところで道に迷った?珍しい人だね。どこへ行きたいんだ?」

「いや、英語が喋れるならそれでいいんだ。」

 そう告げて俺は洗脳の力を使った。

 力を込めて波動を送る。彼の目は焦点を失い、ぐるりと白目を剥いて俺の言葉の波動で彼の脳に “こ の 男 を 通 す” と、それだけ理解させる。


白目が元に戻り焦点を取り戻すと、男は俺をあたかも存在しないかのように見過ごし、トラックが入ってくるのを待つように前方を見た。

俺はトラックが入る筈の場所から堂々と歩いてポケットからスマホを取り出し、ジェスが監禁されているだろう建屋の場所を確認して足早に進んだ。体力の消費は最小限で済んだと思う。一先ずは無事に敵の陣地に足を踏み入れたが、問題はこれからだ。俺の体力がジェスを救う迄もってくれればいいのだが…。そして俺は焦る余り肝心な事を見逃していた。

 ゲートの一つ一つにはセキュリティーカメラが設置してあった。そのカメラが俺の長い銀髪を記録していた事に気付かなかったのだ。
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