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7.【SCOOP】王太子殿下には想い人がいるらしい【殿下付き侍女の取材記録】

6.

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 二十五日目。


「なるほど……すごいね」


 殿下は念写を見ながら、感嘆の声を上げた。気恥ずかしい。だけど何だか誇らしい。昨日とは少し違った胸の高鳴りに、わたしは大きく深呼吸をした。


「これがあれば、大臣を糾弾できるでしょうか?」

「……そうだね。音声だけの場合より、ずっと優位に話を進められると思う。でも」


 殿下は迷っていらっしゃるようだった。疑惑を真っ向からぶつけ、それでも殆ど意味をなさなかったら。そうなることを恐れているのだろう。


「王家があいつを糾弾するより先に、社会的な信用を落とすことができれば、或いは」


 そう口にしたのはホーク様だった。
 ホーク様は昨日、何かあった時のためにと、殿下のことを上空からずっと護衛していたらしい。わたしが後を付けていることに気づいても、敢えて泳がせていたというのだから、護衛としてどうよって感じはする。


(まぁ、その辺りは今、あんまり考えたくない)


 わたしへの沙汰はまだ下されていない。今日は休日だし、こうして念写をお届けするっていう使命があったから良いものの、どんな処罰が待っているか考えると、怖くて身体が竦んでしまう。


(何て言っても、殿下のスクープを狙っていた人間だもんなぁ、わたし――――)


 その時、わたしの頭の中にふと、ひとつの妙案が浮かび上がった。
 受け入れられるかは分からない。でも、提案するだけの価値は十分あると思う。ゴクリと唾を呑み込み、思い切って口を開く。


「あの……殿下。このネタ、雑誌でスクープする、というのは如何でしょうか?」


 わたしの言葉に、殿下とホーク様は目を丸くして固まった。全く思いもよらない考えだったのだろう。二人は顔を見合わせ、わたしのことを凝視している。


「王家による制裁ではなくとも、民からの信用を失えば、大臣が今の地位に立ち続けることは難しいはずです。わたしの念写、殿下が残した音声があれば、記事は書けます」


 怖い。殿下がどう思っているのか、全然分からない。ドキドキしてるし、今にも膝から崩れ落ちそうだ。
 だけど、大臣たちの密会現場を念写した時の、あの興奮が今も鮮明に残っている。この事実を国中の皆に知ってもらえたら――――昨日からずっと、そう思っていたことも事実だ。


「分かった」


 殿下は一言、そう口にした。ホーク様は驚いたように息を呑んだが、黙って殿下を見つめている。


「マイリーに任せてみよう」


 興奮に胸が高鳴った。


***


 三十日目。

 大臣の汚職疑惑というスキャンダラスな見出しの雑誌が、市場を沸かせた。

 まるでその場にいるかのような臨場感溢れる記事。大臣がお金を受け取る、決定的な瞬間まで掲載されている。

 記事への反響は大きく、やがてそれは国王の耳にも届くこととなり。

 民からの信用を失った大臣は、呆気なく辞任に至ったという。
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