136 / 203
21.病は気から
10.
しおりを挟む
(これは……)
冷たくなったキーテの手のひらに、平べったい石が握らされている。触れただけで瘴気を感じる禍々しい石だ。彼にはこれがなんなのか、一目で分かった。
「――――――全部全部、貴方のせいだったのですね、デルミーラ嬢!」
エルベアトは立ち上がり、デルミーラの元へ迫り行く。
「あっ…………あぁっ………………」
彼のあまりの剣幕に、デルミーラは口をハクハクさせ、その場にぺたりと座り込んだ。何のことか分からない周りの人間は、困惑しつつもエルベアトの道を遮る。
「この石はマルアリア原石。粉末状にしたものを飲めば、吐き気や眩暈、発熱症状を引き起こす、所謂毒の一種です。直接触れればその症状を加速させ、酷いときには死に至らしめる。
デルミーラ嬢……キーテを苦しめていたのは他でもない、あなただ! こんなものを妹に使うなんて信じられない。神の試練!? ふざけないでください!」
デルミーラは顔面蒼白のまま、首を横に振っていた。思わぬ事の真相に、ヒエロニムス伯爵をはじめとした周囲は、完全に言葉を失っている。
「出せ」
「へ……?」
「持っているんだろう? クイニン石を! 早く、出せ!」
クイニン石は、マルアリア原石と対になる石だ。中毒状態を緩和し、解消へと導く力がある。
これまでキーテが体調を崩しつつ、すぐに回復をしていたのは、デルミーラがクイニン石を持っているからに違いない。
「こ……これ…………これよ」
デルミーラはおずおずと左手を広げる。白い小さな石がそこにあった。すぐさまその石を引っ手繰り、キーテの手のひらに握らせる。
「ん……」
キーテが苦し気な唸り声を上げる。けれど次の瞬間、ゆっくり、ゆっくりと彼女の顔に生気が戻っていくのが分かった。
「キーテ!」
「キーテ様!」
目に見えた回復を見せるキーテに、皆が歓喜の涙を浮かべる。
ただ一人――――デルミーラだけが、まるで抜け殻になったかのような表情で、その場に屈み込んでいた。
冷たくなったキーテの手のひらに、平べったい石が握らされている。触れただけで瘴気を感じる禍々しい石だ。彼にはこれがなんなのか、一目で分かった。
「――――――全部全部、貴方のせいだったのですね、デルミーラ嬢!」
エルベアトは立ち上がり、デルミーラの元へ迫り行く。
「あっ…………あぁっ………………」
彼のあまりの剣幕に、デルミーラは口をハクハクさせ、その場にぺたりと座り込んだ。何のことか分からない周りの人間は、困惑しつつもエルベアトの道を遮る。
「この石はマルアリア原石。粉末状にしたものを飲めば、吐き気や眩暈、発熱症状を引き起こす、所謂毒の一種です。直接触れればその症状を加速させ、酷いときには死に至らしめる。
デルミーラ嬢……キーテを苦しめていたのは他でもない、あなただ! こんなものを妹に使うなんて信じられない。神の試練!? ふざけないでください!」
デルミーラは顔面蒼白のまま、首を横に振っていた。思わぬ事の真相に、ヒエロニムス伯爵をはじめとした周囲は、完全に言葉を失っている。
「出せ」
「へ……?」
「持っているんだろう? クイニン石を! 早く、出せ!」
クイニン石は、マルアリア原石と対になる石だ。中毒状態を緩和し、解消へと導く力がある。
これまでキーテが体調を崩しつつ、すぐに回復をしていたのは、デルミーラがクイニン石を持っているからに違いない。
「こ……これ…………これよ」
デルミーラはおずおずと左手を広げる。白い小さな石がそこにあった。すぐさまその石を引っ手繰り、キーテの手のひらに握らせる。
「ん……」
キーテが苦し気な唸り声を上げる。けれど次の瞬間、ゆっくり、ゆっくりと彼女の顔に生気が戻っていくのが分かった。
「キーテ!」
「キーテ様!」
目に見えた回復を見せるキーテに、皆が歓喜の涙を浮かべる。
ただ一人――――デルミーラだけが、まるで抜け殻になったかのような表情で、その場に屈み込んでいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,066
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる