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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-129 どこでも人気のある場所は競争率が高いらしい

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―――海王惑星『ルカドン』とは、その名が示すように海の王と言われるような惑星。
 どのあたりが海の王なのかといえば、この惑星では古今東西、宇宙のあらゆる海の特徴があちこちで凝縮されているらしく、この惑星一つで全宇宙の海を制覇できるといわれているところから、海王惑星の名がついたらしい。

 海の王となると、王道的なものとしてはポセイドンとかの名前になりそうなものなのだが、そちらの名称が付くことなくルカドンの名前になった理由としては…

「流石にそのまま使うわけにもいかなかったか、あるいはこの惑星で信仰されていた海の神様の名前がルカドンだったというべきか…どっちなのか不明というのが、宇宙フィールド内での謎の一つに数えられていると…個人的には後者の方の可能性が高いと思うのだけどなぁ」
【第3の可能性としては、惑星の名前を付ける際にポセイドンの名を付けるのを反対した勢力がいたというのもあるようデス】
「え?そういうのもあるの?」
【ハイ。まぁ、話をものすごく省きますが、ギリシャ神話とかでまぁ色々とやってしまった神でもあるようなので…それで、やむを得ずにこの惑星で信仰されていた神の名前にしたともいう説があるようデス】

 結構テンプレネームになりそうな名前だったのに、何があったのだろうか。
 そのあたりの詳しい逸話も気になるが…放置でいいか。何かしらの理由があったということは、それ相応に納得できるものに違いない。

 そう思いつつも、無事に海王惑星の海に船が着水し、目的地へ到着した。




 今までの星は岩石とか森とか色々とあったが、まともに船として着水できる惑星に来たのは久しぶりかもしれない。
 こういう海原を行くのも船旅に必要な要素だろうし、心なしか久しぶりの海の揺れでグレイ号自体がちょっと喜んでいるような気がするだろう。


「しかし、あちこちの海の濃縮された惑星か…こうやって少し進むだけでも、すでにその片鱗が見えているというかなんというか」
【濃硫酸や毒の海も混ざっているようですが、逆に物凄く清浄な海や海水ですらないようなものなのに海も名が付くようなものでできた部分もあるようですネ】

 前者は存在して駄目なやつだとは思うのだが、どうも後者の海と打ち消しあっているような状態にあるようで、見えはするけれども巻き込まれることはなさそうだ、
 戦艦ならではの別のお約束的なもので、濃硫酸に突っ込んで第三艦橋あたりが溶け落ちることをやらかしそうでもあるが、事前にどのあたりに降りたらいいのか調査しておいたので、危険な部分への着水は免れることができただろう。

…ただまぁ、それでも多少はやらかしてしまう人がいるというか、色合い以外は一見同じような海に見える部分もあるので、誤って着水してそのままデスペナルティへ向かって沈没してしまう船もちらほらあるらしい。

 そしてそういった船が幽霊船へと変わって、さまようだろうが…こっちのグレイ号も元をただせば海賊の幽霊船だったわけだし似たようなものが増えるだけの印象しかない。




 とにもかくにも、ここに来た目的としては遊ぶことにあるのだが、遊べそうな陸地はあるのだろうか。

「本当は直接向かいたいけど、ちゃんとした港に向かって、そこで停船してから手続きをする必要があるのか…」

 昔は直接遊ぶことが可能なリゾート地や海水浴場の様な場所へ着水できたらしいが、人気のある星ということで訪れる人が多くなり、誤って巻き込まれる事故が増えたらしい。
 そのため今は、魔導船がうっかり着水してこないように、人が集う施設周辺には特別製の電磁防壁が施されているようで、ある程度のルートをたどって出入口にある港へいかないとたどり着けないようになっているらしい。

 関係ないと思って、無理やり破って直接降り立とうとした人もいたらしいが…機械惑星であった磁場を参考にして作られた超強力なものらしいので、うかつにやればその場で空中分解・大爆発を起こすこともあるようだ。
 爆発したらその破片が降り注いで余計に危険なことになりそうだが、そこは対策済みらしく、人々がしっかりマナーを守っていけば安全に楽しく遊べる観光地にもなっているらしい。

【ちなみに港のほうで、この惑星で遊ぶために使える水着装備一式が売られているようデス。カタログなんかも用意されており、種類が豊富デス】
「へぇ、男性モノや女性モノ、性別不明や異形の類にまで、幅広くお答えできるようになっているのか…」
【シャゲシャゲェ】
【バルルゥ】
【ユキユッキー】

 情報収集の中で得ることができたカタログを全員で読んでみると、色々な種類の水着が取り揃えられているのが見てわかるだろう。
 人型に近いアリスやコユキが着用できるものはもちろんのこと、下半身が人型ではないマリーやルトたちも着用可能なものが多く、見るだけでも結構楽しいものになっている。
 しかも、装備一式の名がつくこともあってか、並の装備よりも肌面積は大きく減っているはずなのに、中々の防御力を持たせるなどの謎仕様がある装備もいくつかみられるだろう。

「ビキニアーマーとか、そういうのも売っているのか…もしや、ティラリアさんのあれもここで買っているとか?あれ?でも宇宙が解放される前から着ていたような…」
【自作している人から購入したって前に聞きましたヨ】

 装備品として販売される前から、作っているプレイヤーがいたらしい。
 しかも、どうやらこの惑星で販売の活路を見出したのか、やってきて稼ぎに来たプレイヤーもいるようで、その分余計に幅広く対応できているようだ。

「そういうのに情熱を注いで、装備品としてしっかり使えるレベルにまでやり遂げるとは…ある意味変態っぽい様な注ぎ方だけど、欲望戦隊と比べると…まだましな方向では?」
【いえ、むしろ欲望戦隊と比較しては可哀そうなレベルデス。昇華しようが無いですからね…】

 変態戦隊もとい欲望戦隊の面々には、見習ってほしいものかもしれない。
 でも、見習って余計にやばいものを作りかねない技術とかはありそうな気がする…あの変態たちの欲望の底の知れなさを考えると、紐装備とかやりかねん。
 バニー装備に変えるスキルでさえ厄介だったのに、余計に不味いものを生みださないでほしい…MACのスキルで、ギリギリ機械で上書きできそうだけど、まずは全体として浴びることがない様に警戒しないといけないかなぁ。


 そんなことを話しているうちに、船はゆっくりと波の合間を進んで港が見えてきた。
 さて、港で手続きを行いつつ、全員で遊べるように水着装備のほうもしっかり見て回ることにしようかなぁ…

「こういう時に限って、ミーちゃんがいないのがちょっと残念かなぁ。…今度、現実のほうで海に誘ってみようかな」











ババババババン!!ババッバアン!!
「はっ!!今何か、結構なチャンスが到来した気配が!!」
「言っている場合か!!滅茶苦茶撃たれているけど、反撃はどうした!!」
「大丈夫、大丈夫!!さっさと終わらせるために、全力でぶちかますよ!!」

…ハルがミーちゃんに対して、現実のほうで誘おうかなと考えていたそのころ。
 その現実のほうで彼女は今、銃撃戦の中にあった。

「これはもう、無傷でやらないとダメな気がする!!お母さん、やっちゃっていいかな?」
「盛大にやって良いわ!!」
「わかった!!というわけで、ハルとの何か良さそうなもののために、全員ふっとべぇぇぇぇぇぇ!!」
チュドォォォォォォォォォン!!

 そしてそのすぐ後に、どこかの山中…いや、数時間後には山そのものがなくなる場所で、大爆発が起きてしまうのであった…
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