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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-11 ミステリートレイン in 目的地

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…太陽が昇り始め、日光が窓から入り込み、室内をゆっくりと照らしていく。
 この島の日の出の方角や光の強さが計算されてこの宿泊所は建築されており、少し顔にかかったとしても眩しさは感じないように細工が施されている。

 少しづつ室内が明るくなる中、設置されている無重力ベッド上で春とミントはぐっすりと寝ていた。

「んん…ふぁ…あ、ようやくミミック解けた」

 先に目を覚ましたのはミント。
 昨日は変身ドリンクを飲んでミミックの姿になっていたが、個人差もあったせいか少しだけ早く効果が切れていたようで、気が付いたら体を覆う箱のようなボディは消え失せていた。

 ぷかぷかと浮かぶ無重力ベッドの上で軽く手足を動かし、異常がないことを確認する。
 体への影響はさほどないとは思われるが、それでも箱のボディを得ていた以上、何か副作用があったら怖いからだ。

「うん…この様子なら、大丈夫かな。すっかり元に戻っているね」

 異常はなく、むしろこの無重力ベッドの寝心地の良さのせいか、体が軽いほどである。
 浮いているからではなく、なんとなく気分的にも体調的にも調子が良いほどだ。


 無重力ベッドのふよふよ浮かぶ感触は、どちらかといえば長時間使用すると筋力が落ちそうな印象もあったが、備え付けられていた説明書によると正確には宇宙空間での無重力を再現しただけのもので、まったくの別物。
 寝ている間に血行促進やこりほぐしの、睡眠に支障が出ない程度の微細な振動が与えられているようで、使用者の体調を良くする機能があるらしい。

「マッサージ器と快適な安眠道具が合体して生まれたような道具か…こういうのも良いね」

 調子がいいので、本日春と一緒に勝負を挑んだ時に、物凄く良い結果が出せそうな気がした。

 ふと見れば、春はまだ爆睡しているようで、浮きながらもぐっすりとした寝顔を見せている。

「…ふふふ、そうだ、今日の勝負はこれにしようかな?」

 昨日の雪辱を晴らすために、最凶の女装をさせる道具を春に使わせたいなと思っていたが、それではまた昨日の必死過ぎる彼の努力によって覆されるのが目に言えている。
 普通の勝負で一緒に楽しむのは良いが、鬼気迫る勝負だと勝率がかなり下がるだろう。

 ならば、どうすればいいのか。
 影響を与えず、お互いに面白くかつ、そこまで圧倒的な差にならないようなものを考えればいい。
 普通の勝負で良いのだ。無茶苦茶な勝負ほど、面倒なことになりかねないのだから。

「そういえば春は、ちょっと手先が器用だったし私も同じぐらいだよね。だったら、それを活かして…」







「…それで、本日やる勝負は3本勝負になったと?」
「そうだよ!!一回の勝負じゃ時間も短いし、このファンタジックアイランドの様々な道具を楽しむのならば、活用しまくらないと!!だからこそ、さくっと読み込んだこの島のパンフレットから、いくつか勝負するポイントを選んだの!!」

 勝負を一回で終わらせるのも良いのだが、ここは普段の生活ではお目にかかれないような面白い道具が多々あるファンタジックアイランド。
 将来的には市場に流れてくるそうだが、それまで使えないものも多くあるため、それらを思いっきり使えるような勝負をここでやりまくればいい。

「というわけで、一回戦は玩具コーナーの『スーパーロボットプラモ』の制作対決!!様々なパーツを揃えて組み立てて、特設リングで戦うことができる!!基本ベースは同じらしいから、後は作成者の腕前と創意工夫次第なものだよ!!」
「おお…それはそれで面白そうかも!!というか、戦うことができるってことは、動かせるのか」
「そうみたい。あ、でもプラモはちゃんと小さいもので、シミュレーターのような装置にセットして動かすみたい」

 流石に巨大なロボットだと組み立てが難しいし、暴れたときの周辺の被害を考慮するとやりにくかったらしい。
 一応、原寸大サイズ…10mぐらいのものも販売予定らしいが…推定市場価格が億を超えているので、お金持ちの玩具にはなりそう。

 普通に小さい方はまだお手頃価格で、自分で作ったものに乗り込んで操縦できるのもこれはこれでロマンがあるし面白いだろう。

「よし、その勝負で良いよ。ミーちゃんには絶対負けないものを作るからね」
「こっちだって、春に負けないのを作るからね!あ、色塗りとかは思考読み取り型全自動スプレーで簡単にできるから、デザインからこだわることもできるみたい」
「マスキングテープ無しで、塗り分けもできるのか…ああ、しかも難しかったら専用機械を使用して自動でやってくれるのもあるのか」

 デザインや組み合わせなどその人のセンスが問われそうな勝負だが、お互いにそこそこの腕前があることぐらいは理解しあっている。
 だからこそ、負けることがない様に様々な対策も予想して上を行くような仕掛けも組み込み、作成していくのであった…

「んーでもロマンの追及もしたくなるんだよなぁ…」
「やるならば、そこを隙と捉えて攻められるようなものにしたほうが良いのかな?春の好みを考えると、絶対にこれとか…」










…勝負に対して春たちが力を注いでいたそのころ。

 ファンタジックアイランドの地下…そこに作られた空間に、集結するものたちがいた。

『結局、生き残れたのはこれだけか…』
『もう少し多く見積もりたかったが…事前の予想よりもはるかに下回ったな』

 生き残っている駒の数は、もうだいぶ少なくなっている。
 このままでは予定している作戦に必要な人数を失う可能性も多くあり、下手をすればそのまま全滅という可能性もあるだろう。

『防衛手段が多かったが…それでも、ここまで残ったことを喜ぶしかないな』

 彼らが得たデータによれば、海底で起きた襲撃はここの技術によるものではない。
 どうやらアルケディア・オンライン上に存在するとされていた存在が、どういうわけかこの世界に一部だけ姿を現したことによるものらしい。

 たった一部、されどもその秘めたる力は科学を上回り、人知を超えた存在だったのだろう。
 なぜ、奴らの味方をしたのかは不明だったが…この様子では協力関係にあるとみていいだろう。

『だが、引き返せない。我らに進む道は死か栄光あるのみ』


 帰るまでにも障害はあるだろう。
 けれども、もはや引き換えない場所まで来てしまったので、ここからは進むしかない。
 その先がたとえ茨の道だろうとも…もう、やるしかないのだ。


『紅い月を、手にするのみ』

 どうして狙うのか、なぜ必要なのかまではわからない。
 ただ、彼らを動かすのは自身の命を守るため…投降や降伏でも伸びそうなものなのだが、その選択は与えられないようにされているため、先へ向かうのであった…
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