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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-18 人ならざるものたちは、割と身近に多い気がする

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…データの状態が安定するまで、数日間は現実世界に顕現したままのカイニス。
 運営側のミスと言えるようなものでもあるため、いくつかのフォローや戻った後のお詫びなどがあることも確認しつつも、これからどうするのかという話になる。

「まぁ、普通に家にずっとこもってくれたら何も問題はない…か?」
「いや、流石にちょっとはご近所さんから中が見えるだろうし、そこに般若の仮面をつけた着物の人目撃情報が出たら、ちょっとした怪談物件の噂が立つかもよ?」
【怪談?オレノ見タ目ハ普通ダト思ウケドナ】
「「いや、普通じゃないから」」

 どこの世界に、そんな見た目の人が住まう家があるのやら。
 いや、でも考えたらそんな人がいる家も世の中には案外いたり…いやいや、無いだろう。

「というか、そのお面って取れないの?せめてそれだけでも外せばまだ、変な噂が立つこともないと思うけどな。見た感じ、呪われたお面とかではないなら外せそうだとは思うけど」

 怪談話などで、いたずらや嫉妬などの理由によってお面をつけて外れ無くなる怖いものが多いだろうが、流石にこの現代社会にそんな呪いの装備があるとは思わない。
 オンラインの世界だと一応呪い装備はあるといえばあるのだが…女神の眷属がそもそも、自ら呪いに塗れた装備を付けるだろうか?呪いの女神とか言う名前なら可能性を否定できないが…

【ム?コレ、オレノ冷却装置ニナッテイル。戦闘スルト熱クナルカラ冷ヤスノニチョウドイイ仮面ナンダケド…戦闘ナイシ、主ガソウ命ジルノデアレバ、外ソウ】

 呪いのお面ではなかったようで、取り外しにかかるカイニス。
 そういえば、その素顔はどうなのかまだ見ていなかったので、気になるところだが、さてどうなのやら。

【ヨイショット】
キュポンッ
「吸盤を外すような感じなのか」

 ぐっとお面の端をつかんだと思えば、意外なはず仕方をしたカイニス。
 紐で固定しているわけではなく、吸着式だったようで、軽快な音で外れた。

 出てきた顔を見れば、黒き女神の眷属とあってか似たような顔つきである。
 いくらか凛々しく整えられており、黒目黒髪だから外人らしさもないようだが…

「…黒き女神の、男装版のような顔つき?いや、僕自身は男なんだけど」
「うーん、美しさの方向性がどちらかといえば凛々しいほうなんだけど…男の子、女の子、どっちなの?」

 なんというか、性別問題が出てきたような気がする。
 昨今の状況としてはコンプライアンス的なところにツッコミを入れられる可能性があるが、これはどちらとみてもおかしくはないだろう。
 まぁ、男だろうが女だろうが問題はないと思いたいが…さて、どっちだこれ。

「え、これどっちだろ、ミーちゃん」
「春、そこは確認していなかったの?」
「確認不足だったし、現実世界でステータスを見れないよ」

 全体的にバランスよく整い過ぎて、どっちなのかが分からない。
 数日間しか現実世界にいないのならば気にすることが無いのではというツッコミがありそうだが、人というものは一度気になるモノが出てきたら、そちらに意識を向けてしまうもの。
 集中したいことがあっても、盛大に邪魔になるだろう。

 でも、こういう時の確認方法とはいったい何をすればいいのか。

「というわけで、ミーちゃん。確認お願い」
「なんで私!?」
「だって、こういう時もしも女の子だったら、僕の方だと気まずいじゃん!!」
「いやいやいや、ハルの眷属だから大丈夫でしょ!!むしろ、確認して男の子だったら、私のほうが気まずいよ!!」

 単純明快な方法があるが、それを直接やるのは厳しいところ。
 本人に聞けば良いのではと思うかもしれないが、これでうっかり何かの地雷を踏んでしまう可能性もあるので怖いのだ。

「だってミーちゃん覚えているよね!!昔、ディビッシュさんのところでそういやどっちだって話になって」
「覚えているけど、今それ思い出したくないって!!あれ、春が疑問に思ったせいで私もどうなのか気になって、お互いにやらかして盛大に雷を落とされた奴じゃん!!」

 過去に、そういう経験があるのでうかつに聞き出しづらい。
 女神の眷属であれば、黒き女神のスキルがある僕が効いても大丈夫だとは思いたいが、こういう微妙過ぎるデリケートっぽい部分に踏み込む勇気はない。

【ドウシタノ?主】
「えっとその…ああ、はっきり言ったほうが良いか。カイニス、男の子なのか女の子なのか、どっちなの?」
【オスメス?…ワカラン】
「どういうこと?」
【オレ、眷属前アンノウンモンスター…色々、ゴチャマゼサレテタ。ナノデ、自意識トシテハドッチナノカワカッテナイゾ】

 かくかくしかじかと話してもらうと、どうやら眷属になる前の状態…ミイラオーガの時には既に色々と改造されていたのもあってか、自己意識に関しては不明瞭な部分があったらしい。
 眷属化されるにあたってプログラムの大部分が書き換わり、どうなっているのかは把握できているところもあるが…それでも、わからないところはわからないままのようだ。

「そうなると、ここは穏便に済ませる形だとオンラインの世界に戻ってもらってから、ステータス確認のほうが良いかなぁ…」
【性別不明、主ニ迷惑、カケテシマウナラ申シ訳ナイ】
「気にしなくていいよ。わからないならわからないままで別にいいって。まぁ、そう扱うと風呂の時は…分かれて入ってもらうほうが良いか」
【風呂?ナラ、オレ、主ノ背中流スヨ。眷属タルモノ、一緒ニハイリ尽クスベキダカラナ!!】
「わからない状態で入ってもらうと、問題なんだけど…」
「これは普通に、確認したほうが良いかも…はぁ、仕方がない。春、私が確認してくるよ。カイニス、ちょっとこっちへ…」
【ン?】

 あきらめたようで、ミーちゃんがカイニスを連れて別室へ入った。
 シュルシュルと衣擦れの音がして十数秒後…どうやら、判明したらしい。


「…カイニス、絶対に春と一緒に入っちゃだめだからね!!水着を着てとかなら百歩譲っても良いけど、アウトだよ!!」
【何ガダ?】
「全部だよ!!ああもぅ、着物を着ていたりして体形が見えなかったのもあって油断したかも…春、聞こえているなら絶対にカイニスと風呂に入るようなことはやめてね!!」

 何かこう、聞こえてくる内容だけで察せてしまった、
 とりあえず、当面の間の性別問題は解決できたようで、一歩進めたと思うのであった…


バタン!!
【ア、ソウダ主ー!折角脱イダカラコノママ風呂入ロウゼー!】
「きゃぁぁぁぁぁ!?カイニス、服、下、というか全部!?」
「春が女の子みたいな悲鳴だしてどうするの!?後、カイニス、人の話を全然聞いていなかったでしょ!?そして春は見るなぁぁぁ!!」
ぶすぅっ!!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」

…数日間、持つかなぁ。

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