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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~
ver.5.1-44 隠し通すのは難しい
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―――月の上に、謎の船がいる。
そんな話が出てきても、大抵の人は突拍子もない眉唾の話だと思うだろう。
このご時世に、そんな怪しいものが出てくるはずがないだろうと…
「…思いたかったですよね、皆さん」
「ああ、まったくその通りだ」
「何事もなければ、放置したかったが…」
「「「それぞれの国の衛星で、ばっちり目撃したからな…」」」
はぁぁぁっと溜息を吐くのは、この非公式の会談の場に集められた、各国のお偉いさんたち。
お互いに出し抜きたい思いもあるのだが、出てきたモノがツッコミどころ満載過ぎて、協力し合うことにしたのだが…こんなことならば、見つけたくなかったなぁと思う気持ちもあった。
「本日未明、月のある場所にて、衛星で捉えてしまったコレだが…それぞれ、どう思う?」
「盛り上がりを見ると、隕石でも突き刺さったのかなと思いたいが」
「月への衝突報告は特にないし」
「明らかに人工物が隠蔽されているとしか見えないよな…」
「「「そうだよな…」」」
何か宇宙人でもこっそりやってきているのだろうか。
やってきているならそれはそれで、もうちょっと人目に付かないようにしてほしいと心の底から彼らは思う。
お互いに、未知のものに接触してその技術を願わくば自国にもたらしてもらい、より発展させたいという思惑はあるが、いざ出てきてしまうとどうすれば良いのかと思うところもある。
それに、平和的な方向へ舵を切りたくとも、人によっては良からぬ方向へもっていこうとしているのもあり、情報統制やらパワーバランスやら、何かと大変な目に遭うのである。
当の月にいる本人たちは知らぬところで、非常に苦労させられてしまう大人たちも存在しているのだ。
悪人ばかりがはびこる世の中でないのが幸いしているというべきなのか、それとも苦労人ばかりがいつの間にか上に立つ羽目になっていたというべきか…世の中、どうなっているのだろうか。
そんな胃薬がバカ売れしそうな場所は放置しておくとして、ハルたちはハルたちで今、困ったことにもなっていた。
「…修理の材料が足りない?」
【ハイ。ある程度の予備部品を積載しているので、対応はできていたのですが…一部、材料が足りなくて修理を中断せざる得ない状態デス】
苦労している大人たちのことは知ったことではないが、さっさと修理を終えてオンラインの世界に戻ったほうが良いと判断していたが、トラブルに見舞われた。
以前、魔界のさらにヤバい場所に落下した教訓をもとに、どういう状況下にあっても可能な限り船を直せる材料を積んでいたはずだったが…その材料の積んでいた部分が今回の緊急ワープで一部破損してしまい、必要な部品が少し足りなくなっていたのである。
【動かせないこともないのですが、冷却装置の部分なので航行に支障が出かねないのデス】
「コユキの雪兵召喚で、どうにか持たせられないか?」
【計算してみましたが…駄目ですネ。特殊素材の放熱板で対応している個所で、水濡れ厳禁なのデス】
「そうか…溶けたら一応、濡れるもんな…」
グレイ号は元は帆船だったはずだが、今は立派な宇宙戦艦。
大きく変貌したこともあって、内部はメカメカしい構造になっているのだが、そういう機械にはつきものの冷却装置の一部が仕えないと不味いらしい。
【解決策がないこともないのですが…どうなるのだろうかと、ちょっとわからないのデス】
「というと?」
【放熱板…実は、現実のほうの、家の倉庫に使える試作版があるので、それをどうにか月に持ってこられたら、修理は可能だと思われマス】
「なんでそんなものが、家の倉庫にあるの?」
【冷却システムがなかなかいい感じでしたので、エアコンいらずの夏場の涼しい部屋を提供できるかと思いまして…まぁ、まだ計画していた途中でしたので、倉庫に眠らせているのですがネ】
どうも現実のほうの、家の倉庫に修理できる材料があるらしい。
だがしかし、そんなものをどうやって月にまで持って来いというのか。
「そもそも、今いるココが現実の世界でもあるからなぁ…この状態でログアウトしたら、多分家に戻れる…よね?」
「そういえば、どうなっているんだろうか、コレ」
思いたくなかったので目をそらしていたのだが、この状況は今、正確に言うとどういうことになっているのだろうか。
オンラインの世界のアバターが現実世界に出てきているようなものなのだが、現実世界の肉体に何かヤバい影響が出ていないかと不安になる。
「私は真祖だから、灰になっていても平気だけど、ハルの場合は一応今は人間だしねぇ」
「『一応今は』って入れないでほしい…僕、人間だよ」
「【女神の肉体にもなれるのに?】」
「…」
その言葉で言われたら、何も言い返せない。
まぁ、修理がここで滞るのも何なので、まずはその解決策をどうにかできるようにしたいところ。
「というか、一旦ログアウトしたほうが良いのかも…ほら、下手するとニュースになっているの可能性もあるし、確認しないとね」
「それもそうか…ねぇ、ロロ。このまま僕らがログアウトした場合、ここはどうなるの?」
普段のオンラインのログアウトの場合、アバターはオンラインの世界でデータとして保存されるので、特に問題はないはず。
だがしかし、この現実世界に出てきているということは実体化しているということであり、通常のログアウトと何か異なる点が出てもおかしくはない。
【うーん…計算してみましたが、問題ないですネ。グレイ号自体が、大きなハウスシステムの役割を果たすようですし…ログアウトしても、ここにゴロンっとアバターが転がって放置されるわけではないデス。おそらく、普通にログアウトできる状態だと思われマス】
「そうか…なら、ちょっと試してみようかな」
ここで修理が進まなければ意味がないし、どうにかするためには環境を少し変えて気持ちを切り替えたほうが良いのかもしれない。
そう思い、僕らは一旦ログアウトを試してみることにする。
「「いっせーので…ログアウト!!」」
ミーちゃんと一緒にタイミングを合わせ、同時にログアウトを行ってみた。
これで、何事も問題が無ければ、普通にログアウトできるはずだが…
「…うん、良かった、普通にできたようだね」
「肉体に支障なし、変に分解されているとか、そういう状態になってなくてよかったね」
…確認したところ、どうやら無事にログアウトできたようで、いつもの家の中に戻っていた。
確認のためニュースを付けてみたが、いつもの通りの番組ばかりで、緊急特番や速報、ニュースの類は出ていないようである。
「そうだ、それと修理道具の確認も…倉庫にあるって言うけど、見てみないとね」
「あるとは思うけど…どうやって、月へもっていくの?」
ごもっともな疑問である。
ごく普通の平凡な一般家庭に、月にまで資材を届ける手段があるだろうか。
いや、あるといえば…あるかもしれない。
「…考えたら、黒き女神特殊形態で、普通に運べるな。実体のあるものだとしても、いったん電子化して、電子の海経由で月のグレイ号へ向かえば、そこで出して再度実体化させれば良いんじゃないかな…?」
「その手があったね。…それが出来たら、もうごく普通の平凡な一般人と言えなくなっている気がするけど」
「気がする、じゃないね。…悲しいけど、一般人の道からダイナミックにぶっ飛んで暴走しているよ…」
手段を確保できたのは良いだろう。
だがしかし、それとは別に色々な意味で悲しい現実も見せられてしまうのであった…
「そういえば春、その黒き女神特殊形態って、電子空間があればどこにでも行けるの?」
「やろうと思えば、世界中どこにでもかな。わかりやすく言えば、某どこにでも行けるドアが現実にあるか電子の海にあるかの違い程度だもん」
「だいぶ、某青狸の便利道具に近い力なのは良いね…」
…空を飛んで、どこにでも向かえて…そう考えると、そうかも。流石に時を超えたり、サイズを変えたりは厳しい…のか?
そんな話が出てきても、大抵の人は突拍子もない眉唾の話だと思うだろう。
このご時世に、そんな怪しいものが出てくるはずがないだろうと…
「…思いたかったですよね、皆さん」
「ああ、まったくその通りだ」
「何事もなければ、放置したかったが…」
「「「それぞれの国の衛星で、ばっちり目撃したからな…」」」
はぁぁぁっと溜息を吐くのは、この非公式の会談の場に集められた、各国のお偉いさんたち。
お互いに出し抜きたい思いもあるのだが、出てきたモノがツッコミどころ満載過ぎて、協力し合うことにしたのだが…こんなことならば、見つけたくなかったなぁと思う気持ちもあった。
「本日未明、月のある場所にて、衛星で捉えてしまったコレだが…それぞれ、どう思う?」
「盛り上がりを見ると、隕石でも突き刺さったのかなと思いたいが」
「月への衝突報告は特にないし」
「明らかに人工物が隠蔽されているとしか見えないよな…」
「「「そうだよな…」」」
何か宇宙人でもこっそりやってきているのだろうか。
やってきているならそれはそれで、もうちょっと人目に付かないようにしてほしいと心の底から彼らは思う。
お互いに、未知のものに接触してその技術を願わくば自国にもたらしてもらい、より発展させたいという思惑はあるが、いざ出てきてしまうとどうすれば良いのかと思うところもある。
それに、平和的な方向へ舵を切りたくとも、人によっては良からぬ方向へもっていこうとしているのもあり、情報統制やらパワーバランスやら、何かと大変な目に遭うのである。
当の月にいる本人たちは知らぬところで、非常に苦労させられてしまう大人たちも存在しているのだ。
悪人ばかりがはびこる世の中でないのが幸いしているというべきなのか、それとも苦労人ばかりがいつの間にか上に立つ羽目になっていたというべきか…世の中、どうなっているのだろうか。
そんな胃薬がバカ売れしそうな場所は放置しておくとして、ハルたちはハルたちで今、困ったことにもなっていた。
「…修理の材料が足りない?」
【ハイ。ある程度の予備部品を積載しているので、対応はできていたのですが…一部、材料が足りなくて修理を中断せざる得ない状態デス】
苦労している大人たちのことは知ったことではないが、さっさと修理を終えてオンラインの世界に戻ったほうが良いと判断していたが、トラブルに見舞われた。
以前、魔界のさらにヤバい場所に落下した教訓をもとに、どういう状況下にあっても可能な限り船を直せる材料を積んでいたはずだったが…その材料の積んでいた部分が今回の緊急ワープで一部破損してしまい、必要な部品が少し足りなくなっていたのである。
【動かせないこともないのですが、冷却装置の部分なので航行に支障が出かねないのデス】
「コユキの雪兵召喚で、どうにか持たせられないか?」
【計算してみましたが…駄目ですネ。特殊素材の放熱板で対応している個所で、水濡れ厳禁なのデス】
「そうか…溶けたら一応、濡れるもんな…」
グレイ号は元は帆船だったはずだが、今は立派な宇宙戦艦。
大きく変貌したこともあって、内部はメカメカしい構造になっているのだが、そういう機械にはつきものの冷却装置の一部が仕えないと不味いらしい。
【解決策がないこともないのですが…どうなるのだろうかと、ちょっとわからないのデス】
「というと?」
【放熱板…実は、現実のほうの、家の倉庫に使える試作版があるので、それをどうにか月に持ってこられたら、修理は可能だと思われマス】
「なんでそんなものが、家の倉庫にあるの?」
【冷却システムがなかなかいい感じでしたので、エアコンいらずの夏場の涼しい部屋を提供できるかと思いまして…まぁ、まだ計画していた途中でしたので、倉庫に眠らせているのですがネ】
どうも現実のほうの、家の倉庫に修理できる材料があるらしい。
だがしかし、そんなものをどうやって月にまで持って来いというのか。
「そもそも、今いるココが現実の世界でもあるからなぁ…この状態でログアウトしたら、多分家に戻れる…よね?」
「そういえば、どうなっているんだろうか、コレ」
思いたくなかったので目をそらしていたのだが、この状況は今、正確に言うとどういうことになっているのだろうか。
オンラインの世界のアバターが現実世界に出てきているようなものなのだが、現実世界の肉体に何かヤバい影響が出ていないかと不安になる。
「私は真祖だから、灰になっていても平気だけど、ハルの場合は一応今は人間だしねぇ」
「『一応今は』って入れないでほしい…僕、人間だよ」
「【女神の肉体にもなれるのに?】」
「…」
その言葉で言われたら、何も言い返せない。
まぁ、修理がここで滞るのも何なので、まずはその解決策をどうにかできるようにしたいところ。
「というか、一旦ログアウトしたほうが良いのかも…ほら、下手するとニュースになっているの可能性もあるし、確認しないとね」
「それもそうか…ねぇ、ロロ。このまま僕らがログアウトした場合、ここはどうなるの?」
普段のオンラインのログアウトの場合、アバターはオンラインの世界でデータとして保存されるので、特に問題はないはず。
だがしかし、この現実世界に出てきているということは実体化しているということであり、通常のログアウトと何か異なる点が出てもおかしくはない。
【うーん…計算してみましたが、問題ないですネ。グレイ号自体が、大きなハウスシステムの役割を果たすようですし…ログアウトしても、ここにゴロンっとアバターが転がって放置されるわけではないデス。おそらく、普通にログアウトできる状態だと思われマス】
「そうか…なら、ちょっと試してみようかな」
ここで修理が進まなければ意味がないし、どうにかするためには環境を少し変えて気持ちを切り替えたほうが良いのかもしれない。
そう思い、僕らは一旦ログアウトを試してみることにする。
「「いっせーので…ログアウト!!」」
ミーちゃんと一緒にタイミングを合わせ、同時にログアウトを行ってみた。
これで、何事も問題が無ければ、普通にログアウトできるはずだが…
「…うん、良かった、普通にできたようだね」
「肉体に支障なし、変に分解されているとか、そういう状態になってなくてよかったね」
…確認したところ、どうやら無事にログアウトできたようで、いつもの家の中に戻っていた。
確認のためニュースを付けてみたが、いつもの通りの番組ばかりで、緊急特番や速報、ニュースの類は出ていないようである。
「そうだ、それと修理道具の確認も…倉庫にあるって言うけど、見てみないとね」
「あるとは思うけど…どうやって、月へもっていくの?」
ごもっともな疑問である。
ごく普通の平凡な一般家庭に、月にまで資材を届ける手段があるだろうか。
いや、あるといえば…あるかもしれない。
「…考えたら、黒き女神特殊形態で、普通に運べるな。実体のあるものだとしても、いったん電子化して、電子の海経由で月のグレイ号へ向かえば、そこで出して再度実体化させれば良いんじゃないかな…?」
「その手があったね。…それが出来たら、もうごく普通の平凡な一般人と言えなくなっている気がするけど」
「気がする、じゃないね。…悲しいけど、一般人の道からダイナミックにぶっ飛んで暴走しているよ…」
手段を確保できたのは良いだろう。
だがしかし、それとは別に色々な意味で悲しい現実も見せられてしまうのであった…
「そういえば春、その黒き女神特殊形態って、電子空間があればどこにでも行けるの?」
「やろうと思えば、世界中どこにでもかな。わかりやすく言えば、某どこにでも行けるドアが現実にあるか電子の海にあるかの違い程度だもん」
「だいぶ、某青狸の便利道具に近い力なのは良いね…」
…空を飛んで、どこにでも向かえて…そう考えると、そうかも。流石に時を超えたり、サイズを変えたりは厳しい…のか?
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