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番外編 嶋田観月のつまみ食い②
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部活もなければ予定もない、そんな休みも当然ある。明日がそうだ。
そういう日は決まって、どう過ごせばいいのか悩むことになる。時間をつぶすのが下手なのかなあ、僕。
いつも通りの時間に起きて、朝食を済ませ、部屋に戻る。そして、過ごし方に悩んでいるうちに、一日が終わるんだ。
「することないよなあ……」
課題も終わってるし、好きに時間を使っていいはずなのに、どうもこう、なにも思いつかない。忙しくしてる時の方が、やりたいことがたくさんあるように思う。
「お出かけ日和なんだよなあ、明日」
夜、自室でぼんやりと明日の天気予報を思い出す。まだ寝る時間ではないが、布団に寝転がった。
行きたいところも特にないので、まあ、散歩でもしようかな。せっかくだし。で、その後どうしよう。
そう思って寝返りを打った時、スマホが鳴った。春都だ。
「もしもし、春都」
『ああ、観月。今大丈夫か?』
「全然問題ないよ。どうしたの?」
電話の向こうの春都は、少し困っている様子だった。
『実はさ、博物館の招待券をもらったんだ。親が。でも二人とも行く暇ないし、じいちゃんもばあちゃんもお店空けらんないからって、俺に回って来てさ』
「うんうん」
『招待券、二枚なんだよ。で、展示期間がもうすぐ終わるし、行くとしたら明日ぐらいしかなくて。せっかくだし、見に行きたいと思ってんだけど、よかったら一緒にどうだ?』
おや、これは珍しい。春都から誘ってくるとは。
これは行かずにはいられまい。展示内容もなんか面白そうだったし。
「いいよいいよ~、大歓迎」
『そうか、よかった。それじゃあ時間なんだが……』
開館と同時に行った方が人が少ないらしい。確かに、展示は落ち着いて見たいものである。
途端に明日が楽しみになってきたなあ。いろいろ準備しようっと。
待ち合わせ場所であるバス停に行けば、春都はもう来ていた。
「おはよー春都。今日は招待どうも~」
大きなロゴが入った白シャツにシンプルな黒のパーカー、カーキのカーゴパンツという私服姿の春都は、こちらを見て少し笑って手を振った。ショルダーバッグには必要最低限の荷物しか入れてないらしい。
「おはよう。急に悪いな」
「全然。むしろ良かったよ。暇だったし」
「そうか?」
バスは案外空いていた。
「この手の展示を一緒に楽しめそうなの、観月ぐらいしかいなくてな」
春都は背もたれに身を預けながら言った。
確かに。春都の交友関係をぼんやりと辿ってみるが、この手の展示をおもしろいと思うような人はいなさそうだ。
「ゲームでさ、こういうのモチーフにしてるのもあるから、結構楽しみだよ」
「そうそう。なんかコラボ企画もあるみたいで……」
博物館まではそこそこ距離があったけど、話していたらあっという間だった。
久々に春都とレールバスで会ったとき、春都が向かっていた博物館とはまた違う場所だ。建物は新しくて、きらきらしている。動く歩道もあるらしい。近くには天満宮もあるから、周辺にはお店も充実していた。
「わ、このチケット、普通に買うなら結構な値段するんだね」
「本当だ。すごいな」
人が少ない博物館は、なんだかワクワクする。このまま貸し切り状態で楽しめたらいいのになあ、なんて。
「……展示場所はどっちだ?」
「こっち。ほら、パネル出てる」
「ああ、そっちか」
特別展示の場所には、コラボしているゲームのキャラクターのパネルも展示されていた。
「写真撮ろ! 写真!」
「そうだな」
なんでも、中の展示も一部は撮影していいらしい。なんて素敵な。
なんかもう入る前からワクワクしてる。実物見たらどうなっちゃうんだ。
「すごかったなあ」
昼食後、天満宮の参道を歩いていたら、春都がしみじみとつぶやいた。
「ね、すごかったね」
薄暗い展示室の中で見た展示物はもう、なんか、すごかった。昼ご飯の時にさんざん話したはずなのに、最終的に「すごかった」にしか着地しないんだ。
「さて、これからどうしようか」
春都はスマホで時間を確認する。
「帰ってもいいけど……」
「もうちょっと楽しみたいよね」
せっかくここまで来たんだし。
「俺、あれ食べたい。餅」
春都が言う餅とは、この辺の名物だ。いろんな店が出していて、店ごとに味が結構違う。
「いいね、そうしよう」
カフェに入るのもいいけど、食べ歩きや店先で食べるのもいい。
それぞれ好きな店が違ったので、各々で買って、食べ歩きすることにした。
「いただきます」
サクッとした表面に、とろりと溶けるような餅の食感。あんこは結構甘くて、粒々食感がたまらない。
「その店のあんこって、結構甘いだろ?」
「うん。好きなんだー、この甘さ」
「そうか。今度はそっちも食べてみたいな」
と、春都は言って、自分の餅を一口食べた。なんかそっちもうまそうに見えてくる。
「せんべい屋さんもあるよね」
「買うか」
「あはは。言うと思った」
まさか、退屈になんとなく過ごすはずだった休日が、こうも楽しくなるとはなあ。
ぼんやり過ごすのもいいけど、こうやって充実した休日が過ごせるのは、とてもいい気分だな。
さて、せんべい屋に入る前に餅を食べ終わっておかないと。
なんて、もうあと一口なんだけどね。
「ごちそうさまでした」
そういう日は決まって、どう過ごせばいいのか悩むことになる。時間をつぶすのが下手なのかなあ、僕。
いつも通りの時間に起きて、朝食を済ませ、部屋に戻る。そして、過ごし方に悩んでいるうちに、一日が終わるんだ。
「することないよなあ……」
課題も終わってるし、好きに時間を使っていいはずなのに、どうもこう、なにも思いつかない。忙しくしてる時の方が、やりたいことがたくさんあるように思う。
「お出かけ日和なんだよなあ、明日」
夜、自室でぼんやりと明日の天気予報を思い出す。まだ寝る時間ではないが、布団に寝転がった。
行きたいところも特にないので、まあ、散歩でもしようかな。せっかくだし。で、その後どうしよう。
そう思って寝返りを打った時、スマホが鳴った。春都だ。
「もしもし、春都」
『ああ、観月。今大丈夫か?』
「全然問題ないよ。どうしたの?」
電話の向こうの春都は、少し困っている様子だった。
『実はさ、博物館の招待券をもらったんだ。親が。でも二人とも行く暇ないし、じいちゃんもばあちゃんもお店空けらんないからって、俺に回って来てさ』
「うんうん」
『招待券、二枚なんだよ。で、展示期間がもうすぐ終わるし、行くとしたら明日ぐらいしかなくて。せっかくだし、見に行きたいと思ってんだけど、よかったら一緒にどうだ?』
おや、これは珍しい。春都から誘ってくるとは。
これは行かずにはいられまい。展示内容もなんか面白そうだったし。
「いいよいいよ~、大歓迎」
『そうか、よかった。それじゃあ時間なんだが……』
開館と同時に行った方が人が少ないらしい。確かに、展示は落ち着いて見たいものである。
途端に明日が楽しみになってきたなあ。いろいろ準備しようっと。
待ち合わせ場所であるバス停に行けば、春都はもう来ていた。
「おはよー春都。今日は招待どうも~」
大きなロゴが入った白シャツにシンプルな黒のパーカー、カーキのカーゴパンツという私服姿の春都は、こちらを見て少し笑って手を振った。ショルダーバッグには必要最低限の荷物しか入れてないらしい。
「おはよう。急に悪いな」
「全然。むしろ良かったよ。暇だったし」
「そうか?」
バスは案外空いていた。
「この手の展示を一緒に楽しめそうなの、観月ぐらいしかいなくてな」
春都は背もたれに身を預けながら言った。
確かに。春都の交友関係をぼんやりと辿ってみるが、この手の展示をおもしろいと思うような人はいなさそうだ。
「ゲームでさ、こういうのモチーフにしてるのもあるから、結構楽しみだよ」
「そうそう。なんかコラボ企画もあるみたいで……」
博物館まではそこそこ距離があったけど、話していたらあっという間だった。
久々に春都とレールバスで会ったとき、春都が向かっていた博物館とはまた違う場所だ。建物は新しくて、きらきらしている。動く歩道もあるらしい。近くには天満宮もあるから、周辺にはお店も充実していた。
「わ、このチケット、普通に買うなら結構な値段するんだね」
「本当だ。すごいな」
人が少ない博物館は、なんだかワクワクする。このまま貸し切り状態で楽しめたらいいのになあ、なんて。
「……展示場所はどっちだ?」
「こっち。ほら、パネル出てる」
「ああ、そっちか」
特別展示の場所には、コラボしているゲームのキャラクターのパネルも展示されていた。
「写真撮ろ! 写真!」
「そうだな」
なんでも、中の展示も一部は撮影していいらしい。なんて素敵な。
なんかもう入る前からワクワクしてる。実物見たらどうなっちゃうんだ。
「すごかったなあ」
昼食後、天満宮の参道を歩いていたら、春都がしみじみとつぶやいた。
「ね、すごかったね」
薄暗い展示室の中で見た展示物はもう、なんか、すごかった。昼ご飯の時にさんざん話したはずなのに、最終的に「すごかった」にしか着地しないんだ。
「さて、これからどうしようか」
春都はスマホで時間を確認する。
「帰ってもいいけど……」
「もうちょっと楽しみたいよね」
せっかくここまで来たんだし。
「俺、あれ食べたい。餅」
春都が言う餅とは、この辺の名物だ。いろんな店が出していて、店ごとに味が結構違う。
「いいね、そうしよう」
カフェに入るのもいいけど、食べ歩きや店先で食べるのもいい。
それぞれ好きな店が違ったので、各々で買って、食べ歩きすることにした。
「いただきます」
サクッとした表面に、とろりと溶けるような餅の食感。あんこは結構甘くて、粒々食感がたまらない。
「その店のあんこって、結構甘いだろ?」
「うん。好きなんだー、この甘さ」
「そうか。今度はそっちも食べてみたいな」
と、春都は言って、自分の餅を一口食べた。なんかそっちもうまそうに見えてくる。
「せんべい屋さんもあるよね」
「買うか」
「あはは。言うと思った」
まさか、退屈になんとなく過ごすはずだった休日が、こうも楽しくなるとはなあ。
ぼんやり過ごすのもいいけど、こうやって充実した休日が過ごせるのは、とてもいい気分だな。
さて、せんべい屋に入る前に餅を食べ終わっておかないと。
なんて、もうあと一口なんだけどね。
「ごちそうさまでした」
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