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第18章 帰郷と運命の結末
No,242 ナッキー豹変す!
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【これは35歳の時のお話】
土曜日─ナッキーの来る日だ。
それは秋風の爽やかなお昼前。
ピンポーン──♪
(え?)
呼び鈴に応えてドアを開けると、そこにはナッキーが立っていた。
「あれ?夕方に着くって言っていたよね?駅まで迎えに行くつもりだったのに……」
「予定では色々と雑事を済ませてから来ようと思っていたんだ。
だけど亮さんとの事がどうしても気になって……。で、結局いても立っても居られないから何もかも放り出して新幹線に飛び乗った」
ナッキーの眼がきつい。
(……なんか怖い)
「ああそうなんだ。うん、どうぞ入って……」
リビングに案内するつもりが、逆に腰に手を回されて誘導された。
まさに勝手知ったる他人の家。
ナッキーは俺をロング・ソファーに座らせると、その隣に腰を下ろした。
(ええっ?二人で並んで座るの?)
ナッキーの鋭い目線が俺を外さない。
「理久、オレはもう……おまえの気持ちを考えたりするのは一切やめた」
(ん?)
「もう、おまえの事を思いやったりしないし、おまえのために気を使ったりも一切しない」
「え?ナッキー何を……」
その厳しく真剣な眼差しに、俺はとてつもなく不安になった。
「愛する人の幸せを祈るのが本当の愛だなんて、そんなの変だ。戯言だ!」
「ナッキー?」
「だって、どんなにオレがおまえの幸せを祈ったって、全然おまえは幸せにならないじゃないか」
ナッキーがいつになく饒舌だ。そして何より顔が近い。圧が怖い。
「ナ、ナッキー……俺、何か怒らせた?」
「いいから黙ってオレの話を聞け」
「うん、え?、あ、はい……」
俺の声が消え入るように小さくなる。
「理久、オレは今日、おまえへの想いを全て打ち明ける決意でここに来た」
(やっぱり!あ……だけど何だろう?ナッキーから醸し出される、このあらがえないオーラは……)
「はい……」
俺は思わず、まるで鼻から抜けるような声で素直に返事をしてしまった。
「オレはこの見た目だから、小さい頃から可愛いだとか綺麗だとか、ずっと女の子みたいだとか言われて生きて来た」
(え?いきなり自慢なの?)
「その度にオレは不愉快でずっとずっと嫌だった。こんな事を打ち明けるのは初めてだけど、オレの小学校から中学校までの黒歴史。
不本意なアダ名が……姫だった」
(姫?って……そりゃまた絶妙なアダ名だなぁ、ナッキーは確かに姫顔だけど……)
「初恋が小学校の先生で、父親がいないせいかと自己分析して、ずっと年上の人ばかりを追い掛けていたけど何か違って、結局は姫扱いされるのが不愉快で……」
(うん、それは知ってる)
「なぁ、憶えているか?オレ達が初めて会った時のこと」
「もちろん覚えてるよ。俺が初めてBlue nightへ行った時、ナッキーはルカって名乗っていて……」
「そう……あの時オレ、おまえ、おしろい塗ってるのか?って聞いたら、なにも塗ってないよって、オレに顔を近付けただろ?
おまえの黒い瞳が大きくなって、オレの目を見てニコリと笑った」
「え?そんなだっけ?」
(正直そこまで覚えてない)
「オレ、あの時ハッとした。そしてはっきりと分かったんだ」
「な、何がでしょうか?」
「ああ、こいつだ!こいつこそがオレの姫なんだって……!」
「ええっ!お、俺……ナッキーの姫だったの?!」
「そうなんだ、オレの前に本物の姫が現れた。それが理久、おまえなんだ!」
「……まさか俺が姫だったとは、そんなこと、思いもしなかった。だってナッキーは、いっつも顔を真っ赤にして怒ってた」
「怒ってないよ。ただ、おまえは紛れもなくオレの姫だったから、その一挙一動が眩しかった。そしてそんな思いを知られるのが恥ずかしかった……」
「ナッキー……そんなに俺のことを……」
「だからオレは、愛する人の幸せを祈るのが本当の愛だなんて戯言を信じて、ずーっとおまえを騎士気取りで見守って来たけど、おまえ、全然幸せにならないし……」
「え?俺、姫として騎士に見守られてたの?」
(何だか胸がドキドキしてきた)
土曜日─ナッキーの来る日だ。
それは秋風の爽やかなお昼前。
ピンポーン──♪
(え?)
呼び鈴に応えてドアを開けると、そこにはナッキーが立っていた。
「あれ?夕方に着くって言っていたよね?駅まで迎えに行くつもりだったのに……」
「予定では色々と雑事を済ませてから来ようと思っていたんだ。
だけど亮さんとの事がどうしても気になって……。で、結局いても立っても居られないから何もかも放り出して新幹線に飛び乗った」
ナッキーの眼がきつい。
(……なんか怖い)
「ああそうなんだ。うん、どうぞ入って……」
リビングに案内するつもりが、逆に腰に手を回されて誘導された。
まさに勝手知ったる他人の家。
ナッキーは俺をロング・ソファーに座らせると、その隣に腰を下ろした。
(ええっ?二人で並んで座るの?)
ナッキーの鋭い目線が俺を外さない。
「理久、オレはもう……おまえの気持ちを考えたりするのは一切やめた」
(ん?)
「もう、おまえの事を思いやったりしないし、おまえのために気を使ったりも一切しない」
「え?ナッキー何を……」
その厳しく真剣な眼差しに、俺はとてつもなく不安になった。
「愛する人の幸せを祈るのが本当の愛だなんて、そんなの変だ。戯言だ!」
「ナッキー?」
「だって、どんなにオレがおまえの幸せを祈ったって、全然おまえは幸せにならないじゃないか」
ナッキーがいつになく饒舌だ。そして何より顔が近い。圧が怖い。
「ナ、ナッキー……俺、何か怒らせた?」
「いいから黙ってオレの話を聞け」
「うん、え?、あ、はい……」
俺の声が消え入るように小さくなる。
「理久、オレは今日、おまえへの想いを全て打ち明ける決意でここに来た」
(やっぱり!あ……だけど何だろう?ナッキーから醸し出される、このあらがえないオーラは……)
「はい……」
俺は思わず、まるで鼻から抜けるような声で素直に返事をしてしまった。
「オレはこの見た目だから、小さい頃から可愛いだとか綺麗だとか、ずっと女の子みたいだとか言われて生きて来た」
(え?いきなり自慢なの?)
「その度にオレは不愉快でずっとずっと嫌だった。こんな事を打ち明けるのは初めてだけど、オレの小学校から中学校までの黒歴史。
不本意なアダ名が……姫だった」
(姫?って……そりゃまた絶妙なアダ名だなぁ、ナッキーは確かに姫顔だけど……)
「初恋が小学校の先生で、父親がいないせいかと自己分析して、ずっと年上の人ばかりを追い掛けていたけど何か違って、結局は姫扱いされるのが不愉快で……」
(うん、それは知ってる)
「なぁ、憶えているか?オレ達が初めて会った時のこと」
「もちろん覚えてるよ。俺が初めてBlue nightへ行った時、ナッキーはルカって名乗っていて……」
「そう……あの時オレ、おまえ、おしろい塗ってるのか?って聞いたら、なにも塗ってないよって、オレに顔を近付けただろ?
おまえの黒い瞳が大きくなって、オレの目を見てニコリと笑った」
「え?そんなだっけ?」
(正直そこまで覚えてない)
「オレ、あの時ハッとした。そしてはっきりと分かったんだ」
「な、何がでしょうか?」
「ああ、こいつだ!こいつこそがオレの姫なんだって……!」
「ええっ!お、俺……ナッキーの姫だったの?!」
「そうなんだ、オレの前に本物の姫が現れた。それが理久、おまえなんだ!」
「……まさか俺が姫だったとは、そんなこと、思いもしなかった。だってナッキーは、いっつも顔を真っ赤にして怒ってた」
「怒ってないよ。ただ、おまえは紛れもなくオレの姫だったから、その一挙一動が眩しかった。そしてそんな思いを知られるのが恥ずかしかった……」
「ナッキー……そんなに俺のことを……」
「だからオレは、愛する人の幸せを祈るのが本当の愛だなんて戯言を信じて、ずーっとおまえを騎士気取りで見守って来たけど、おまえ、全然幸せにならないし……」
「え?俺、姫として騎士に見守られてたの?」
(何だか胸がドキドキしてきた)
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