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ヒロインの憂鬱
第1話
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「お前との婚約は破棄する!」
王宮主催舞踏会の会場で、王子は婚約者である私を指さしながらのたまわりました。
私の名前はレア。ファン王国の国立魔術学園を今季卒業したばかりの16才。今日は背中まで伸びたブロンドの髪を縦ロールに巻いて舞踏会用に作った橙のドレスを着ていますが、こんな千差一隅のチャンスを逃す訳にはいきません。
「私は構いませんが、陛下もご存じなのでしょうか?」
「父上は関係ない。俺の婚約者は俺が決める!」
「さようでございますか。これだけの衆目の中でおっしゃられた事ですから取り返しはつきませんわね。」
「当然だ。俺はここにいるキャサリンと結婚する。」
「ヘンリー王子、光栄でございます。私はそこの不細工な女と違って、心から王子をお慕い申しておりますわ。」
「わかりました。では、私はこれで失礼いたします。」
「兄さん、レアになんて失礼なことを言うんだ。」
「ふん。俺は自分の気持ちに正直なだけだ。」
「レアは、陛下の決めた許嫁なんだぞ。」
「関係ない!次期国王の俺が決めたのだ。余計な口をはさむでないわ。」
「くっ……。」
「そうだ。あの女はお前にくれてやろう。俺のおさがりをな。」
「……後悔しないでくださいね。」
舞踏会場を後にする私は、小さくガッツポーズをします。
そう。ここまでうまく行くとは思ってもいませんでした。
ファン王国第一王子のヘンリー・ファントマは、顔だけは一級品の頭スカスカのボンクラです。
実は、私の推しは、第二王子のアーサー様なのです。
そのアーサー様が私を追いかけて来てくれました。
「待ってくれレア!」
私は立ち止まり、アーサー様をお待ちします。
「ふう……。レア、兄上が失礼なことをした。」
「……。」
「こんな時に不謹慎だと思うだろうが聞いてほしい。レア……、僕は君のことがずっと好きだった。君がよければ、僕の婚約者になってほしい。」
「アーサー様……。こんな私でよろしいのですか?」
「君でなければダメなんだ。どうか僕を支えてほしい。」
「私でよければ……。」
アーサー王子の優しいキスを私は受け入れた。
アーサー王子と私は、王立学園の同級生であり、ヘンリー王子とキャサリン嬢は一学年上の同級生でした。
アーサー王子は常に学年トップで、私は5位以内をキープしています。だって、王子より上位に行くわけにはいきませんから……。
ヘンリー王子との婚約が言い渡されて以来、私は地味目に徹しています。
それに比べて、キャサリン嬢は目鼻立ちもはっきりした所謂美人顔です。
服装も派手なものを好み、肌の露出も多いため男性からの人気も高いようです。
勉強の方はいまいちのようですけど……。
普段から、私は将来に向けた人脈の発掘を心がけています。
特に、情報収集に長けた人や魔道具開発に熱心な人たちを見つけ出し、私のブレーンに加えています。
魔道具開発に関しては、自分では何かを作り出せなくても魔法式の構築に長けた人を優遇しています。
いうなれば、私のアイデアを形にしてくれる人たちです。
婚約破棄騒動のあった10日程前、私は人脈をフルに使ってキャサリン嬢をその気にさせるよう働きかけます。
ヘンリー王子が私に不満をもっているとか、王子はもっと露出度の高い服が好みだ。キャサリン嬢をじっと見つめていたなどの噂をキャサリン嬢の周りで流したのだ。
そして、ヘンリー王子の周りには、キャサリン嬢がいかに美しいかという言葉が飛び交った。
王子とキャサリン嬢は簡単に恋に落ち、関係を持った。
しかも、ヘンリー王子は公衆の面前で私との婚約を一方的に破棄すると宣言しただけでなく、キャサリン嬢との関係を公言してくれたのだ。
こうしてヘンリー王子だけでなく、キャサリン嬢の評価は地に落ちた。
【あとがき】
新シリーズ開始です。
王宮主催舞踏会の会場で、王子は婚約者である私を指さしながらのたまわりました。
私の名前はレア。ファン王国の国立魔術学園を今季卒業したばかりの16才。今日は背中まで伸びたブロンドの髪を縦ロールに巻いて舞踏会用に作った橙のドレスを着ていますが、こんな千差一隅のチャンスを逃す訳にはいきません。
「私は構いませんが、陛下もご存じなのでしょうか?」
「父上は関係ない。俺の婚約者は俺が決める!」
「さようでございますか。これだけの衆目の中でおっしゃられた事ですから取り返しはつきませんわね。」
「当然だ。俺はここにいるキャサリンと結婚する。」
「ヘンリー王子、光栄でございます。私はそこの不細工な女と違って、心から王子をお慕い申しておりますわ。」
「わかりました。では、私はこれで失礼いたします。」
「兄さん、レアになんて失礼なことを言うんだ。」
「ふん。俺は自分の気持ちに正直なだけだ。」
「レアは、陛下の決めた許嫁なんだぞ。」
「関係ない!次期国王の俺が決めたのだ。余計な口をはさむでないわ。」
「くっ……。」
「そうだ。あの女はお前にくれてやろう。俺のおさがりをな。」
「……後悔しないでくださいね。」
舞踏会場を後にする私は、小さくガッツポーズをします。
そう。ここまでうまく行くとは思ってもいませんでした。
ファン王国第一王子のヘンリー・ファントマは、顔だけは一級品の頭スカスカのボンクラです。
実は、私の推しは、第二王子のアーサー様なのです。
そのアーサー様が私を追いかけて来てくれました。
「待ってくれレア!」
私は立ち止まり、アーサー様をお待ちします。
「ふう……。レア、兄上が失礼なことをした。」
「……。」
「こんな時に不謹慎だと思うだろうが聞いてほしい。レア……、僕は君のことがずっと好きだった。君がよければ、僕の婚約者になってほしい。」
「アーサー様……。こんな私でよろしいのですか?」
「君でなければダメなんだ。どうか僕を支えてほしい。」
「私でよければ……。」
アーサー王子の優しいキスを私は受け入れた。
アーサー王子と私は、王立学園の同級生であり、ヘンリー王子とキャサリン嬢は一学年上の同級生でした。
アーサー王子は常に学年トップで、私は5位以内をキープしています。だって、王子より上位に行くわけにはいきませんから……。
ヘンリー王子との婚約が言い渡されて以来、私は地味目に徹しています。
それに比べて、キャサリン嬢は目鼻立ちもはっきりした所謂美人顔です。
服装も派手なものを好み、肌の露出も多いため男性からの人気も高いようです。
勉強の方はいまいちのようですけど……。
普段から、私は将来に向けた人脈の発掘を心がけています。
特に、情報収集に長けた人や魔道具開発に熱心な人たちを見つけ出し、私のブレーンに加えています。
魔道具開発に関しては、自分では何かを作り出せなくても魔法式の構築に長けた人を優遇しています。
いうなれば、私のアイデアを形にしてくれる人たちです。
婚約破棄騒動のあった10日程前、私は人脈をフルに使ってキャサリン嬢をその気にさせるよう働きかけます。
ヘンリー王子が私に不満をもっているとか、王子はもっと露出度の高い服が好みだ。キャサリン嬢をじっと見つめていたなどの噂をキャサリン嬢の周りで流したのだ。
そして、ヘンリー王子の周りには、キャサリン嬢がいかに美しいかという言葉が飛び交った。
王子とキャサリン嬢は簡単に恋に落ち、関係を持った。
しかも、ヘンリー王子は公衆の面前で私との婚約を一方的に破棄すると宣言しただけでなく、キャサリン嬢との関係を公言してくれたのだ。
こうしてヘンリー王子だけでなく、キャサリン嬢の評価は地に落ちた。
【あとがき】
新シリーズ開始です。
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