短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

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ヒロインの憂鬱

第4話

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「ちょっと待て!そんな話、聞いてないぞ!」
「申し訳ございません。何分開発中なものですから。」
「ヘンリー補佐官。勝手な発言は慎むように!」
「で、ですが父上!」
「ここは公務の場ゆえ、私的な発言は慎むように。」
「うぐっ……。」

「それで、その魔道具の開発はどの程度進んでいるのかね。」
「はい。では補佐官に説明させます。」
「トイレ用魔道具につきましては、昨日試作品が完成しましたので、本日より試験運用を開始しております。」
「ほう。」
「建築局と連携して、城に一台と私の自宅に一台。冒険者ギルドに一台と民家に二台設置しております。」
「城内はどこに?」
「一番利用者の多い、一階に設置しております。」
「侯爵令嬢が、トイレにまで立ち入っているとは……申し訳ないな。」
「国民の利になることですので、城の職員としては有意義なことと考えております。」
「うむ。その考え方は王族としても申し分ないな……。」
「えっ?」

「いや、独り言じゃ。それで、医療の方は何かないか?」
「それは、大臣の方からご説明させていただきます。」
「はい。現在、産業政策局として、職人育成の制度を検討しています。」
「それは、以前聞いたやつだな。」
「はい。その制度の中に、医師と薬剤師と医療補助者を組み込めないか検討しております。」
「医療補助者?」
「医師と薬剤師の知識を浅く広くしたイメージで、簡単なケガの応急処置や発熱・腹痛など一般的な症状に対応できる者です。」
「ほう、面白いな。」
「講師としては、引退された御殿医が5名と薬師が3名おられますので、医療課長と相談しているところでございます。」
「来年の制度発足に間に合うのか?」
「自治総務局との連携を密にして取り組んでいきたいと思います。」

 医療課長からの情報があがっていなかったようで、自治総務局長は言葉を濁していました。

 その後で、私とアーサー王子は陛下に呼ばれ、私室にお邪魔しています。
「次の産業政策大臣は誰がいい?」
「ケビン課長が適任と思い、育成しているところでございます。」
「レアのサポートなしでも大丈夫なのかね。」
「サポート役としては、マリアンヌを育てているところです。」
「一か月で育てられるかい?」
「完全に二人だけというのは難しいと思いますので、私がフォローすれば何とかなると思います。」
「では、決まりだ。10月から二人には自治総務局に移ってもらう。もちろん大臣と補佐官としてだ。」
「い、今の二人は……?」
「北の町の副領事とその補佐官のポストが空いたのでな。」

「本当なら、レアを産業政策大臣にしようかと思ったのだが……。」
「とんでもございません。私は方向性を示していただいてから力を発揮する性分ですので、先頭に立つ器ではございません。」
「それはよく分かっている。だからこそ、次期王妃としてわしが見染めたのじゃよ。」
「えっ?」
「ヘンリーのように愛想をつかされんように頑張るんじゃぞ。」
「……。」

 ヤバいです。陛下にはお見通しだったようで……。

「さっきの父上の言葉って、僕が後を継ぐってこと?」
「決定ではありませんが、そういうことですわね。」
「僕に国王が勤まるんだろうか……。」
「まだ、力不足ですわね。でも大丈夫。あと1年かけて立派な国王候補にしてみせますわ。ですから、自信を持ってくださいね。」

 10月に入り、ヘンリー王子は北の町に移動となろました。
 城に来る理由のなくなったキャサリン嬢は実家でおとなしくしているようです。

 アーサー大臣の活躍により、町は衛生的に改善され、医療体制も整ってきました。
 町の水路には色鮮やかなコイが泳ぎ回り、人々の生活に憩いを与えてくれます。

 数年後、私はアーサー王子と結ばれ、更に改革を実行します。
 2代にわたって役職に就いていない貴族に、2年分の恩賞を与え改易します。
 当然、貴族街の屋敷は没収です。
 キャサリン嬢がどうなったか……、興味はありません。

 私が興味あるのは、国民が幸せかどうか、それだけです。
 

【あとがき】
 ヒロインの憂鬱、完結です。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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