小さなベイビー、大きな野望

春子

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sideフランツ・ハルベル

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白銀の世界で、佇む一人の男。
息をする度に、吐く息の白さが目立つ。
御気に入りの漆黒のマントは、いつも、羽織っており、メンテも欠かさない。
「閣下。フランツ閣下。」
右腕のエルヴィンが、近づいてきた。歩いてきた方向から、大きな足跡が、雪に盛大についてる。
「…どうした?」
「ハッチが、撮れたそうです。此方です。確認を。」
ネガを見ると、このキングブレストを生息地にしてる屈強な生物、雪兎だ。
雪兎とは、可愛い名前だが、真っ白な毛並みで、兎だが、二メートルはゆうに、越えていて、筋肉質。年中雪が吹雪く土地で、生きていかねばならないので、屈強になっている。
縄張り意識が強く、踏み込んだ奴は、瞬時に、しばかれる。
「…あのバカは、一度すら、私を満足させることはしない。」
「ハッチですから。」
「もう少し、マシな写真を撮ってこいと伝えろ。」
「かしこまりました。」
使えない部下にイライラするが、致し方あるまい。
今度、南のサンドブルクとの合同訓練がある。
そのときは、やはり、ここを空けねばならない。
まあ、対策はしておくが。
キングブレストに容れられた囚人の殆どは、二度と、外に出れず、監獄で一生を終わる。
キングブレストは、誰もが恐れる土地だ。
白銀の世界と言えば聞こえがいいが、景色が変わらない、吹雪で、音は、消えていく。
監獄は、威厳の尊重のように、そびえ立ち、ぐるりと、塀で囲まれている。門には、専用の門番がおり
、通称〝死の門兵”が、門を護っている。
隊舎は、監獄の敷地内にあり、設備も整っている。
そして、フランツが入隊した年に出来たフランツ専用の館。リリーエの強い希望で、建てられた建物。
ハルベルの結集で作られた建物は荘厳で、雪にさえ、埋もれない神々しさ。
リリーエがフランツは無理矢理、キングブレストに行かされたのだと抗議し、フランツの居住する家を持たせなさい!とデヴィットの首を絞めた。
ハルベルから一緒に来てくれた者たちと暮らしている。
フランツもアルミン程ではないが、ペットを飼っている。この過酷な土地を生きていけるぐらいの生物だ。
「いたいた。閣下。撮ってきましたよ!」
「…。」
キングブレストの雪山に吹雪く雪よりも、激しく、冷たい怜悧な目付きで、見下す。
問題児、ハッチだ。
罰として、雪兎の写真を撮ってこいと命じてきた。
「そのまま、食われてしまえば、いい。」
「命懸けで撮ってきましたよ!姪様が御気に召すといいーぶへえ。」
あまりにも、気分が悪く、ハッチを地面に這いつくばらせた。
「お前の感想など、聞いてない。」
「相変わらずの冷たさで…へぐっ。」
「黙れ。」
見た目は好青年であるが、中身は、とんだ変態。
「始末しておけ。」
「…はっ。」
エルヴィンがハッチを担ぐ。
「ー。」
写真には、雪兎が写っていて、リーサが気に入るだろう。


「わー。見て、まま。おばちゃん。フランツおじちゃんがくれたの!雪兎だあ。可愛い!」
「下山なさるなら、家に泊まればいいのに。」
「フランツは仕事なの。」
「ふふ。可愛い。」
どう見ても可愛くない。筋肉質でいかついし、目は、キッと、きつめ。
それにこの一枚、誰が雪兎の標的になっていないか?
「可愛い!」
ご満悦のリーサには、気づかない。


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