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赤い糸なんて引きちぎれ!!(後編)

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「さぁて、略奪愛といきますか」

 俺は白石家を観察してみたが、無駄に馬鹿広い家で沢山のボディガードらしき人間と、十数匹の犬がうろうろしているのが分かった。正攻法では多少喧嘩が強いとはいえ、俺には勝ち目がないのが分かった。できれば結婚式前に優一郎と俺が再会したほうが、白石家にとっても良かったに違いない、相手のΩの花嫁とやらに恥をかかせずに済むからだ。だが出来ないものは仕方がない、俺は結婚式が行われるというホテルの方を観察した、こっちも当日はスーツの人たちが見張りに立つんだろうが、俺は結婚式場を今度使いたいのでと言って偽名で下見しておいた。

「やっぱり結婚式当日だな、他に優一郎と会う手段が無い」
『勝己、僕は大学生だよ』

「もう一つ手段があったか、大学の方を調べてみるか」
『うん、勝己。大好き、待ってる』

「大学は沢山の人が出入りするから、警備もそんなに厳重じゃないはずだ」
『僕は待ってる、僕は勝己を待ってるからね』

 俺がホテルに帰ってこれからの計画を立てていると、優一郎の声で幻聴が聞こえた気がした。あの優一郎が大体、大人しく新しい女のΩとやらを受け入れているだろうか、俺は優一郎が物凄く頑固で一途なのを知っていた。だからまだ優一郎が俺のことを好きだと分かっていた、それが分かっていたからこそ俺は優一郎を探しているのだ。俺と会わせて貰えないショックから、何をしでかすのか分からないのが優一郎という男だった。とりあえず俺は私服で、次の日に優一郎が通っている大学へ行ってみた。ところどころにスーツの人がいたが、優一郎の関係者かどうかは分からなかった。

「優一郎の居所が分かるか心配だったが、これなら問題なさそうだ、良い匂いがこっちからする」
『勝己、こっちだよ』

「分かってるさ、これは優一郎の匂いだ。俺がΩになったからだな、優一郎の匂いがよく分かる」
『勝己、勝己、こっち、こっちだよ』

「あー、幻聴まで煩い奴だよ。優一郎、お前って奴はな。でも可愛いもんなぁ、俺だけのもんだ」
『うん、僕は勝己のもの。勝己だって僕のものだ、好き、大好き、愛してる』

 俺は大学にこっそりと忍び込むと優一郎の匂いを辿って歩いていった、時々スーツの人に遭遇しそうになったが俺の顔を知っているのは、高橋さんや原田さんくらいのものだった。それに逃げようとしたら返って怪しまれる、俺は堂々と関係者のような顔で大学の中を歩いていった。そうしたら優一郎がいた、高橋さんや原田さんもいて優一郎と何か喋っていた。優一郎はふらふらしていてその辺にあった適当な椅子に座っていた、やがて高橋さんが医者を呼びに走っていった、俺は優一郎の傍に残っている原田さんを、苦しくも痛くもないように締め技を使って気絶させた。

「よぉ、優一郎。この浮気者、女のΩと婚約したんだって?」
「勝己!! それは誤解だ、僕は勝己が好きだ!! あんな家が決めた女のΩと結婚したくない!!」

「それじゃ、優一郎。逃げ出そうぜ、こっちだ!!」
「うん、でも体が熱くて動かない」

「それは俺のせいだな、俺は抑制剤を飲んでるから無事なのか。とにかく俺の背に乗れ!!」
「ああ、勝己の匂いだ。凄く良い匂い、ずっと待ってた。勝己が帰ってくるのを待ってたんだ」

 それから俺たちは大学の目立たないところから逃げ出した、まず優一郎には適当な部屋に入ってもらって服や靴を全部着替えて貰った。優一郎は白石家のおぼっちゃんだから、どこに誘拐された時用のGPS発信機、それがしこんであるのか分からなかったからだ。そうして人目がない道を通って俺たちは大学を逃げ出して、俺は適当なところにあるそれなりにお高いホテルに偽名で入った。白石家系列ではなくて他県から進出したホテルだった、その間も優一郎はぐったりしていたから、俺はヒートがきているんですと言って誤魔化した。そして、ホテルの部屋に入ったら優一郎が俺に抱き着いてきた。

「勝己、体が熱くてしかたがないよ。早く僕を抱いて!! 抱いて滅茶苦茶にしてぇ!!」
「落ち着けよ、優一郎。真面目な話がある、ほらっキスしてやるから落ち着け」

「ああんっ、勝己の唾液が甘くて美味しい。真面目な話って何? 勝己、早く早く教えて!!」
「うーん、あのな。お前と長く接触していたせいで、俺の体には変異が起こったらしい」

「えっ!? 勝己、大丈夫なの!! それで一カ月も帰って来れなかったの!?」
「うん、そうだ。俺はどうやらΩになったらしいぜ、優一郎これは完全にお前のせいだからな」

 俺がΩになったと聞いて優一郎は目を輝かせていた、俺に抱き着いたままそうして俺の匂いを嗅ぎまくっていた。それから熱くて我慢できないと言って優一郎は服を脱ぎ始めた、俺も優一郎にキスしたりしながら自分の服を脱いで、優一郎をベッドに優しく押し倒した。優一郎はすっかり俺のフェロモンにやられているようだった、俺たちはキスをしてそうしながらお互いに相手のものを愛撫した。優一郎は俺に触られてすぐにいってしまった、俺はΩになって男性器は感じにくくなったのか勃起はしたが射精には時間がかかった。そんな俺を押し倒して、優一郎がふらふらしながら聞いた。

「ねぇ、僕は勝己を抱いてもいい? 僕が勝己を抱くのを許してくれる?」
「相変わらず可愛い奴だ、いいぜ。俺は抑制剤を飲んでるから、反応がいまいちかもしれんが抱いてくれ」

「はぁん、良い匂い。凄く凄く良い匂いがするよ、それじゃ勝己の後ろをほぐすね」
「腹の中は綺麗にしておいた、コンドームとローション持ってきたから、優一郎それを使えよ」

「ああ、勝己のお尻の穴がピンク色で可愛い、舐めたいくらいだけど今回は指を入れるね」
「あっ!! 優一郎の指が入ってきて変な感じ、はははっ。なかなか気持ちが良いぜ、優一郎」

 それから優一郎は時々俺とキスをしながら、ゆっくりと俺の後ろの穴をならしてくれた。俺がΩになったことを喜んでいるようで、目を輝かせて顔は真っ赤になっていた、そして優一郎は俺の匂いに凄く興奮していた。俺は抑制剤を飲んでいたから優一郎ほどは興奮しなかったが、あの幼稚園児で俺の恋人の優一郎に抱かれると思うと興奮はしていた。そして優一郎がもう性器からだらだら精液を垂らしていたから、俺は優一郎にフェラをしてやって、それからすぐに出た精液も飲んでやった。そうして俺の穴の方の準備ができたら、優一郎がコンドームをせずに俺の中に入ってきた。

「勝己、入れるね。ああっ!! 気持ち良い!! 勝己の中が狭くて吸い付いてきて、凄く気持ち良いよぉ!?」
「俺も気持ち良いから動いてくれよ、優一郎。俺を犯して、しっかり種付けしてくれるよな」

「うん、勝己を孕ませてあげる。僕の子どもを孕んで、勝己。ああっ!! ああっ!! 気持ちが良い、僕のものがとけちゃいそう!?」
「お前は可愛い奴だな、優一郎。好きだ、大好きだ、そして愛してるぜ。俺の夫、俺の優一郎」

「勝己が僕を愛してるって!? はぁん!! 気持ち良い、気持ち良いよ!! あっ、もう駄目。僕、いっちゃうぅ!!」
「ん、気持ちが良い!! はははっ、俺がお前を抱いた時と同じだな。気持ちが良い、あっ、熱い精液が入ってきた!!」

 それから俺たちは何度も何度も愛し合った、俺も途中で抑制剤が切れたのか勝己の匂いが強烈に良い匂いになって、俺の中に入ってくる勝己のものを締めつけていかせた。一体何度俺に中に出したのか分からないが、俺はマジで孕んでたらどうしようと、そうぼんやりと思っていた。俺は優一郎にキスをして、唾液が甘いなんて体験を初めてした。何度も、何度もキスを繰り返し、セックスだってした。一晩中そうしていた俺たちはフロントから電話があってそれに気づいた、俺は連泊に変えて欲しいと言って、タオルやシーツの予備だけくれと答えた。

「そういえば勝己、お前家に電話だけはしとけ。俺が誘拐犯だって報道されたら面倒だ」
「あんな家はもう大嫌いだ、僕を座敷牢に閉じ込めて、気持ち悪いΩの女を一緒に入れた」

「浮気しなかったか? 優一郎?」
「絶対にしていない!! Ωの女といっても変な匂いがするだけだった!!」

「そりゃ、良かった。家には何て言うんだ、俺がΩになったって説明すると、話がかなり長くなるぞ。後は言うまでもないが電話の逆探知には気をつけろ、それから非通知でかけろよ」
「『僕の邪魔をするな』」

「お見事、本当に一言だな」
「これで高橋や原田たちはもう動けない、だからその勝己。もう一回してもいい?」

 そうしている間にホテルの人がタオルやシーツの予備を持ってきてくれた、俺は精液まみれの使用済みのタオルやシーツを渡すのは気が引けたが、向こうもプロだった何もいわずににっこり笑顔で受け取った。俺たちは新しいシーツの上でまた愛し合った、抑制剤がすっかり切れたのだろう、俺も優一郎が欲しくて仕方がなくなった。それから一週間、俺たちは俺のヒートが収まるまで愛し合った。優一郎は俺に抱かれていたから、俺そっくりに俺のことを抱いた。俺は人にやったことって、自分に返ってくるんだなぁと思っていた。そして、ようやくヒートが収まって俺は優一郎に聞いた。

「これからどうする? 優一郎」
「勝己を堂々と僕の花嫁として紹介する、あのΩの女はさっさと追い出す」

「結婚式はどうするんだ? 俺はその女のお古なんて嫌だぜ」
「もちろん、新しい会場で勝己と結婚する」

「結婚式自体が面倒だな、そうだな。いっそこうしようぜ、優一郎」
「うん、そうだね。そうしよう、勝己。やっぱり勝己は僕の最高の番だ、僕を監禁した家族への復讐までしてくれる」

 そうして俺たちは一旦別れて優一郎は家に帰ることになった、俺も働きだして借りた自分の家に帰ったが部屋のドアには『出て行け』だとか、『卑怯者』だとかペンキで素敵なメッセージが残されていた。マンションの管理会社に電話したが、貴方が悪いんじゃないですかと言われた。それで俺に嫌がらせ行為をしたのは白石家だと分かった、俺は売られた喧嘩は買うほうだった。幸いにも部屋の中は荒らされておらず、一カ月と一週間くらい留守にしたので俺は掃除をした。優一郎と結婚したからもうここでは暮らさないかもしれないが、とりあえず掃除をして快適な空間を取り戻した。

「それじゃ、用意はいいか。俺の旦那さん」
「いつでもいいよ、奥さん」

「スーツの連中は止めてるんだな」
「ああ、僕の運命の番の邪魔はさせない。勝己は僕の赤い運命の糸の相手だ」

「それってお前が俺の運命の赤い糸を無理やり引きちぎって、きっと優一郎の糸と結び合わせたんだぜ」
「それでもいいもん、僕と繋がってない勝己の赤い糸くらい引きちぎってやる」

 そうして俺と優一郎は電話で打ち合わせて映画でよくあるやつだ、結婚式場に誰かが乱入して花嫁を攫うというのをやった。ただし、今回攫われたのは花婿である優一郎だった。ついでに俺はコピーしておいた、結婚届を結婚式会場にバラまいておいた。まだ優一郎が幼稚園児だった時に書かせていたものだった、本物はとっくに役場に提出済みで、俺の正式な名前は白石勝己になっていた。結婚式場はパニックに陥ったが、俺たちはそれを大笑いして堂々と正面から出て行った。そして俺の車で俺の部屋に戻ってきた、優一郎は今度は俺に抱かれたがっていた、だから俺は自分の部屋で優一郎を久しぶりに抱いた。

「ああんっ!! 勝己に抱かれるのも気持ち良い!! 後で僕が勝己を抱いてもいい? ひぁ!? ああっ、ああっ、あああああっ!!」
「ああ、もちろんいいぜ。抱かれても抱いててもお前は可愛いな、優一郎」

「勝己、好き、大好き、愛してる。幼稚園児の言うことも、言い続けていれば本物になるんだよ」
「ああ、もう分かってるぜ。優一郎、俺もお前が好きだ、その頑固なところも大好きだ、愛してる」

「もう勝己が大好き、僕から離れないで、ずっと一緒にいて、僕の子どもを産んで!!」
「前の二つは叶えてやれるけどな、子どもはまぁ運次第だな。俺も二十八歳になるし」

 そうやって最初は優一郎は俺に抱かれていたが、やがて俺を抱く側になった。本当に俺そっくりの抱き方をするものだから、俺は苦笑いしながら優一郎にキスをした。優一郎は何度も何度も俺の中でいった、ヒートでもないのに俺も興奮して喘ぎながらそれを受け止めた。そうしてその日は眠りについたが、俺は次の日の朝には優一郎に起こされた。そして俺が食事を作って、二人で食べたらまたベッドに直行だった。さすがに精液まみれのシーツは取り替えて、洗濯機に放り込んだ。そうして優一郎が俺を抱いては射精したが、何度も何度も終わりが見えなかった。

「いつまで俺を抱く気だ、優一郎?」
「勝己が孕むまでずっとだ、勝己が好きだ、大好き、愛してる。だから、俺の子を孕んで。いや勝己、孕むまでずっと犯し続けるから。勝己の中を僕のでいっぱいにしてあげる、だから僕の子どもをしっかりと孕んでね」
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