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13 心優しい王女様
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「……お久しぶりでございます、王女殿下」
「顔を上げてちょうだい」
その声で顔を上げると、王女殿下の赤い瞳と目が合った。
(間近で見るとさらに綺麗ね……)
男性たちが惚れる理由がよく分かるような気がする。
私がどれだけ頑張っても手に入らない物を、彼女は全て持っていた。
「アリス嬢、貴方も最近離婚したと聞いたわ。災難だったわね」
「……お気遣いいただきありがとうございます」
殿下の背後に控えている取り巻きの令嬢たちの刺すような視線が痛い。
王女殿下は私を労っているつもりなのだろうが、人目がある中で離婚の話はしないでほしいものだ。
(そう言えたら良かったのだけれど……)
相手が王女であるため、不敬罪になってしまうだろう。
昔から我慢するのだけは得意だ。
(ルーカス様もこっち見てるし……早くどこかへ行ってほしいわ……)
王女殿下の動向を見守っているのか、ルーカス様の視線は私たちに固定されていた。
その姿はまるで周囲の人間から殿下を守る騎士のようだ。
私が彼女に無礼を働くとでも思っているのだろうか。
愛されていないことは分かっていたが、そこまで信頼されていなかったとは。
(彼にとって私と過ごした三年間って、何だったんだろうな……)
思わず自嘲的な笑みが零れそうになった。
「――たしか、アリス嬢の夫はアルデバラン公爵だったわよね?」
「え……そうですが……」
それを聞いた王女殿下はパァッと顔を輝かせた。
「やっぱり!噂には聞いていたけれど本当だったのね!アルデバラン公爵はね、私の幼馴染なのよ!あんな素敵な方に嫁げるだなんて貴方は本当に幸せ者ね」
「は、はぁ……そう、ですね……」
(どうして急にそんなことを言うんだろう……?)
意味が分からずに頷いていると、殿下の顔から突如として笑顔が消えた。
そして目に涙を浮かべたかと思うと、消え入りそうなほど弱々しい声で言った。
「良いわね……私は隣国で辛い思いをしていたから……幸せな結婚をした貴方がとっても羨ましいわ」
「え……」
そんな姿を見た取り巻きたちが彼女を慰めに入った。
「殿下、大丈夫ですか!?」
「今ここに王太子殿下はいませんわ!」
彼女たちはすぐに駆け寄って、殿下の体を支えた。
私たちの様子をじっと見守っていた周囲の貴族たちは、皆王女殿下に同情の声を寄せた。
「アメリア殿下……王太子によほど酷い仕打ちを受けたんだな……」
「可哀そうに……あんなにも美しい方なのに……」
「王太子はどうかしているぞ!」
(あの人たちったらまた……)
さっき収まったと思ったのに、王太子殿下への批判は再び広がってしまった。
彼がこの場にいないのが不幸中の幸いだが、こんなにも人の悪口を聞くのは胸が痛む。
(でも、王女殿下はこの場にいるし……きっと王太子殿下を庇ってくれるはずよ)
アメリア王女殿下は近隣諸国でも聖母様のような性格だと評判だった。
貧しい民には手を差し伸べ、王女という身分を鼻にかけることもしない。
そのため、国民たちからの人気も高い。
彼女はその外見だけではなく、内面までも美しいのだ。
そんな王女殿下ならきっとこの場を収めてくれるだろう。
そう、思っていたのに――
「皆……私のためにありがとう……」
「当然のことです、殿下」
そっと顔を上げた殿下は嬉しそうに笑った。
そんな彼女を見た男性たちの頬が赤く染まる。
「皆……」
心優しい彼女のことだから、王太子殿下を庇うのだろう。
私がほっと安堵の息を吐いたそのときだった――
「あの人の噂に騙されないで……!彼は最低な人よ……!」
(………………………え?)
「顔を上げてちょうだい」
その声で顔を上げると、王女殿下の赤い瞳と目が合った。
(間近で見るとさらに綺麗ね……)
男性たちが惚れる理由がよく分かるような気がする。
私がどれだけ頑張っても手に入らない物を、彼女は全て持っていた。
「アリス嬢、貴方も最近離婚したと聞いたわ。災難だったわね」
「……お気遣いいただきありがとうございます」
殿下の背後に控えている取り巻きの令嬢たちの刺すような視線が痛い。
王女殿下は私を労っているつもりなのだろうが、人目がある中で離婚の話はしないでほしいものだ。
(そう言えたら良かったのだけれど……)
相手が王女であるため、不敬罪になってしまうだろう。
昔から我慢するのだけは得意だ。
(ルーカス様もこっち見てるし……早くどこかへ行ってほしいわ……)
王女殿下の動向を見守っているのか、ルーカス様の視線は私たちに固定されていた。
その姿はまるで周囲の人間から殿下を守る騎士のようだ。
私が彼女に無礼を働くとでも思っているのだろうか。
愛されていないことは分かっていたが、そこまで信頼されていなかったとは。
(彼にとって私と過ごした三年間って、何だったんだろうな……)
思わず自嘲的な笑みが零れそうになった。
「――たしか、アリス嬢の夫はアルデバラン公爵だったわよね?」
「え……そうですが……」
それを聞いた王女殿下はパァッと顔を輝かせた。
「やっぱり!噂には聞いていたけれど本当だったのね!アルデバラン公爵はね、私の幼馴染なのよ!あんな素敵な方に嫁げるだなんて貴方は本当に幸せ者ね」
「は、はぁ……そう、ですね……」
(どうして急にそんなことを言うんだろう……?)
意味が分からずに頷いていると、殿下の顔から突如として笑顔が消えた。
そして目に涙を浮かべたかと思うと、消え入りそうなほど弱々しい声で言った。
「良いわね……私は隣国で辛い思いをしていたから……幸せな結婚をした貴方がとっても羨ましいわ」
「え……」
そんな姿を見た取り巻きたちが彼女を慰めに入った。
「殿下、大丈夫ですか!?」
「今ここに王太子殿下はいませんわ!」
彼女たちはすぐに駆け寄って、殿下の体を支えた。
私たちの様子をじっと見守っていた周囲の貴族たちは、皆王女殿下に同情の声を寄せた。
「アメリア殿下……王太子によほど酷い仕打ちを受けたんだな……」
「可哀そうに……あんなにも美しい方なのに……」
「王太子はどうかしているぞ!」
(あの人たちったらまた……)
さっき収まったと思ったのに、王太子殿下への批判は再び広がってしまった。
彼がこの場にいないのが不幸中の幸いだが、こんなにも人の悪口を聞くのは胸が痛む。
(でも、王女殿下はこの場にいるし……きっと王太子殿下を庇ってくれるはずよ)
アメリア王女殿下は近隣諸国でも聖母様のような性格だと評判だった。
貧しい民には手を差し伸べ、王女という身分を鼻にかけることもしない。
そのため、国民たちからの人気も高い。
彼女はその外見だけではなく、内面までも美しいのだ。
そんな王女殿下ならきっとこの場を収めてくれるだろう。
そう、思っていたのに――
「皆……私のためにありがとう……」
「当然のことです、殿下」
そっと顔を上げた殿下は嬉しそうに笑った。
そんな彼女を見た男性たちの頬が赤く染まる。
「皆……」
心優しい彼女のことだから、王太子殿下を庇うのだろう。
私がほっと安堵の息を吐いたそのときだった――
「あの人の噂に騙されないで……!彼は最低な人よ……!」
(………………………え?)
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