初恋の王女殿下が帰って来たからと、離婚を告げられました。

ましゅぺちーの

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途中視点変わります。



***





王太子殿下と話をした日から三日後の朝。


「ん……」
「おはようございます、アリスお嬢様」
「……レイナ?」


目を開けると、既に夜が明けて朝になっていた。


(昨日はなかなか寝付けなかったのに……今何時かしら?)


部屋にあった時計をチラリと見ると、針がちょうど天辺を差していた。


「もうお昼なのね」
「はい、疲れていらしたようなので起こさない方がいいかと思って……」
「気を遣ってくれてありがとう」


ベッドから身体を起こした私は、着替えを始めた。
こんなに長い時間寝たのは久しぶりだった。


(最近は不安で眠れない日々が続いていたから……)


着替えの途中で、気にかかっていたことを傍にいたレイナに尋ねた。


「ジークハルト王太子殿下は……もう行ってしまったのかしら……?」
「あ、はい……早朝馬車に乗って帰国されました」
「そう……」


ある程度予想はついていたものの、いざ直接確認を受けるとやはり心苦しい。


(私に何も言わずに行ってしまうだなんて……やっぱりあの噂は本当なのだろうか)


――王女殿下との縁談。
彼はその噂に対して否定も肯定もしなかった。


それだけで真実であると決めつけるのはまだ早いというのに、どうしてこんなに不安なんだろう。


「――お嬢様」
「レイナ?」


そのとき、レイナが私の手をギュッと握った。


「大丈夫です、きっと王太子殿下は帰ってきますよ」
「……」


レイナの真剣な眼差しに、私はコクリと頷いた。
彼女のおかげで久々に笑顔を取り戻せたような気がした。





***




「ねぇ、ルーカスはちゃんとやっているのかしら?」
「はい、全て計画通りです」


時は三日前に遡る。






『一体何をする気だ?アメリア』
『三日後にジークハルト王太子が国へ帰るらしいわ』
『……!それは本当か……?』


アリスから王太子が離れるのが嬉しいのか、ルーカスは目を見開いた。


『ええ、間違いないわ。だからアリスと王太子を狙うならその日しかない』
『……』


そして私は彼に計画を一から説明した。


『馬車の御者は既に私の手の者にすり替えてある。人気の無い森に連れ込んで王太子を暗殺するのよ』
『……アメリア』
『貴方一人で勝てるわけがないのは私も分かってる。こういうときにこそ、裏社会の人間を使うに限るわ』
『……そこまでするのか』


引いたようなルーカスに、私はきょとんと首をかしげた。


『何言ってるのよ、そうでもしないとあの男の息の根を止められないじゃない?』
『しかし、大人数で一人を貶めるだなんて……』
『卑怯だとでも言うつもり?貴族社会においては別に珍しいことでもないじゃない』
『いや、そういうわけではないが……』


私はなかなか首を縦に振らない彼の耳元にそっと唇を近付けた。


『アリスを手に入れたいんでしょう?ここで貴方がやらなければアリスは一生あの王太子のものよ?』
『……』
『彼女のこと、好きなんでしょう?今度こそ過ちを犯したりはしないって言ってたじゃない』


誘惑するような囁きにルーカスはしばらく悩んだ後、何かを決心したようにゆっくりと立ち上がった。


『覚悟が決まったみたいね』
『……ああ』


それから彼は何も言わずに部屋を出て行った。







別邸で優雅に侍女の淹れたお茶を飲んでいた私はフッと口角を上げた。


(今日が実行の日。いつ王太子の訃報が届くのか楽しみだわ)


――私はあの女を始末する準備をしないとね。





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