【R-18】不器用な私と幼馴染〜すれ違った初恋は偶然の再会で動き出す〜

桜百合

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「久しぶりじゃね? お前綺麗になったな」
「直哉は口が上手くなったね」
「いや本当のことだって!」

 そうして迎えた同窓会当日。
 そこに拓真の姿はなかった。
 代わりに久しぶりの再会を果たしたのは同じく元彼の新庄直哉。
 彼との別れは円満なものであったので、向こうも気にせず話しかけてくれたのだろう。

「元気? 就職決まった?」
「うん元気。それが先週決まったばっかでさ。とりあえずほっとしてるよ」
「良かったじゃん。俺もつい最近決まったばっか。お祝いしよーぜ」

 そんなたわいもない話をしながらお酒を飲む。
 懐かしい顔たちは少しだけ大人びているように見えるが、話し出せば当時の記憶が蘇りあっという間に当時に引き戻される。

 しかし中には結婚が決まったなんて話す友人もいたりして。
 もう高校生の時とは違うのだなという事実を痛感する。

「ね、凛二次会行く?」
「んー、どうしようかな。これ以上飲むと頭痛くなりそうだし、今回はやめとこうかなー」
「そっかぁ残念。でも会えて嬉しかった! また近々ランチでも行こうね」
「うん、連絡取り合おうね」

 あっという間に時間はすぎ、店の前でみんなとの別れを惜しむ。
 するとその時。

「わりー、遅くなった。もう終わっちゃった?」

 記憶の中のそれよりも少し低くなった声が耳に入った。
 長年その声を聞き続けていた私には、すぐに誰が発したものかわかってしまう。

「拓真やっときたのかよ。欠席かと思ったわ」
「バイトが長引いた。悪い」
「今から二次会だけど、くるよな?」
「あー、行く」

 幹事を務めた男子とそんなやりとりを交わした拓真は、そこで辺りをぐるりと見回した。
 私はその存在に気づかれたくなくて、とっさに俯き顔を背ける。
 だがそんな小手先の誤魔化しは通用しなかったようで。

 拓真がつかつかと私の元へ歩いてくるのがわかる。
 そして正面で足を止めると、彼は口を開いた。

「凛、だろ……? 久しぶり」

 戸惑うような彼の声色も無理はない。
 高校時代黒髪のショートヘアだった私は、今ではアッシュのロングヘアに。
 ほとんど化粧っけのなかった顔もそれなりのメイクを施すようになっていた。
 逆に彼がよく私に気づいたものだと感心してしまう。

「よくわかったね。久しぶり」

 流石にもうこれ以上は誤魔化せないと思い、私は潔く拓真に笑いかけた。
 相変わらずすらりと背の高い彼は、そこまで高校時代と変わっていないように見える。

「雰囲気変わったな」
「それ新庄たちにも言われたよ」
「……あいつとまだ付き合ってんの?」
「ううん、大学入ってちょっとして別れた」

 新庄の名が出た途端に眉を顰めた拓真は、私の返答を聞いてどこかホッとしたような表情を浮かべた。

「この後二次会行くだろ?」
「行かない。だいぶ飲み過ぎちゃったしこれで帰る。拓真は今来たばかりでしょ? 楽しんできてね」
「じゃあ俺も行かない」
「……ん?」
「凛が行かねーなら俺も二次会行くのやめるわ」

 この人は何を言っているのだろうか。
 話についていけず、私は正面に立つ拓真に不審げな視線を送る。

「いやだって拓真、一次会参加してないじゃん。じゃあ何のためにきたわけ」
「凛がいるかと思って」
「何言ってんの」
「とりあえず俺二次会パスしてくる」

 そう言うと拓真は幹事の元へ駆け寄り何やらやり取りをしている様子。
 私は突然の出来事に頭がついていかず、その様子をぼうっと眺めた。

「交渉成立」

 やがて私の元へと戻ってきた拓真はそう言ってピースサインをする。

「は?」
「今参加費渡してきて、次の飲み会で俺が奢る約束してきた」
「はあ……」
「だから俺も二次会行かない」
「そっか」
「意味わかってんの?」
「ごめん、わかんないわ」
「この後俺と二次会やろ」

 拓真の申し出に目眩がし始め、私の酔いが一気進んだような気がする。

「ごめん断る……もうお酒飲めないし」
「酒飲まなくて良いから。ちょっとその辺散歩して夜風あたろうぜ」
「そういうのはまた今度に」
「無理。絶対会ってくれないだろ。第一、俺凛の連絡先すら知らない」

 適当な言い訳をつけて逃げようとしていた私の思惑はバレバレだったようだ。
 痛いところをつかれたようで、私は何も返せなくなる。

「ほら、行くぞ」
「ちょ、やめてよ! みんなに変な誤解されちゃう」

 一向に頷こうとしない私に痺れを切らした拓真は、その腕を強引に掴んで引っ張る。

「ちょうど良いんじゃねーの。新庄も気付くだろ」
「なんでそこで直哉の名前が出てくんの」
「直哉って呼ぶのやめて。なんかムカつく」
「拓真には関係ないでしょ」

 それからも私は抵抗したが、元々酔っていたことに加えて男の拓真の力に敵うはずもなく。
 私は半ば引きずられるようにしてその場を後にしたのであった。

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