公式 1×1=LOVE

Hiiho

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幼馴染×幼馴染=共依存 2

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  なんで俺、市太の匂いだけ平気なんだろう。



架は考える。考えて行き着く先はいつも同じ記憶。




小学校に通い始めたばかりの頃、架と市太は放課後近所の公園で遊ぶ事が多かった。
そこは小さな公園で、遊具は滑り台と中に出入りできる小型のドームくらいしかなく、少し先へ行けば新しく遊具も豊富な大きな公園があったために、利用するのは二人の他にいなかった。

その日も学校から帰ってすぐに架は公園へと向かう。

しかし、いつもなら先に来ているはずの市太の姿は無く、架はひとりドームの中で待ちぼうける。



  隣同士なんだから、いちに声を掛けてから来ればよかった



そう思っていたところに現れた見知らぬ男子高校生。

「ひとりで何してんの?」

優しい口調で話しかけられ、ドームの中で遊ぶ事に。

ジャンケンをしたり、しりとりや指相撲をして・・・


気付けば目の前の男子高校生は股間を晒し、座ったままの架の目の前で自慰行為に及んでいた。

何かを思う暇もなく顔面に射精され、男子高校生は欲望を放って気が済んだのか、精液に塗れた架を放置してドームを出て行った。

狭いドームの埃っぽい匂いの中に、むせ返るほど充満した濃い汗と男の臭い。男子高校生がつけていたのだろうか香水の甘いようなこもったような香り。息をすると、それらが混ざり合って鼻腔に入って来て、吐き気に襲われた架はドームから飛び出し公園の隅にある手洗い場へと走る。

水道の蛇口の下に頭を入れ、白濁がかかった頭部や顔、嘔吐で汚れた口元を冷たい水で一心不乱に洗い流す。



  なにこれ、気持ち悪い。・・・気持ち悪い。



小学1年の架はまだ、その白濁がなんなのかすら分からない。

「架? なにやってんだよ、水浴び?」

「・・・いち・・・」

俯いて頭から水を被る自分を覗き込む見慣れた市太の顔を見て、架は張り詰めていた糸が切れたように泣き出し、市太にしがみつく。

「う、うあぁ・・・こわかっ、たぁ、うう・・・」

「遅くなってごめん。かーちゃんが宿題してけってうるさくてさ。どーした?誰かにいじめられた?」

泣きながら抱きついてくる架の背中を優しく撫でる市太。



  いじめられたの?俺・・・。わからない。わからないけど、誰にも言っちゃいけない気がする。



「いじっ、いじめられて、ないっ」

「じゃあオバケでもいた?」



  おばけ・・・。そうかもしれない、そう思う事にする。



「いた。ドームの、中に・・・もー、ここで遊ぶの、やめるっ」

「架、ビビりだな。オバケなんているわけないじゃん」


ヨシヨシ、と市太は架の背中を撫で続ける。



  いち、いい匂いする。あいつみたいな気持ち悪い臭いじゃない。いい匂い・・・





架の記憶は断片的。

けれど、それがトラウマになっているのは事実。市太の匂いしか受け入れられないのも、きっとそれが原因。



  今ならわかる。顔も覚えていないあいつの行為が何だったのか。
  幼い頃から、女みたいに可愛いだとか綺麗だとか散々言われて来た。きっとあいつは俺を女の子だと勘違いして顔射かましてきやがった。いわゆるロリコンってやつだったんだ!

  くっそ、思い出したくもねぇのに・・・



それでも架が考えてしまうのは、『匂いフェチ』だと言って誤魔化している拗らせまくった臭覚過敏症の原因になっているから。



  このトラウマを克服できなきゃ、マジで俺は無駄にモテるくせに一生童貞どころか彼女も女友達すらもできなくて・・・、いずれどっかの可愛い女と結婚して珠のような赤ちゃん抱っこして幸せそうな市太に「たまにでいいから匂い嗅がせてくれ」なんて言う変態じみた痛い中年になってしまう・・・!




授業中、講義を真剣に聞いている市太の横顔を見る架。

視線に気付いた市太が振り向き

「何?また気分悪くなった?」

と心配そうに架を見返す。

「んーん。大丈夫。いちってカッコイイなと思って見てただけ」



  不意打ちでそんな事言うなよ、架め。冗談でもドキッとするだろ。



市太は架の褒め言葉に弱い。

「バーカ。俺よりモテてるヤツに言われると腹立つだけだっつーの。見ろよこれ、架の非公式ファンクラブのアカウント。おまえまた盗撮されてるぞ」

「げっ、この前の寝癖めっちゃ酷かった時のじゃんこれ!」

「そーゆー問題じゃねぇだろ。バカ」


市太が架の髪をくしゃくしゃと撫でる。



  どれだけ俺がモテても、市太以外は傍に寄ることも無理なのに。
  俺は知ってる。市太が時々 女の子と遊んでることを。もう俺だけに構ってるほど暇じゃないだろうし、子供でもない。

  いちの隣は居心地がいい。だけどずっとこうしているわけにはいかない。
  市太がホモで、俺の事が好きだとか言ってくれたらずっと一緒にいれんのにな。なーんて・・・



「いちのがカッコ良くて優しいのにな。女って見る目ねぇ~」

「女は王子様みたいにキラキラで綺麗な男の方が好きなんだろ。・・・それに、俺が優しいのはおまえが幼なじみだからほっとけないだけだ。誰にでも優しいわけじゃない」

「いちの幼なじみで良かったわ。イケメンに優しくしてもらえてラッキー!」



お互いの心を知らない二人は、すれ違いながらも平和だった。



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