公式 1×1=LOVE

Hiiho

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ずっと×そばに=・・・ 2

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『夜、メシ行かない?』

講義中、つばさにメッセージを送る市太。

『予定ある。また今度な』

折り返し送られて来たつばさからのメッセージは素っ気無い。


  つまんね。


架への甘々な一玖の態度で朝から胸焼けを起こしそうだった市太は、なぜか無性につばさの顔が見たくなる。










1ヶ月後    週末

『イチ、今日飲み会な。場所は大学駅前の・・・』

つばさからの連絡で、市太は駅前の居酒屋へ。


「市太ぁ、こっちこっち」

店へ入ると奥の座敷テーブル席に座るつばさが手招きする。

「久しぶりだなイチ。生きてた?」

「生きてるよ、普通に」

市太がつばさと会うのは1ヶ月ぶり、セックスしたあの日以来だった。
つばさは自分の隣の座布団をポンポンと叩く。座敷へ上がりつばさの隣に腰を下ろした一玖は、久しぶりに会うつばさに少し緊張してしまう。

「大学内じゃ、滅多に出会わないしな」

「だからメシ行こって何度も誘ったじゃん。つばさくんは忙しかったみたいだけど」

「・・・あー・・・ちょっと色々な・・・」

話を濁すつばさに、微かな違和感を覚える市太。


  つばさくん、なんか微妙によそよそしくなった?振る舞いは変わらないけど、壁があるような・・・


つばさに感じる違和感はきっと、あの日お互いに初めてだった男とのセックスが『悦かった』とは言い難いものだったからだろう、と市太は思った。
「処女だから優しくする」と言ったものの、架への軽蔑、一玖への憤り、自分に対しても嫌気が差し、それをつばさにぶつけるように抱いてしまったことを市太は後悔していた。


「・・・あのさ、飲み会終わったらちょっといいかな」

あの日別れ際、辛そうな体を引き摺りながらも「平気」と手を振り、帰る彼の後ろ姿に謝れずじまいだった市太は、どうしてもつばさに直接謝罪したかった。
けれど

「えっ、この後?  ・・・うーん、どうかな」

と言って、テーブルの向かいで、隣りに座る女性と談笑しながらビールを飲んでいる男の方へチラリと視線を向けるつばさ。

「先約?サークルの人じゃないみたいだけど」

つばさの視線の先の見慣れないその男は、如何にもな遊び人といった雰囲気を纏っている。

「あーうん。最近クラブで知り合ってさ。学部違うけど同じ大学で歳も一緒だし、飲み誘った。ホラ、このサークル誰でも参加自由じゃん。人数多い方が楽しいし」

「ふーん」

つばさくんらしい、と思いながら何気なく彼の横顔を見た市太のグラスを持つ手が一瞬震える。

つばさの細い首筋に、小さな鬱血の痕。カットソーの首元から見える鎖骨の下あたりにもいくつかの同じような痕がある。

乱交までするような節操の無いつばさだけに、どこの誰につけられていてもおかしくないキスマーク。
しかし、つばさの向かいに座る男が付けたものだと市太は直感する。


「つばさくん、あの人が好きなんだ?」

思わず口から出る。

「は、はあっ?なわけないだろ!」

「じゃあ、なに。好きでも無いヤツにマーキングされて喜ぶようなマゾだったのかよ」

「な・・・っ、つかなんでお前にんなこと言われなきゃなんねぇの?  適当に遊んでんのは俺だけじゃねーだろ」

「俺は・・・」

  確かにつばさくんの言う通りだ。俺が誰とヤろうが、つばさくんが誰と何をしようが、お互いに関係無い。
  けどなんでこんなに胸がザワつくんだ。


「いっかい寝たくらいで彼氏ヅラか?案外単純なんだな、イチ」

「そんなこと思ってない」

「・・・なら良かった。メス顔くんのためにもっとテク身に付けて、優しく抱いてやれよ。俺ん時みたいなんじゃ嫌われんぞ~」


  それって、俺はつばさくんに嫌われたってことなんだろうか。・・・ってなにショック受けてんだ俺。
  別につばさくんとは先輩後輩の関係で、シモがユルイなんてのはお互い分かりきってた事で、つばさくんほどの美人なら男を相手にしててもおかしくはないと思う。俺に「挿れて欲しい」って言うくらいなんだ。他の誰かに同じように言ってたって不思議じゃない。

  ショックを受けてんのはきっと、架に幻滅した時と同じ。男に媚びてるつばさくんに幻滅してるだけだ。









飲み会の間ずっと、つばさと、向かいに座る男の様子を窺っていた市太。
けれどひとことも言葉を交わすことが無かった二人に、どこかホッとした気持ちにもなる。


「市太くん、二次会行かないでふたりで抜けちゃわない?」

途中、隣の席に移動してきた小柄な女性が市太の膝に手を掛ける。

「俺と一緒に抜けたら、何されても文句言えないよ。いいの?」

いつものように女を抱いて快楽に浸れば、架に対する気持ちを誤魔化してきたように、つばさのことも気にならなくなるはず。と自分に言い聞かせる市太。

「えー、何されちゃうんだろ?気持ちいい事だったら嬉しいな♡」

「どうだろ。試してみる?」

膝の上に乗せられた彼女の小さな手を市太が握ろうとしたその時。

今まで言葉ひとつ交わさなかったつばさと、その向かいに座っていた男が同時に立ち上がる。


「悪い、俺たち抜けるね。ちょっと急用できちゃってさぁ。後はみんなで楽しんで。お先に失礼しまっす!」

と言って、頭を下げたつばさと男は店を出て行く。


市太は苛立ちにも動揺にも取れる感情で混乱しそうになる。

  つばさくんが俺の誘いを断った理由は、やっぱりあいつなのか。二人で今から何すんだよ。あいつの前でつばさくんは、男のくせに股開いて「欲しい」って強請んの?あの手を、あいつの背中に這わせんの?


「ごめん。俺も急用」

「えっ!?  何それ、ちょっと!」

引き止める小さな手を振り解き、市太は居酒屋を出て辺りを見渡す。
通りの向こう、ビルの間の路地へ入る金髪と黒髪の男二人の後ろ姿。
点滅している歩行者信号。横断歩道を駆け渡り、つばさ達の後を追いかける。

路地の先に二人の姿を捉え、市太は全速力で走る。


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