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ずっと×そばに=・・・ 3
しおりを挟む「つばさ!」
二人に追いついた市太は、つばさの肩を背後から強く掴む。
「痛・・・っ! なに・・・」
振り向いたつばさが驚きで瞳を揺らす。が、すぐに動揺を隠すかのように無表情を作る。
「イチ、どうした?」
「どうした、って、つばさくんが気になって・・・」
「なんで?」
「なんで、って・・・」
そう言われればそうだ。なんで俺、こんなにつばさくんが気になって、女の子とヤレるチャンスを蹴ってまで追いかけて来てんだよ。
「飲み会いたよね?もしかして、キミもつばさのセフレ?」
黒髪マッシュウルフの男は親指でつばさを指しながら市太に聞いてくる。
「セフレ・・・?」
眉を顰める市太。
「悪いけど、つばさは今日俺と寝ることになってっから。どうしてもって言うなら3Pでも俺は構わないけど」
「やめろよ!そういう事言うの・・・」
つばさは気まずそうに俯く。
「帰ろう、つばさくん」
『3P』なんて冗談じゃない、と市太は今来た路地を引き返そうと つばさの手を引いて歩き出す。
「待てよ。お前さ、つばさがどんなヤツか知ってんの?」
呼び止める黒髪の男を一瞥する市太。
「知ってるよ。少なくともお前みたいなクズの相手には勿体ないくらいの・・・」
「フッ、は、はははっ」
市太の言葉を最後まで聞かずに声を上げて笑う黒髪。
「クズ? クズはどっちだよ。つばさはなぁ、男3人いっぺんに相手にするようなビッチなんだよ。小っせーケツ穴に精子めいっぱいブチ込まれて、泣いて悦がるようなド変態なの!なあ つばさ?」
「・・・・・・」
俯いたままのつばさは震えた溜息を零す。
腕を掴む市太の手を解こうと、つばさは自分の手をそれに重ねる。
重ねられたつばさの手のひらがひんやりと冷たくて、まるでつばさの心が泣いているように市太は感じる。
「・・・だから何だよ。おまえ1人じゃ、つばさくんを満足させられなかっただけだろ。自分がヘタクソだって大声で言って恥ずかしくねーの?」
言い捨てた市太は、再びつばさの手を引いて大股で歩く。
黒髪の舌打ちを背中で聞いて、市太は唇を噛み締める。
あいつが言ってたことは、事実なんだろうか。だとしたらつばさくんは・・・
「イチっ、痛い!も 離せって!」
「俺が離したら、どこに行くつもりだよ。 さっきのヤツんとこ? それとも他のセフレんとこ!?」
誰の所にも行かせたくない。
市太の握力に、つばさの手首の骨が悲鳴をあげる。
「い゛っ、イチ・・・っ、離、 せ」
「嫌だ」
「折・・・れるっ、おね・・・が、い」
涙目になってしゃがみ込むつばさ。それでも市太は手を離そうとはしない。
「先約、ダメになったね。俺が代わりに抱いてやるよ」
市太は しゃがんだつばさを強引に立たせ、薄暗い路地裏へと入り建物の外壁に彼の背中を押し付ける。
見下ろした先にあるつばさの瞳は潤み、手首を絞められた痛みに耐えていたため「はあ、はあ」と肩で大きく息をしていた。
「痛くてそんなヤラシイ顔すんの? 俺とヤッた時は辛そうな顔しかしなかったのに」
「イチ・・・」
「酷くされるのが好きなんだろ? 3人も同時に相手にして、優しく抱いてもらったワケ無いよな」
市太はつばさの首筋に残る痕に噛み付き、その紅を絞り出すかのように強く吸い上げる。
「う・・・イチ、よせって」
抵抗するつばさの力は弱い。「よせ」と言いながらも、市太にされるがままを受け入れているようにも感じる。
「あいつとどこに行くつもりだったんだよ。ホテル? どっちかの家?」
「なんでお前にそんなの、言わなきゃ・・・」
「嫌なんだよ!つばさくんが・・・俺以外の男に抱かれるなんて!」
つばさの両肩に置かれた市太の手が熱い。
その熱さに、つばさは身震いするほどの期待で涙が零れそうになる。
「・・・な んで」
絞り出した小さな声は、重なった市太の唇に吸い込まれる。
「俺にもわかんねーよ。ただ、つばさくんとこうしたい。他のヤツといるくらいなら俺と一緒にいろよ。朝まで、ずっと」
細く薄い体を、壊さないようにそっと抱きしめる市太。
「俺がイチを好きだって言っても、こうしてくれんの?」
「・・・どうだろう。言ってみて」
聞かなくてもわかる。これが恋だって。架を想ってた気持ちとは少し違うけれど、俺は、つばさくんが好きなんだ。
自分では抑えが効かないほど速くなる心音と共につばさの言葉を待つ。
「イチ、もっかい」
「・・・は?」
「もっかい、『つばさ』って呼んでよ」
恥ずかしそうに上目遣いで見上げて来るつばさに、速度を上げた市太の心音は、ドッ、と大きく音を立てて止まってしまいそうになる。
「つば・・・さ?」
躊躇いながら開いた唇で、遠慮がちに呼び捨てると
「へへ、イチが好きになってくれるまで言わねー」
と、悪戯っ子のように つばさがはにかむ。
思わず「好きだ」と言ってしまいそうになる市太は自分からそう告げるのが癪に思え、何も言わずにつばさに唇を寄せる。
「好きって言わせてみてよ」
「マジかよ。メス顔くんいんのに。ハードル高っ!」
顔を見合わせて、どちらからともなく笑いが出る。
もしもつばさくんと想い合うことが出来たなら、架と一玖の事も心から祝福できるのかもしれない。
そんなことをぼんやりと思いながら、市太はつばさにもう一度口付けた。
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