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王子との結婚にはもう少し猶予がある。
この後13歳になり学園に通い2年後の卒業の後正式に婚約発表をしてその1年後結婚する事になる。
学園に入るまで後半年程…学園の通うようになってしまうと忙しくて身動きが取れなくなる、それまでに婚約破棄後の身の振り方を考えるべきだろう。
「ハンナ…私に何が出来ると思う?」
「…どうされたんですか?」
「私のような生粋のお嬢様が平民になった時、出来そうな事って何かなって思って」
「お嬢様……家出でもなさるおつもりなんですか?」
「違う違う!興味があるだけ!本当に!」
「…………」
う、疑われてる…。ハンナのじっとりした視線が突き刺さる。
「あっその、み、未来の国母として気になると言うか…ね」
苦しいか、この言い訳。
「素晴らしいです!お嬢様!流石ですわ!」
あっそうでも無かった。
キラキラした目でこちらを見るハンナを騙しているようで罪悪感はあったが私はハンナに続きを促した。
「そうですねぇ…」
凄く悩んでいるわ。やっぱり生まれながらの侯爵令嬢の私が庶民生活は無理なのだろうか、そんな事を思い始めた時…。
「お嬢様はお可愛らしいからお花屋さんとかがいいかもしれないですねぇ!」
おっ?
「お花屋さん?」
「あっでもアレは案外力仕事ですしねぇ…ケーキ屋さんとかどうですか?きっととても可愛い看板娘になれますよ~!あっでもお菓子作れないとダメかぁ。でもお菓子作りくらいならお嬢様なら頑張ったら出来るのでは?でもでも火傷したりしたら大変だし~!」
「…ハンナ?」
「はっ!すみません!とても可愛いらしい平民なお嬢様を想像して興奮してしまいました!」
「そ、そう。でもやっぱり私が平民の暮らしなんて無理…よね」
しょうがないか…。そうなるとやはり修道院かしら。
「いやいや!頑張り者のお嬢様なら何でも出来ると思いますよ!」
ハンナのその言葉にはっとする。
「まだ12歳なんですから今から頑張ればなーんでも出来ますよ!」
「……ありがとう」
思わぬハンナの言葉に涙が出そうになった。
そう、そうだ。私はまだ12歳。まだ人生を諦めてしまうには早すぎるのだわ。
…こうなれば何が何でも逃げ切って自由になる。
やるべき事進むべき道が見えるとやらなければいけない事が山ほど湧いてくる。
半年があっという間に過ぎ明日はもう学園の入学式。
結局私は婚約破棄後パン屋を目指す事にした。
そうと決めてから毎日屋敷のシェフからパンの作り方を習った。今ではシェフに食べて貰っても十分合格点ですと言われるまでになった。
それと並行して店を開くにあたり必要なものを調べる。
まだまだ子供の私に出来る事は少なくこの半年はパンを極める事に集中した、これから卒業までの2年間で本格的な準備をしていこうと思っている。
お店を見つけ、小麦粉や諸々の仕入れ先、家具調理器具の準備、やる事は沢山でとても忙しいだろうが先の自由を想像すると何でも頑張れる。
この半年間王子と会ったのは4回程。いずれも王子が気まぐれにやって来て気まぐれに帰るというお茶会。
いい加減嫌いな私の顔など見に来なくてもいいと思うのに…これも王子の仕事という事か。ご苦労な事だ。
とはいえ明日からは王子も同じ学園に通う…まだ正式に婚約者として発表されていないだけマシだろう…これで私が王子の婚約者だと誰からも知られていたら学園内で王子と別行動するのが難しくなる。勿論近しい家格の子達は知っているだろうが正式に発表されてない以上この先まだ何かあるのか分からない大々的に吹聴する子はいない。あわよくば自分がと思っている子も少なからずいるだろうし…新たな婚約者をその辺りから選んでくれたらいいのにと思う。
兎にも角にもこの学園生活が私のこれからを変える事だろう。毎日学園で顔を合わす以上ここから本格的に王子に嫌われる作戦を実行に移していく。
絶対にこのまま王子の言いなりになどなるものか!そう決意も新たに学園の準備を済ませた。
この後13歳になり学園に通い2年後の卒業の後正式に婚約発表をしてその1年後結婚する事になる。
学園に入るまで後半年程…学園の通うようになってしまうと忙しくて身動きが取れなくなる、それまでに婚約破棄後の身の振り方を考えるべきだろう。
「ハンナ…私に何が出来ると思う?」
「…どうされたんですか?」
「私のような生粋のお嬢様が平民になった時、出来そうな事って何かなって思って」
「お嬢様……家出でもなさるおつもりなんですか?」
「違う違う!興味があるだけ!本当に!」
「…………」
う、疑われてる…。ハンナのじっとりした視線が突き刺さる。
「あっその、み、未来の国母として気になると言うか…ね」
苦しいか、この言い訳。
「素晴らしいです!お嬢様!流石ですわ!」
あっそうでも無かった。
キラキラした目でこちらを見るハンナを騙しているようで罪悪感はあったが私はハンナに続きを促した。
「そうですねぇ…」
凄く悩んでいるわ。やっぱり生まれながらの侯爵令嬢の私が庶民生活は無理なのだろうか、そんな事を思い始めた時…。
「お嬢様はお可愛らしいからお花屋さんとかがいいかもしれないですねぇ!」
おっ?
「お花屋さん?」
「あっでもアレは案外力仕事ですしねぇ…ケーキ屋さんとかどうですか?きっととても可愛い看板娘になれますよ~!あっでもお菓子作れないとダメかぁ。でもお菓子作りくらいならお嬢様なら頑張ったら出来るのでは?でもでも火傷したりしたら大変だし~!」
「…ハンナ?」
「はっ!すみません!とても可愛いらしい平民なお嬢様を想像して興奮してしまいました!」
「そ、そう。でもやっぱり私が平民の暮らしなんて無理…よね」
しょうがないか…。そうなるとやはり修道院かしら。
「いやいや!頑張り者のお嬢様なら何でも出来ると思いますよ!」
ハンナのその言葉にはっとする。
「まだ12歳なんですから今から頑張ればなーんでも出来ますよ!」
「……ありがとう」
思わぬハンナの言葉に涙が出そうになった。
そう、そうだ。私はまだ12歳。まだ人生を諦めてしまうには早すぎるのだわ。
…こうなれば何が何でも逃げ切って自由になる。
やるべき事進むべき道が見えるとやらなければいけない事が山ほど湧いてくる。
半年があっという間に過ぎ明日はもう学園の入学式。
結局私は婚約破棄後パン屋を目指す事にした。
そうと決めてから毎日屋敷のシェフからパンの作り方を習った。今ではシェフに食べて貰っても十分合格点ですと言われるまでになった。
それと並行して店を開くにあたり必要なものを調べる。
まだまだ子供の私に出来る事は少なくこの半年はパンを極める事に集中した、これから卒業までの2年間で本格的な準備をしていこうと思っている。
お店を見つけ、小麦粉や諸々の仕入れ先、家具調理器具の準備、やる事は沢山でとても忙しいだろうが先の自由を想像すると何でも頑張れる。
この半年間王子と会ったのは4回程。いずれも王子が気まぐれにやって来て気まぐれに帰るというお茶会。
いい加減嫌いな私の顔など見に来なくてもいいと思うのに…これも王子の仕事という事か。ご苦労な事だ。
とはいえ明日からは王子も同じ学園に通う…まだ正式に婚約者として発表されていないだけマシだろう…これで私が王子の婚約者だと誰からも知られていたら学園内で王子と別行動するのが難しくなる。勿論近しい家格の子達は知っているだろうが正式に発表されてない以上この先まだ何かあるのか分からない大々的に吹聴する子はいない。あわよくば自分がと思っている子も少なからずいるだろうし…新たな婚約者をその辺りから選んでくれたらいいのにと思う。
兎にも角にもこの学園生活が私のこれからを変える事だろう。毎日学園で顔を合わす以上ここから本格的に王子に嫌われる作戦を実行に移していく。
絶対にこのまま王子の言いなりになどなるものか!そう決意も新たに学園の準備を済ませた。
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