元妻からの手紙

きんのたまご

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フレア

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公爵家で過ごしていると、今私がアウターとチュニックさんへ復讐している事を忘れてしまいそうになる。

公爵家の三兄弟は長男が私と同じ歳、次男がその二つ下、三男がそこから少し離れて四つ下。
ご長男の方とは小さい頃から公爵家に行く度仲良くさせて貰っていた。
下の子たちも、姉しかいない私には…こんな事を言っては失礼かもしれないが、本当の弟のように可愛く思っていた。

大人になっても公爵家のご子息達はとても優しく私に接してくれた。
本当ならこんな厄介者と言われてもおかしく無いのに……。

そんな穏やかな日々を送っていると本当にここが私の居場所のような気がしてしまうが…そうでは無い、そんな現実を突きつけるかのようにいよいよアウターが公爵家へとやって来る日が来た。
私がここに居る事はアウターにはバレてはいけないから、勿論私が直接会うことは無いのだがその日は何故かソワソワと落ち着かない気持ちにさせられた。

そう、だって今日には全てを終わらせるつもりだから。
私はアウターと公爵様が話している部屋の隣の部屋からそっと聞き耳を立てる。
予定通り、公爵様は私のお願い通りアウターに今後の事業取引は出来ないと言って下さった。
まあ、今回の事がなくても近い将来…放っておいてもそうなったかもしれない、それ程に今のカーディガン家の状態は酷いものだった。
扉の向こうからアウターの怒鳴るような声が聞こえる、フレアと私を呼ぶような声…嘗ては好きだったその声も今の私からすれば嫌悪の対象でしか無い、その声が聞こえた瞬間あの忌々しい日々を思い出し私は身を震わせた。
ずっと隣で一緒に話しを聞いて下さっていた公爵夫人とご長男様が私の背をさすり頭を撫でる。大丈夫だと言葉なく言って下さるお二人に安心を貰いアウターが追い出されるまで話しを聞き続けた。

「ありがとうございます」
私はお二人に向かって頭を下げる。
「お二人が一緒にいて下さって本当に安心出来ました」
「良いのよフレアちゃん!よく頑張ったわ」
そう言って公爵夫人は涙ながらに私を抱きしめてくれてご長男様も微笑みながら頷いてくれた。
その後私は公爵家で最後の晩餐になるであろう食事を頂き………アウターの住む屋敷へと向かうべく馬車へと乗り込む。
公爵様も夫人もご子息達も皆着いて行くと仰って下さったがそこまで甘える事は出来ない。優しい人達に迷惑をかけてどれだけ感謝してもし足りない程……。
「この御恩は落ち着きましたら必ずお返し致します!」
私のこの言葉に皆様は仰って下さった。
「また、絶対にここへ戻って来なさい」
公爵家の皆様に元気と勇気を貰い馬車は出発する。
アウターのご両親も今頃向かっている筈だ。


何もせずに許せる程善人では無いけれど、復讐に生きるのは…思いの外…辛い。
もうこんな醜い気持ちに支配されながら生きて行くのはやめよう。全て今日で終わらせるのだ。
そう、決意も新たに私は馬車の向かうカーディガン家の方向をじっと見つめながら馬車に揺られていた。
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